“やりがい過労死“ その背景とは? 『仕事してしまう…』を管理する必要性

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  • 労働者の”やりがい”に頼りすぎることで、過労死などが生まれているという。
  • 働く人の善意・やりがいに頼る労働現場では「長時間労働」が生まれやすい
  • 会社が老僧時間を正しく把握できなかった事例も。解決には何が必要か?

私たちが働くうえで、仕事への“モチベーション”や“やりがい”というのは非常に大事なものだ。
しかし、実は労働者の”やりがい”に頼りすぎることで、過労死などが生まれているという側面もある。

やりがいを感じて「働きすぎる」

松丸正 弁護士:
働くことの生きがい・やりがいは労働者にとって大切な問題だと思っている。その面も見据えたうえで、過労死をどうやって防止できるのか、その問題を考える必要があるのではないか。

2019年4月、”やりがい過労死”と題して開かれたシンポジウム。 過労死や過労の末、自殺した人の遺族・過酷な状況で働いている人などが参加した。

製薬会社勤務の夫が過労自殺した妻:
夫はインフルエンザにかかり、40度の高熱にうなされているときでさえ、寝ながら携帯片手にパソコンを開いて仕事をしていました。薬を必要とし感謝してくれている人もいる。そういう思いに応えるために懸命に働かないといけないんだと。口癖のように自分自身に言いきかせていました。

看護師:
病院は、命の現場なので、死とむきあう過酷さがあるが、その分とてもやりがいがあるので、そうしたところにつけこんで、何でもかんでもやらされ、労働者であるということを無視されている。

生徒のため…残業“100時間超“の教師

大阪府立高校の教師・西本武史さんも「やりがいをあてにした長時間労働で過労死するのではないか」と不安を感じている。

文部科学省の調査では、いわゆる過労死ラインとされる月80時間の時間外労働を超える恐れのある教師が、公立中学校で「6割近く」、小学校で「3割以上」にのぼっている。

西本武史さん:
できれば6時半に起きていくのが朝の仕事をやりやすい。教室の整備したりとか生徒が朝気持ちよく教室にこられたらいいかなとか思って。

西本さんは2年前、クラスの担任に加えてラグビー部の顧問と生徒指導担当、海外への語学研修の引率責任者まで任され、業務量が急激に増加。

時間外労働は、最大で月155時間にもなり、適応障害を発症して一時休職を余儀なくされた。

職場に復帰した今は、以前よりも残業は減ったが、それでも家に帰ってから仕事をすることも多いという。

西本さん:
どうしても生徒のためにと思うとやってしまう。例えば(教員が)午後5時でみんな帰ってしまうと崩壊してしまう。マイナス面が生徒に行ってしまうので帰れない。帰ろうと思ってもどうしても生徒のことが頭にあるので…。

西本さんは、「生徒のため」という教師の”やりがい”に頼る学校の現状に疑問を感じている。

西本さん:
“やりがい”はもちろん持ってやっていて、それを上手く利用されている。
搾取されて、『やりがい搾取』という状況があるのかなと思う。多少きつくてもぐっとこらえてやってしまうので、それが長時間労働の問題にも拍車をかけているのかなと思う。

正しく把握されない「偽りの労働時間」

仕事によるストレスで精神障害を発症したとして労災を請求する人は年々増えている 。

過労死の問題に長年携わってきた弁護士は、やりがいに頼り労働時間が適切に管理されていない、いわゆる”やりがい過労死”の問題点を指摘する。

松丸正 弁護士:
働く人の善意とか、やりがいとかに頼る労働現場は、例外なく長時間労働が生まれてくる。
労働者の側で(労働時間を)管理しろというのはそれは無理だ。いい仕事やりたいと思ったら、とことんいい仕事をやりたい。一生懸命深い穴を掘りますよ。掘っても掘りきれない魔力を仕事は持っていますから。だからこそ管理する側、使用者の側で限度を管理していく。


労働時間が正しく把握されずに、命を落とした人がいる。


生活協同組合・大阪パルコープの元職員・石井隆治さん。
店舗の畜産部門で働いていたが、2017年3月、虚血性心疾患で亡くなった。

当時の勤務月報では、ほぼ毎日定時で帰ったことになっていた石井さん。

しかし、メールの履歴や同僚の話などから、労働基準監督署は亡くなる前一か月の時間外労働を88時間と算出した。

石井さんの弟:
年末にパートがやめて、年が明けてからかなりいそがしくなったとは聞いていました。自分がなんとかしなければという、穴をあけるわけにはいかないという、お客様のために商品を切らせるわけにもいかないですし、その中でぎりぎりの選択だったと思います 。

どうして記録と実際の勤務時間に差が生まれたのか。

タイムカードの打刻時間を見てみると、出勤時刻はバラバラなのに、退勤時刻は、毎日同じ時間になっている。実は石井さんは、退勤する時にタイムカードを打刻せず、後から店長が時間を入力していたのだ。

生協は、なぜこのような勤務管理をしていたのか?

生活協同組合おおさかパルコープ 永岡志朗 常勤理事:
タイムカードが打たれていなかった後、本人から打刻漏れです。定時で帰っていますという申請を受けて、それをそのままスルーさせながら、入力している状況があった。一人一人の職員が主体性を持って、やりがい満足につながることを進めてきたが、それが組織としてもそこに甘んじてしまって、ついついサービス残業につながってきていたと思う。

労働者の主体性に甘えていたことが長時間労働の要因になった。
生協は、きちんと勤務管理ができていなかったことを認め、石井さんの遺族と和解した。

生活協同組合おおさかパルコープ 永岡志朗 常勤理事:
石井さんのことを僕もよく知っているんですよ。一緒に働いていたときもあって、本当に人のいい人で、自分たちの暮らし健康を守りながら、そこをベースにしながらやりがい・満足があって、逆転はしないなっていうのを改めて考えさせられた。二度と同じようなこと繰り返されないなと 。

生協では労働時間を正しく把握しようと、新たに従業員のタイムカードの記録とメールのログアウト時間などを本部で集約し、ずれがないか毎日確認するようにしていた。

記者:
この差がタイムカードとずれている時間?

生協の職員:
そうです。ガルーンが社内メールのこと。確認したら店長の(メールの)消し忘れということがわかりました。それまでは(勤務時間を)抑えようと控えめに言ったりとか修正時間も短い時間で言っていたりしていたんですが、きっちりおしてもらっているんで、一般職は以前から押してもらっているのでそんなに変わらないけど、中間管理職のチームリーダークラスは正直に押すことで勤務時間が以前より増えている感じはある。

仕事をする上で大切な「やりがい」。
企業や学校などはそれに甘えず、きちんと労働時間を把握し、管理することが求められている。

(関西テレビ)

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