「男のくせに育休取るの?」 この社会を“劇的に変えたい” 男性の育休「義務化」議連が注目 経営者が決断した“育休100%”

カテゴリ:国内

  • 男性の育休取得は“6%”だが「取りたい」男性社員は8割
  • 家事を「手伝う」から「分担へ」議連が目指すプッシュ型とは?
  • 経営者の一言で“変わる”育休取得

男性の“育休”取得は、わずか6%

「育児休業制度」とは、原則として子どもが1歳になるまで、会社に申請をすれば、親が休みをとれる仕組みであり、「育休」と呼ばれている。育休取得の間は、経済的負担や収入減少を補うために、育児休業給付(育休開始から6か月までは休業前の賃金の67%相当、それ以降は50%を給付)や、その期間の社会保険料の免除なども受けられる。

しかし、厚生労働省が6月4日に発表した「2018年度雇用均等基本調査(速報版)」によれば、女性の育休取得82・2%で、近年8割台で推進している一方で、男性は前年度比1・02ポイント上昇の6・16%だった。男女の取得に大きな差があることがわかる。

厚生労働省「2018年度雇用均等基本調査(速報版)」

もちろん1996年度には男性の取得率が0・12%だったことからすると、徐々に上昇が続いているとは言えるが、政府が掲げている「2020年までに男性の育児休業取得率13%という目標は、達成が困難な状況であると言わざるを得ない。

しかも、2015年度の調査ではあるが、育休を取得した男性の56.9%は「5日未満」の休みしか取得せず、「5日~2週間未満」の17.8%と合わせれば、育休を取得した男性の7割以上は2週間未満の休みしか取得していない実態がある。

公益財団法人の日本生産性本部が行った「2017年度 新入社員秋の意識調査」では、新入社員の男性の79.5%が「子供が生まれたときには育休を取得したい」と回答した。

公益財団法人日本生産性本部「2017年度 新入社員秋の意識調査」より

三菱UFJリサーチ&コンサルティングの「2017年度仕事と育児の両立に関する実態把握のための調査」でも、3歳未満の子どもを持つ20~40歳代の男性正社員のうち、「育児休業を利用したかったが、利用できなかった人」の割合は3割にのぼるなど、働く人の希望と実態が大きく乖離している状況だと言えるだろう。

育児休暇を取りたい男性は増えたが…

「仕事が忙しくて…」
「人手が不足していて、休むと仕事が回らなくなる」
「男性は育児休業を取得しづらい雰囲気が職場にあった」

男性が育休を取れない理由はこのような声が多く、厳しい労働環境の問題や、職場の理解不足などもあるだろう。こうした中で、自民党の有志議員が「男性の育休『義務化』を目指す議員連盟を設立したことが大きな話題となっている。

旦那に言われて一番腹が立つ言葉は「家事を手伝う」?

「男性の育休『義務化』を目指す議員連盟」(6月5日 自民党本部)

「男性の育休義務化というのはショッキングなネーミングなんだろうと思いますが…」

6月5日に行われた、自民党の「男性の育休『義務化』を目指す議員連盟」の設立総会で、議連会長の松野博一元文科相はこのように話し始めた上で、「育休だけで済む問題ではありません。育休の後も、例えばテレワーク、短時間労働、フレックスタイムであると、様々な施策の中で、この議員連盟の目指す目的というのは、男性、企業、社会の、男性の育児参加に対する意識改革を行っていこうというのが目的でございますので、その目的に向かってしっかりと取り組んでまいりたいと思います」と設立の意義を訴えた。

議連会長・松野博一元文科相

また加藤総務会長も出席し、「女性の配偶者の方に対して、アンケート調査で一番腹に立つ旦那の言葉は何かというと、『家事を手伝う』ということであります。意識が全然違うじゃないかと」と述べ、家事・育児についての男性の考え方が、「分担」ではなく「手伝い」であるということからの意識改革が必要である、という点を指摘した上で、「義務化というのは、非常にセンセーショナルな言葉でありますが、大事なことは働き方をどう変えていくか。会社の仕事の仕方をどう変えていくかにもつながるわけですから、制度をこう変えるぞという強いメッセージがないと、そういう変革はなかなか起こらない」と議連の意義を強調した。

自民党・加藤総務会長

この議連は、発起人の1人でもある和田義明議員が、自民党の会合の中で「男性の育休は義務化したらいい」と発言したことが発足のきっかけとなっている。
これに先立つ5月に行われた議連の発起人会でも和田氏は「申請があれば育休を与えるのは、企業の義務ですから、申請をしていない、申請が出来づらい状況にあるということです。男のくせに育休をとるのか?という理解のない上司と職場の雰囲気、出世競争に悪影響が出るのではないかという職場のカルチャーの問題、仕事が属人化して、自分がいなくなったら、職場が回らなくなるとの責任。こういう状況を劇的に変えていきたい。早急に結果をだしていきたい」と思いを語っていた。

