天安門事件から30年・・・「我々が間違ったとでも言うのか」

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天安門事件から30年たった。
中国の魏鳳和(ぎほうわ)国防相は2日、天安門事件について聞かれ、「我々の処理が間違っていたとでも言うのか」と開き直った。

習近平国家主席は何も言わないが、天安門広場の警備は強化され、遺族の監視も増やすなど、政権は厳戒態勢を敷いている。

天安門事件にショックを受けたワケ

何度か書いたが、30年前、僕が29歳の時に経験したあの取材は心底恐ろしく、生まれて初めて、本当に殺されるかと思った。

我々が天安門事件にショックを受けたワケは、中国はソ連と違って話が通じる国であり、鄧小平はゴルバチョフよりはるかに改革マインドを持つ政治家だ、と誤解していたからだ。

実際には鄧小平は民主化の動きを完全に封じて、たぶん数千人の学生、市民を虐殺し、その後中国の政治改革は全く進んでいない。
一方で経済改革はものすごいスピードで進み、あっという間にGDPで日本を抜き、いずれ米国も追い越す。

日中は関係改善の兆しを見せているが・・・

日中関係は2001年に小泉純一郎首相が靖国参拝して以来、尖閣問題もあり20年近く低迷したが、ここに来て、米中貿易摩擦のあおりで中国が日本に接近し、安倍首相がこれに応じて、関係改善の兆しを見せている。

鄧小平は国際社会の期待を裏切り、政治改革をせず、経済だけ改革した。
経済改革が進めば政治改革も進むと米国は信じたが、それが失敗だったことにようやく気づいたことが、今回の米中貿易摩擦のきっかけになった。

中国の人たちの幸せは?

この30年で中国は我々の想像をはるかに超えて、強くなり、豊かになったが、中国の人達にとってそれは幸せなことだったのだろうか。
週末の銀座を闊歩する中国人観光客を見るといつも思うのだ。
いくらお金があっても、政治的な自由がなく、言論の自由もない国、決して民主化されない国に住むことは苦痛ではないのだろうか。

【執筆:フジテレビ 解説委員 平井文夫】
【4コマ漫画:横川寛人】

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平井文夫
平井文夫

言わねばならぬことを言う。神は細部に宿る。
フジテレビ報道局上席解説委員。1959年長崎市生まれ。82年フジテレビ入社。ワシントン特派員、編集長、政治部長、専任局長、「新報道2001」キャスター等を経て現職。