本来、まだ食べることができるのに廃棄される「食品ロス」の問題が巷間話題となって久しい。政府としても、 “食品ロス削減推進法”が公布されたことを受け、6月7日に関係省庁会議を立ち上げ「食品ロス」対策に本腰を入れた。
「食品ロス」は、国連決議(「持続可能な開発のための2030アジェンダ」)でも言及された地球規模の課題で、資源の無駄、環境負荷の増大のみならず、一般消費者にとっても家計負担が増えるというデメリットがある。

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食品ロス年間643万トンの現状

農水省と環境省による最新の推計では、国内で食品ロスは年間約643万トンで、国民1人あたりに換算すると、約51キロにも達する。
食品廃棄物は、食品関連事業者から廃棄されたもの(1,970万トン)と一般家庭からのもの(789万トン)に大別される。そのうち「食品ロス」、すなわち、まだまだ食べられるはずの部分の廃棄については、事業者からは規格外品や返品、売れ残り品などで352万トン、一般家庭からは食べ残しや廃棄などで291万トンが捨てられている現状だ。

農水省のホームページより
農水省のホームページより

食品ロス削減推進法成立で政府も本腰

関係省庁の会議の冒頭、宮腰消費者相は、“食品ロス削減推進法”が全会一致で成立したことについて、「国会も含め、食品ロスに対する社会的な関心の高さの表れだ」と強調し、「食品ロス削減の取り組みをさらに実効あるものとするよう、関係省庁や関係団体等の皆様の重ねてのご協力をお願いしたい」と省庁に発破をかけた。

食品ロス削減の推進に関する関係省庁会議(6月7日)
食品ロス削減の推進に関する関係省庁会議(6月7日)

政府は2019年度内に、消費者・事業者等に対する知識の普及啓発や事業者への支援策などからなる基本計画を閣議決定する予定だ。
ただ、食品ロス削減に向けては、一般家庭でも取り組める内容も多く、政府関係者は「家庭でもできることはたくさんある」と強調する。

家庭でできる取り組みは?

消費者庁の調査によると、家庭で捨てられやすい食品は、主食、野菜、おかずの順に多い。捨ててしまう理由は、「食べきれなかった」「痛ませてしまった」「賞味・消費期限を切らせてしまった」と、意識すれば防げたはずのものが多い。

そこで、消費者庁が提唱するのは、各家庭においてまずは「いつ、何を、どのくらい、どういう理由で捨てたか」を記録してみることだ。

消費者庁がホームページで公開しているチェックシート
消費者庁がホームページで公開しているチェックシート

消費者庁は、ホームページでチェックシートを公開しているが、1週間記録を取ってみると、「買いすぎ、作りすぎ、ためこみ」などと食品ロスを生んでいるタイプが客観的にわかる。
こうして、それぞれの家庭における食品ロスの要因が洗い出されることで、「使い切れる分だけ買う」「冷蔵庫の置き場所を工夫する」などと、改善策がおのずと見えてくる。
こうして、各家庭で少しでも食品ロスの発生を意識するだけで、およそ2割、また削減の取り組みも実践することでおよそ4割も食品ロスが減るという。

一石二鳥の「ローリングストック法」とは?

また、家庭における食品ロス削減のためには、災害時のための備蓄にもなり一石二鳥の「ローリングストック法」も有効とされている。普段食べている食品を少し多めに買い置きし、食べたらその分を買い足していく手法で、賞味期限切れによる廃棄を防ぐことができるほか、いざという時には、いわゆる備蓄品に加えて普段食べている食品があることで安心材料にもなる。

消費者庁のホームページより
消費者庁のホームページより

実際に食品ロスの削減に向けたアイデアを考案し取り組んでいる企業や団体も多く、消費者庁はホームページ「提案の扉」で受け付けるようにしたところ、「大学生が廃棄しやすい野菜トップ5(キャベツ・人参・もやし・レタス・ねぎ)を使ったカレー」など、様々な提案やレシピが寄せられている。

外食・宴会で食品ロスを減らすには?

「食品ロス」は家の中のみならず、外食時にも発生する。「ビュッフェで食べ過ぎない」といった当然の心がけもあるが、外食や会社などの宴会について、消費者庁は、「3010(さんまるいちまる)運動」を通じた「食べきり」を促し、「食べ残し」による食品ロス削減を目指している。
「3010運動」とは、外食や宴会などで、注文を食べられる量だけにとどめ、「乾杯後30分」と「お開き前10分」は席を立たずに料理を楽しむことで、料理の食べきりを実践しようというものだ。

消費者庁のホームページより
消費者庁のホームページより

世界で多くの人々が栄養不足の状態にある中、多くの食料を輸入している日本にとって、食品ロスは、真剣に向き合い、取り組むべき課題だ。政府は10月を「食品ロス削減月間」に位置付け、政策に磨きをかける構えだ。
政府の取り組みに注目する一方、削減に向けて、それぞれの家庭で取り組むことができることも多い。少しでも国民の理解と関心が高まってくことに期待したい。

(フジテレビ政治部 首相官邸担当 山田勇

山田勇
山田勇

フジテレビ 報道局 政治部