和田義明衆院議員

日本は女性が男性より6倍も家事・育児に時間をかけている

この議連の設立の目的の1つは、日本が直面する「少子化」と「人口減少」という課題の解消にある。実は、男性が育児・家事を分担する時間が多い家庭ほど、第2子以降が生まれる可能性が高いことが、統計でも明らかになっているのだ。
厚生労働省の「第14回21世紀成年者縦断調査」の中にある、「子どもがいる夫婦の夫の休日の家事・育児時間別にみた、この13年間の第2子以降の出生状況」という調査でも、夫が6時間以上家事をする家庭では87.1%が第二子以降の子どもが生まれている。それが4時間以上6時間未満では79.7%、2時間以上4時間未満では59.2%と減少し、夫の家事・育児時間なしでは10%となっている。

また「第4次男女共同参画基本計画」の調査でも、「6歳未満の子供を持つ夫婦の家事・育児関連時間(1日当たり)」では、日本は女性が家事・育児に7.34時間の時間を費やす一方で、男性は1.23時間と大きな乖離があり、アメリカ(女性5.40:男性3.10)、フランス(女性5.49:男性2.30)、ドイツ(女性6.11:男性3.00)、スウェーデン(女性5.29:男性3.21)と比べてみても、女性の比重が極めて高くなっていることが分かる。

「男女共同参画白書 平成30年版」より

議連としては、女性の社会進出も増加する中で、男女の間で6倍もの差がある家事・育児の負担の解消は「有効な少子化対策」に繋がると考えているのだ。そのため育休制度が発足してから20年たっても、男性の利用率が6%に過ぎないこの制度を劇的に変化させるために、「企業側がプッシュ型で育休を与える」ということが有効であると考えている。

誤解されがちだが、男性の育休義務化は個人に対する強制ではない。本人からの申請がなくても、企業側が自動的に育休を与えるものだ。個人が申請する今の状況では、育休の取得を言い出しにくいような職場も多い中で、そもそも企業が取らせないといけない制度として確立することを目指している。
発起人の1人でもある松川るい議員も「個人に対して義務化ではなくて、企業からプッシュ型で、申請がなくてもどうぞと与えるという意味です」と答えている。

松川るい参院議員

企業の育休取得は経営者の一言で変化する

議連には「イクメン企業アワード」のグランプリを受賞し、男性の育休100%を実現した、株式会社サカタ製作所の坂田匠社長もオブザーバーとして参加した。その話が非常に興味深かったので紹介したいと思う。

株式会社サカタ製作所・坂田匠社長

「当社は育休100%で注目してもらっている。男性が育休を取ることについてハードルが2つあるようです。1つは『同僚社員に対する気遣い』2つ目は『子育ては女性がやるものだ』という認識です。これは社会全体のものであり、企業内でもそういう認識であります。2つがどうもハードルのようです。
これを打ち破るのは、実はそれほど大変ではない。男性も育休も取るべきだという話を、経営トップが折あることに社員に話を(する)、朝礼であったり、全体会議であったり。そして、子どもはいきなり生まれないもんですから、誤差はあったとしても、何月何日くらいに、その社員に対して、『君はちゃんと育休取るよな?』ということを、その部署に行って話をします。話をするときは、周りに大勢いることが重要です。部署の人たちが、ほぼそろっていることが重要です。本人が最初のころは(答えに)詰まっていたんですよ。答えないけど、どうなんだと。『いやいや、取るつもりですよ』と上司が引き出せばいいんですよ。『私取らせて頂きます』『そういうわけだからみんな頼むな』これで解決します。社長からそういわれたから、仕方ないという言い訳を作ってやればいいんです」

また、和田議員は報道陣が退出後に、「坂田社長は社員の方々に対して、売り上げが下がっても、納期が遅れても、信頼を失っても、育休をとれと言った。なかなか普通の経営者では言えないようことを言って育休が浸透したと。その後社員の方が多数、出産ラッシュを迎えたと。大変大きな成功事例だったんだなと。新潟の企業ですが、人材不足が叫ばれる中で、今、採用には全く困っていないということで、社長の決意、社風が変わることで人材の獲得にも寄与する」という話があったことを説明していた。もちろん、男性だけでなく女性も含めて、育休制度などを取りやすい環境づくりを「経営者」が自ら率先して取り組んでいることの結果が出ていることを表した形だ。

一方で、この取り組みの成否は中小・零細企業への対策にもかかっている。議連の松野会長も「企業、特に中小企業の皆さんにとっては深刻な人手不足の状況もございますので、過度な負担を強いてはなりません。中小企業の皆さんも男性社員に育休を取らすことができるサポート、補助策を同時にしっかりと検討していかなければ、絵に描いたモチになってしまいます」と述べているように、中小・零細企業へのサポートをどのように示しながら、この育休「義務化」への道を開くのかが焦点になるだろう。

(フジテレビ政治部 自民党担当キャップ 中西孝介

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