日本一周マンホールの旅

長野市の賛育会クリニックに勤める医師の佐々木明良さん(68)。

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患者思いの佐々木さんだが、もう一つ思いを寄せているのがマンホールだ。

佐々木明良さん:
(マンホールのフタは)いろいろな土地の情報が凝集されているし、やっぱり色んなものがあって夢があるじゃないですか

佐々木さんは2016年春から妻のしのぶさんと一緒にマンホールの蓋の写真を撮影しながら全国を巡り、その記録を「日本一周マンホールの旅」という1冊の本にまとめた。

北海道函館市は五稜郭とイカ。

京都・宮津市の天の橋立。

沖縄は魔よけのシーサー。

各地で撮影した「ご当地マンホール」が1200枚が載っている。

ただ、佐々木さん自身はそれほどマンホールに興味があったわけではなかったと言う。なぜ、こうも熱心になったのか。佐々木さんは長野市戸隠の診療所に20年間勤務し2016年に定年を迎えた。そこで、妻のしのぶさんと日本を隅々まで周ってみようと考えた。

佐々木明良さん:
指標としてマンホールなんかを見ながらチェックしていくと、そこの街に踏み入れたことになるのかなと。これは女房の発案なんです

妻・しのぶさん:
戸隠にいるときに下を向いて歩いていたら、鳥の絵の描いたかわいらしいマンホールがあった。へーこれ何だろうと

興味を持って調べたらまはっちゃった

日本中どこにでもあって地域ごとにデザインが違うマンホールの蓋。2人は旅の思い出に撮影することにした。定年後、すぐに購入したキャンピングカーに乗って出発。各地の名所やグルメも楽しみながらマンホールをたどった。
マンホールの蓋は近年、各地で「カード」も発行されるなど全国でファンがじわじわと増えていて、そのデザイン性から「足元の芸術」とも呼ばれている。
2人も旅を始めてすぐにマンホールの世界に引き込まれた。

佐々木明良さん:
何で三重県松阪市が「鈴」のマンホールなのか興味を持って、調べたら本居宣長(松阪市出身の国学者)が自分の書斎を「鈴の屋」と。こりゃ面白いやってマンホールにはまっちゃった。はまったと言っても落ちたという意味じゃないよ(笑)

佐々木さんは分からない模様などがあれば地元の役所を訪れて聞いた。本には写真とともに説明文が載せられている。

佐々木明良さん:
どんどん興味もって調べたくなる

妻・しのぶさん:
収集癖があるから

印象に残るマンホールを幾つか紹介してもらった。
1つ目が「市の花」がデザインされた福島市のマンホール。

佐々木明良さん:
非常に写実的でレリーフのようで見つけたとき、見入ってしまった。1つの芸術品

2つ目は高知県安芸市の「野良時計」がデザインされたマンホール。

まだ、家に時計がなかった明治の中ごろ、この土地の地主であった畑中源馬が、畑仕事をする人たちのために建てたものだ。

佐々木明良さん:
安芸市は岩崎弥太郎っていう三菱財閥の創始者がいるでしょ。岩崎弥太郎を差し置いて、この人がその土地ではマンホールになるくらいの名士だった。そういうところに感動するんだよね。その土地の産物がマンホールで分かるというのもいいんだけど、そういう歴史まで興味持たされる

1年かけてマンホールを辿った旅。移動距離は2万7000キロ、写真は1200枚にのぼった。

旅を終え2017年から非常勤の医師として再び働き始めた佐々木さん。しかし、マンホールへの興味を失った訳ではない。
長野市のマンホールを案内してくれた。

佐々木明良さん:
(旅のときは)女房が「あった。あった」なんて騒ぐと、僕が探すわけですよ

浅川ループラインのマンホールは「ホタル」のデザインだ。

佐々木明良さん:
市街地ではあまり見かけないですね。郊外に近いところにあるかもしれませんね

長野市戸隠のデザインは戸隠山にシジュウカラ。

そして、鬼無里はミズバショウ。

今は一つの自治体だが、合併前の旧市町村ごとに特徴のあるマンホールを楽しむことができる。

佐々木明良さん:
普段気が付かないことだけど、そこに注目してみると色んな楽しみ方があったり、情報が詰まってて旅の面白みにもつながる。そういうところじゃないかな

2人が撮影できていないマンホールの蓋はまだまだ、たくさん残っている。元気な内に再び「日本一周マンホールの旅」に挑戦する予定だ。

(長野放送)

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