“干渉されたくないが生きるのが苦しい” ひきこもる中高年61万人の悲痛な胸のうち

カテゴリ:国内

  • ひきこもる中高年は全国で推計61万人
  • 相談を躊躇する一方で、“生きるのが苦しい”“家族に申し訳ない”との不安
  • 根本厚労相は「安易に事件とひきこもりを結びつけるのは慎むべき」と発言

川崎市多摩区で通学途中の児童ら20人が包丁を持った男に殺傷された事件。
容疑者の51歳の無職の男について、川崎市は、家族からひきこもり傾向にあったと相談を受けていたことを明らかにした。

そして東京・練馬区で農林水産省の元事務次官が自宅で44歳の長男を刺殺した事件。
元次官は、無職の長男が川崎の事件のように周囲に危害を加えることを懸念していた。

ひきこもり中高年の75%は男性 期間は「7年以上」

子供達に刃物を向けた容疑者と、家庭内で暴力を繰り返してはいたものの父親に殺害された被害者を同列に論じることはできない。
しかし、2人とも40~50代にして、定職がなく、両親や親族と同居して、そのほかの人付き合いが極めて限定されていた点は共通する。

内閣府は今年3月、中高年も対象にした初のひきこもりの調査結果を公表。
これまで若者に多いとされていたひきこもりだが、そうではない実態が明らかになった。

内閣府が2018年12月に行った調査では、40歳から64歳の中高年のうち、自宅からほとんど外に出ないなどひきこもり状態にある人は、全国で推計61万3000人いることが明らかになった。
このうち4分の3は男性で、ひきこもっている期間は7年以上がおよそ半数を占めた。

ひきこもりになったきっかけについては、職場を退職したこと、人間関係がうまくいかなかったこと、病気、職場になじめなかったことなどがあげられている。

内閣府「平成30年度生活状況に関する調査」より

かつては「正社員」 自宅では「テレビ」や「インターネット」

また、働いた経験については、「正社員として働いたことがある」が73.9%、「契約社員、派遣社員又はパート・アルバイトとして働いたことがある」と回答した 人は39.1%だった。

内閣府「平成30年度生活状況に関する調査」より

普段自宅でよくしていることについては、「テレビを見る」が74.5%、「インターネットをする」が29.8%、「本を読む」が25.5%となった。

内閣府「平成30年度生活状況に関する調査」より

半数超が関係機関への相談を躊躇

ひきこもり状態について関係機関に相談したいか、という問いには、「非常に思う」が10.6%、「思う」が8.5%、「少し思う」27.7%、「思わない」53.2%となり、半分以上の人が相談を躊躇している実態が浮き彫りとなった。

内閣府「平成30年度生活状況に関する調査」より

感情を表に出すのが「苦手」 口出し「しないでほしい」

「自分の感情を表に出すのが苦手であるか」との質問には、「はい」、「どちらかといえば、はい」と答えた人が53.2%「たとえ親であっても、自分のやりたいことに口出しをしないでほしい」については「はい」、「どちらかといえば、はい」を合わせると74.5%にのぼった。

内閣府「平成30年度生活状況に関する調査」より

「自分の生活のことで、人から干渉されたくない」については「はい」、「どちらかといえば、はい」を合わせると93.6%となった。

内閣府「平成30年度生活状況に関する調査」より

さらに、この調査では、ひきこもりの人たちが以下のような不安要素を 感じていることもわかった。 (複数回答可)
「家族に申し訳ないと思うことが多い」 48.9%
「生きるのが苦しいと感じることがある」 48.9%
「集団の中に溶け込めない」 36.2%
「死んでしまいたいと思うことがある」 29.8%
「絶望的な気分になることがよくある」 27.7%

「安易にひきこもりと結びつけるのは慎むべき」

根本厚生労働大臣は、 4日、閣議後の記者会見で、川崎や練馬の事件の背景に中高年のひきこもりが関係するのではないかとして、厚労省の対策を問う質問に対し、「現在捜査中で事実関係が明らかではないが、いずれにしても安易にひきこもりと 結び付けるのは現に慎むべきものと考えている。」と述べた上で、 一般論と前置きし「ひきこもり状態にある方への対策としては個人の状況に寄り添い、きめ細かく支援しながら社会とのつながりを回復することが重要だと考えている」 と述べた。

「ひとりで抱え込まずに相談を」

厚労省の担当課は、「ひきこもり状態にある人誰もがこういう事件を起こすわけではない」とした上で、「従来からひきこもり状態の人がいて、本人や家族が困っている状況は事実としてある。行政の “ひきこもり地域支援センター”や生活困窮者の自立支援窓口の整備をしていて、 困っている人は、ひとりで抱えるのではなく行政機関に相談してもらいたい」としている。

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社会との関わりを持てない、持ちたくない人たちの存在を、社会全体で解決に導く手立てを早急に考える必要がある。

(執筆:フジテレビ社会部厚生労働省担当 滝澤教子)

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