「給料日は月イチ」の常識が変わる? “給料前払い”サービスが広がるワケ

カテゴリ:ビジネス

  • 働いた分の給料を前払いしてもらえるサービスを利用する企業が増加
  • 担当者「人材採用のための差別化に積極的な企業が増えてきている」
  • 給料の「オンデマンド化」の先にあるものとは?

給料日を待たずに働いた分だけ前払い

サラリーマンなら「給料日まであと何日…」と指折り数えた経験がある人は多いだろう。

もっと早く給料が欲しい…その思いは意外にもすぐ実現するかもしれない。
実は今、給料の前払いを導入する企業がじわりと増え、前払いをサービスとして提供するベンチャーも登場している。

出典:BANQ

金融ITベンチャーの株式会社BANQは、働いた分の給料をスマホですぐ銀行口座に振り込んでもらえる「ほぼ日払い君」というサービスの提供を2015年から開始している。

自分の働いている会社が「ほぼ日払い君」を導入すれば、ログインして必要な額を申し込む10秒ほどの操作で、24時間365日いつでもリアルタイムで給料の受け取りが可能になるという。(一部銀行を除く)

ただ、働いた分だけの前払いであって、いわゆる“前借り”とは違う。そして、利用者はシステム手数料や振込手数料を負担する。

BANQ によると、求人サイトでは「日払い可」という言葉が人気キーワードになっており、応募数が平均3倍に増えるそうだ。
また「ほぼ日払い君」を導入すれば、企業は「応募数が増える」「欲しい人材が定着」「採用コストをカット」という3つのメリットがあるとしている。

20代の利用が多い

では、どんな人が実際に前払いサービスを使っているのだろうか?
BANQの資料によると、男女比は男性52%、女性48%でほぼ半々。
雇用形態は、正社員21%に対し、パート・アルバイトは79%。
年齢比は、10代4%、20代64%、30代18%、40代以上が14%。

導入企業の業種は、飲食チェーン、フィットネス、コールセンター、運輸物流、ビルメンテナンス、警備、イベント、人材派遣、工場、ゲームセンター、不動産、小売りチェーンなど、多岐に渡る。
特にアルバイト・パートが多く働いている企業や、10代・20代のスタッフが多く働いている企業の導入が目立つという。
ちなみに、求人メディア「バイトル」を運営するディップ株式会社や、有名人が美ボディに変貌するCMでおなじみの某パーソナルジムも導入しているそうだ。
 
なぜ、いま前払いの人気が高まっているのか?
そして、導入する企業がわざわざ他社のサービスを使うのはなぜだろうか?
BANQ代表の髙橋宗貴さんに聞いてみた。

給料の受け取りを「オンデマンド化」する

――今なぜ給料の「前払い」ニーズが高まっているの?

もともとスタッフ(従業員)のニーズは高かったと思います。
さらに昨今は、パート・アルバイトを含めた人材採用難の状況がますます強まっていく中で、福利厚生など時給以外で人材採用のための差別化に積極的な企業が増えてきていることも、ニーズ増加の一因なのではないでしょうか。


――BANQはなぜ「ほぼ日払い君」サービスを始めようと思った?

私は学生時代に30種類以上のバイト経験があるのですが、当時は急にお金が必要になった時に選べる職種は限られていました。
やりたい仕事があっても働いた分の給料をすぐに支払ってくれる仕事は少なく、給料の支払いタイミングが仕事選択の優先事項となっていたのです。
私自身のこの原体験の問題解決がサービスのベースになっています。
フィンテック領域で新しいサービスを立ち上げることを模索していた際に、このサービスであればあらゆる種類の仕事の給料の受け取りをユーザーのニーズに合わせて「オンデマンド化」できるのではないかと考え2015年12月にサービスを立ち上げました。


――会社が自前で「前払い」すればいいのでは?

小口で申請頻度の高い給料の前払いを社内制度として正式に提供するためには、それ相応の投資と運営コストが発生することが想定されます。
数万人以上のスタッフが働いている企業であれば、コストベネフィットが見合うのかもしれませんが(実際に社内で行っている企業もあります)、前払いサービスが存在するのであればアウトソースした方がベターとの判断だと思います。


――「ほぼ日払い君」を導入した企業負担はいくら? 従業員はいくら負担する?
 
「ほぼ日払い君」は基本的には導入企業の金銭的負担はなく、スタッフ(従業員)が利用する都度「システム利用料」と「銀行振込手数料」を支払う仕組みで、両手数料併せて1回につきワンコイン程度かかります。
利用しなければもちろん負担はありません。

給料の「オンデマンド化」の次は「リアルタイム化」

公式サイトには、初期費用、運用管理費ともに企業負担は無料だと書かれている。
さらに前払いの振込代行は立替え金で、企業の給料日に一括で清算するという。

――ということは、前払いするお金はBANQが肩代わりしているの?

ご認識の通りです。
このような仕組みによって企業側が導入するにあたっての業務負担の増加を最小限に抑えることが出来ています。


――給料の「月払い」制は、これからどうなる?

「月払い」というのは、前時代においては低コストで最適化された制度だったのかもしれませんが、世界的にみても月末締め翌月(15日や25日)払いというのは珍しく、働く人々のニーズとズレがあるため、その一部を前払いできるサービスが求められているのだと思います。
前払いサービスによって「給料のオンデマンド化」は広がって行くとは思いますが、その先にあるのは、「給料のリアルタイム化」だと思っています。
テクノロジーでそれが解決できるのであれば、そうなるのが自然な流れだと思っています。


――「ほぼ日払い君」のこれからは?

基本的にはこれまで同様、ユーザー目線でより利便性の高いサービス提供や機能の追加をしていきたいと考えております。
創業当初から目指して来たリアルタイム振込対応により、格段に利便性は上がりましたが、今後はQRコード支払いなどの決済機能との連携、デジタル通貨での給料受取りのためのウォレット機能、家計簿アプリとの連携海外送金サービスとの連携、など「前払いサービス」を超えたオンデマンド&デジタル化される給料をユーザーが低コストで活用できる領域でのサービス展開を考えています。


給料の払い方が時代とともに変化し、前払いサービスが広まれば、確かに「もっと早く給料がほしい」と思う人はいなくなりそうだ。
その一方で、給料の受け取りが月イチではなくなると、つい使いすぎてしまう可能性もある。結局「前払いまであと何日…」と指折り数えることのないようにご利用は計画的に。