「世の中お互い様ですので…」
奈良市にあるとんかつ店「まるかつ」。
米油で揚げた、やわらかくジューシーなお肉とサクサクの衣が人気の秘密。
この日も、ある5人家族が店を訪れていた。
食事を終え、会計かと思いきや、レジは素通りで店長がお見送り。
実はここに、繁盛の秘密があった。
「ありがたい。復活したらお返ししないと」
「まるかつ」が行っている取り組みは、事情があってお金を出せない人に、とんかつをただで食べてもらおうという無料食堂。
店の外壁の貼り紙には、「世の中お互い様ですので、お代は出世払いでもいいですし、忘れてもらってもいいです。少しでも元気を出すきっかけになればうれしいです」と書かれている。
先ほどの5人家族の男性は、3年前から肺がんを患い、現在、休職中だという。
がんで休職中の男性:
ありがたいです。これだけ家族で食べようと思ったら、それなりにお金がかかっちゃうので。復活したらお返ししないと
男性が店長に「元気が出ました」と声をかけると、店長も「ほんまですか?よかったです。うれしいです」と笑顔だった。
店長の善意がSNSで瞬く間に拡散
店長の純粋な善意から生まれたこの取り組みだが、SNSで瞬く間に拡散。
『まるかつ無料食堂のお知らせ\(^O^)/
もしどうしても、お腹がすいても、お家にお金がないときやお子さんにおいしいものをお腹いっぱい食べさせてあげたいのにご事情があってむずかしいときなどはコソッと店長に相談してください』
これが意外な効果を生み出した。
京都から来店した客:
無料食堂の考え方もいい。ちょっと応援したくなる
大阪から来店した客:
何もわたしたちできないけど、しているお店には協力したい
無料食堂の取り組みに共感し、普通にお金を払うお客さんがわざわざ全国からどんどん店を訪れるようになったのだ。
「まるかつ」がお客さんの共感を呼ぶ取り組みは、ほかにもいくつかある。
店長の背中には、「本音」が書かかれたチラシが貼られていたり、手づくりの新聞や壁にはくすっと笑える一言がずらりと並ぶ。
この日は、『えびフライの中身のえびがだいぶ大きくなって、お値段もしっかり上がりましたよ!』 のチラシが…
客も企業も僕たちも“3つ”いいことが出来ている
そんな「まるかつ」が2月から、新たな取り組みを始めた。
その名もメニュースポンサー。
金額の一部を地元の企業などに負担してもらい、その分、客に安く提供するというもの。
常連客:
業者の名前も見られる。『あそこの店やな』という感じで、のぞいてみようかなという気になる
まるかつ 金子友則店長:
お客さんも安く食べられるし、企業も知ってもらうチャンスがあるし、僕たちもお客さんに喜んでもらえるっていうのは、3ついいことができているのかなとは思うんですけど
計算された戦略でもなければ、デジタルを活用したワケでもない。しかし「まるかつ」の取り組みは、誰をも幸せにし、共感を呼び、売り上げにも結びついている。
まるかつ 金子友則店長:
僕たちみたいに小さい店、小さな会社は、なかなか知ってもらうことはできないんですよね。やっぱり来てもらった人に満足してもらう。『おいしかったよ』と周りに伝えてくれるというのが一番の目標なんで。お店を知ってもらうための一番のことやと思っています。
三田友梨佳キャスター
困っている人を金銭的に助けるということは、実際にはなかなか行動に移せないことですよね。
IoT/AIの専門メディアを運営する小泉耕二氏
人情味に溢れているというか、良いと思うことをとにかくやっていくことはすごいことですよね。
三田友梨佳キャスター:
こういう人を助けるということについてはどんなお考えをお持ちですか?
小泉耕二氏:
私の実体験なんですけど、最近アマゾンで『欲しいものリスト』というのが作れるんですね。私の知り合いが会社を立ち上げるときに、初めってお金がないじゃないですか。なので必要なモノを欲しいものリストに載せて「こんなものあるといいな」と呟いていたら、共感した人たちが善意でどんどん買ってくれたりというのを見たことがあるんですよ。デジタルの世界でも本当に善意の気持ちで暖かい形で行われていると思いますね
三田友梨佳キャスター:
「まるかつ」の試みは単なるマーケティングの手段ではなくて、そこに込められたご主人の困っている人に手を差し伸べたいという心からの思いが、顧客から愛されているのだと思います。
(「Live News α」6月6日放送分)