痴漢撃退に“安全ピン”はあり?なし?
今年5月、ある女性が中学2年生のときの出来事を描いた漫画をSNSに投稿し話題となっている。
この記事の画像(19枚)あくびさんのTwitterより
電車に乗った際に痴漢に遭ったことを保健の先生に相談しました。
すると、先生からこんなアドバイスを受けたのだ。
保健の先生:
はい、これ…安全ピン
保健の先生:
無理に声出さなくていいんだよ。次、痴漢がでたら、それで刺しな、安全ピンなら持ち歩ける…
あくびさん:
や…でも血出るし…
保健の先生:
何言ってんだい。痴漢している時点でそいつはクズだ…変態に慈悲は無い…
このマンガを投稿をしたあくびさんは当時のことをこう振り返る…
あくびさん:
この時代には防犯ブザーとかスマホがなくて、痴漢の対策として初めて教えてもらったこと…
この投稿を通じて、痴漢被害に遭った方が苦しんだり悲しむことがないように、しっかりとマニュアルができればなと思う
痴漢を安全ピンで刺す…法律的には?
痴漢を安全ピンで刺す行為は法律の面からはどうなのかだろうか?
アトム市川船橋法律事務所 高橋裕樹弁護士:
正当防衛・違法ではないという形になる可能性が高いと思う。安全ピンを刺すという形でしか自分の身を守れなかった女性の気持ちへの配慮はすごい大切だと思う
痴漢被害に遭いにくい場所は?
痴漢撃退に安全ピンを使用することに論争が起きる背景には、痴漢対策自体の難しさがある。
防犯に詳しい安全生活アドバイザーの佐伯幸子さんに実際の電車の車両を使って身の守り方を聞いた。
痴漢被害に遭わないためには電車内の乗る位置が重要だと佐伯さんは話す。
佐伯さんが「危険」と指摘するのは、乗り降りするドアと椅子の間のスペース。被害者としては逃げにくい場所であるほか停車時の乗り降りの際に瞬間的に被害を受けるという危険もあると言う。
では、比較的「被害に遭いにくい場所」はどこなのだろうか?
それはできるだけ電車の中ほど、座席の前に立つこと。目の前に座っている乗客の目もあるので気づいてもらえるということもある。
もし痴漢に遭遇してしまったら?
では、もし痴漢の被害に遭ってしまったらどう対応するのが良いのだろうか?
安全生活アドバイザー 佐伯幸子さん:
大事なのは、相手の体の一部をしっかりと確保すること。上着や指などをつかむのでもいいということです。そのうえで上着とか手首をつかんだときに自分のひざを落とします。ガクッとするとつかんでいる相手も必ず下がりますので間違いなく相手を特定できるんですね。
そもそも痴漢をはたらくと東京都の迷惑防止条例違反の場合は6か月以下の懲役または50万円以下の罰金。更に、強制わいせつ罪に当たる場合は6か月以上10年以下の懲役という重い罪になる可能性もある。
痴漢の冤罪に巻き込まれないためには?
一方で、ついて回るのが痴漢の冤罪の問題。
女性からも夫や家族が痴漢の冤罪に巻き込まれることについて、「やっていないことの証明が難しい」と不安の声も聞かれた。
もしあらぬ痴漢の疑いをかけられてしまった場合には…
アトム市川船橋法律事務所 高橋裕樹弁護士:
駅員室に行ってしまうとそのまま逮捕になってしまうケースがよくあるので、駅員室に行かないようにとアドバイスはしています
では、最も適切な対応は?
アトム市川船橋法律事務所 高橋裕樹弁護士:
こちらは逃げるつもりがないという形で連絡先を交換するなどして、その場は去るというのが理想的な対応ではないかと思います
実は痴漢の事実があったかどうか鑑定する最先端技術が存在する。
警察からも鑑定を依頼されるという法科学鑑定研究所。
実験では用意した衣服に触り、手についた繊維の鑑定を行ってもらった。肉眼では手に何かついてるかどうかは全くわからない。
衣服を触った手に特殊粘着フィルムを貼り付け、1000万円以上するという専用の顕微鏡で確認してみると…
顕微鏡に映ったのは、長さ約0.2mm、太さ約0.006mmという極めて小さな繊維のカケラだった。
これを触った衣服の繊維と比べてみるとよく似た形であることが確認できる。
またこの施設では、触った衣服からDNAの検出も可能だという。
法科学鑑定研究所 益満菜々さん:
悪意のある触り方、意識をもって触っているような場合、これはほとんどの確率、多くの確率で採取できるというものになります
一方で時代が変わっても満員電車は解消されず、痴漢が起こりやすい環境を作る社会的問題だという指摘もある。
電車の混み具合は混雑率で表されるが定員いっぱいを100%として、混雑率180%になると新聞を折りたたままないと厳しい状態、かなり窮屈な状態ということになる。
首都圏の主要鉄道路線の混雑率は現状どうなっているのだろうか?
地下鉄東西線が199%。JR総武線197%、JR横須賀線196%、JR埼京線185%と軒並み180%を超える高い混雑率になっている。
痴漢が発生しにくい環境をどう作っていくのか?ハード面の整備も重要な課題だ。
(「Live News it!」5月30日放送より)