イランとアメリカはなぜ緊張関係にあるのか? イラン外相が名指しする「Bチーム」のメンバーとは?

モーリー・ロバートソンによる世界のツイート解説

  • 「イラン関与」の根拠となる“解像度の低い”映像
  • ベトナム戦争の「トンキン湾事件」と似ているとの指摘
  • イラン・ザリフ外相が名指しする「Bチーム」とは?

世界の政治家やセレブ・要人のツイートをモーリー流に翻訳・解説する「Twittin English」。今回は、6月15日(現地時間) BBCのツイート。



モーリー:

今日は濃い内容です、ちゃんと付いてきてくださいね。

The US says it has video footage proving Iran's involvement in Thursday's attacks on two oil tankers in the Gulf of Oman.

アメリカは、(6月13日)木曜日のオマーン湾での2隻の石油タンカーに対する攻撃に、イランが関与していることを証明するビデオ映像があると明かした。

「Gulf」
「湾」という意味で、これが出てくると僕はハッとします。それから「involvement」というのも面白くて、「関与」と翻訳できますが、「involve」とだけ言うと、男女が秘密の関係を持っている時などにも使います。ツイートに添付されたこの動画も怪しいですからね。

タンカーの船長は「飛来物が来て衝撃があった」と証言しているのに対し、アメリカは「水雷を船体に貼り付けて爆発させたイランが不発弾を回収している」様子だとして、この“解像度の低い映像”を公開しているのです。

“第2のトンキン湾事件”か?

ここで思い出すのは、ベトナム戦争のきっかけとなったトンキン湾事件です。

北ベトナムとアメリカが敵対していた1964年8月、アメリカ海軍の船が北ベトナム沖のトンキン湾に入り、ベトナム側から攻撃をされたとする報告がありました。それを受けたアメリカでは開戦ムードが高まり、議会もそれを支持したのです。

ところがその後、トンキン湾事件は「米軍が自作自演したものではないか」という疑いが持ち上がりました。秘密裏に行われた委員会での議事録が長い時間を経て公開され、アメリカが仕組んだことだったと認定されました。

しかし、ベトナム戦争で多くの若い米兵が死傷しているのに、「でっちあげ戦争です」とは言えません。アメリカは政府への批判・反発が強まることを恐れてこれを公表せず、北ベトナムに勝つことに向かって進んでいきました。

でも結局、うまく行かなかった。このような過去の忌まわしい事件を例に、「第2のトンキン湾か」と指摘する人もいますが、今はまだうやむやの状況です。

「イランとの緊張を高めるのは大統領選に勝つため」

ここで、今回の一件にまつわる背景を見ていきましょう。そもそも、なぜアメリカとイランは緊張関係にあるのか?

オバマ政権時代、“中東の暴れん坊”であるイランという宗教国家を押さえ込み、核開発を遅らせる代わりに経済制裁を次第に緩和していくという、イラン核合意が結ばれました。

しかし、大統領候補だったトランプ氏は「アメリカ史上最悪のディールだ」として、イラン核合意の離脱を公約に盛り込み、大統領に就任。

国防長官だったマティス氏、国家安全保障問題担当大統領補佐官だったマクマスター氏などは、イラン核合意を温存するように進言していましたが、トランプ大統領は彼らを順に更迭していきました。

マクマスター氏の後任にはボルトン氏が就任しましたが、彼はイラク戦争の開戦にも関わった“いけどん(行け行けどんどん)・ネオコン(新保守主義)”で、トランプ大統領にとって耳触りの良い主張をしています。

2020年の選挙に勝ちたいトランプ大統領は、オバマ政権時のTPP交渉、パリ協定、イラン核合意のすべてを覆して「アメリカは再び偉大になった」と示したいがために、イランとの緊張を盛り上げているのです。

この騒動は戦争に繋がってしまうのか? 答えはmaybe、なるかもしれません。

しかし、もし開戦に至った場合、それはアメリカの歴史上最も意味の無い戦争になりかねません。最も薄っぺらい、全くの偶発的な戦争です。

イラン・ザリフ外相が批判する「Bチーム」とは?

そして、トランプ大統領がイランへの締め付けを強化していることに対して、イランのザリフ外相はツイッターで「Bチーム」と揶揄しました。

「Bチームの妨害外交によって翻弄されている」というのです。Aチームとは「特攻野郎Aチーム」の事ですが、Bチームとは誰を指すのか? メンバーは、イニシャルがBとなる次の4人と1組織です。

(1)アメリカのボルトン大統領補佐官
レジーム・チェンジ(体制変更)を狙っています。同じくタカ派のポンペオ国務長官も含まれるでしょう。

(2)イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相
イスラエルもどちらかと言えば排外的な政治で、極右政党はイランのことを敵視しています。イランとの問題を意図的に作り出すことで、極右連合を実現しようとしているのです。

(3)サウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン皇太子
ジャーナリスト殺害の事件でも話題になった人物です。

(4)UAE(アラブ首長国連邦)のビン・ザイド殿下
あまり報道されませんが、この人、イランが大嫌いです。

皆、民主的ではありません。リベラルな人道的な中東を望んでいる訳ではなく、それぞれが抱える問題の矛先を逸らすために関与していると言えます。

さらに、イラン革命防衛隊(これは日本語ですが、防衛のB)は平和を望んでいません。

イランが経済制裁を受ければ、穏健派のロンハニ大統領が間違っていたとして、自らの利権が拡大します。発展する闇経済を握っているのは、イラン革命防衛隊だからです。

そのため、彼らは経済制裁の解除を望まない。どちらかというと、核合意を破棄したいトランプ大統領と利害が一致しています。

イランとしては、トランプ大統領が次の大統領選挙で落選すれば関係を修復できると願っている節もありますが、イラン革命防衛隊やサウジアラビア・UAEは、緊張が最大限に増してほしいと考えています。

このように、腹黒い「Bチーム」のメンバーたちが、奇妙にもトランプ大統領を後押ししているという状況にあるのです。

しかし、これらの勢力が互いにチキンレースをしている状況で、もし誰かがイランに対して攻撃をけしかけて本当に戦争になってしまったら、結果的には皆が損をすることになります。この構図に誰かが上手に楔を打ち込んでほしいですね。

(BSスカパー「水曜日のニュース・ロバートソン」 6/19 OA モーリーの『Twittin English』より)

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