出来たての惣菜を販売するトラック
細い山道を進む黄色い車体のトラック。
やってきたのは、長野県小谷村の伊折集落。
公民館の前に停め準備を始めたのは、こんがり揚げたコロッケ。
小さな五平餅…
手際よく調理するのは村の地域おこし協力隊員、村上裕紀子さん。
黄色いトラックは去年9月から村上さんが運行しているお惣菜の移動販売車「デリナカズミ」。名前は実家の屋号から取ったそう。
村とは副業ができる契約をしていて買い物ツアーの企画など生活支援業務の傍ら、休日など月に5、6日程度、移動販売車を運行している。
この日は堰の手入れをした後の慰労会に呼ばれ、五平餅やコロッケのほかに、クリームソーダも!
伊折集落の住民:
五平餅もコロッケもおいしかったよ
デリナカズミ 村上裕紀子さん:
全部おいしかったよと言ってもらえるとそれだけでうれしくて。にぎわいづくりというか、そのお手伝い程度のことでも、できたらありがたいなと思ってやっています
惣菜は全て手作り。特にコロッケにはこだわりが!
デリナカズミ 村上裕紀子さん:
子供の頃におばあちゃんが、手作りコロッケを作ってくれたのがすごく大好きで、揚げ物の魅力というのをすごく感じていて、親しい友達から「小谷のコロッケは味が濃い方がいい」と言われて、おからの味付けのような醤油ベースのものを作ってみたら、けっこう好評で、馴染み深い味なのかなと思った
移動販売で過疎地域を救う
村上さんは長野県辰野町出身の元県職員。人と接する仕事がしたいと2年前に退職し、知人の勧めで協力隊員となった。村は過疎と高齢化が進み、買い物に困っている住民も多くいる。
「住民と接したい」という自身の希望と買い物支援。両方を叶えるものとして思いついたのが、キッチンカーによるお総菜の移動販売だった。
デリナカズミ 村上裕紀子さん:
車で買い物にいけない人たちのニーズは何らかあるのではと思って、できればそういうサービスを提供する側になりたいと思った。村内には、すぐに食べられるものって、売ってる場所がないんだと思って、その場で調理して提供できるものをやったらどうだろうと
車は取り組みに賛同した村が購入して、村上さんに貸し出している。
小谷村 特産推進室 上川喜一室長:
「キッチンカーおもしろいね」ということから導入を計画した。この車両を通じて、生活、生きがいにつながっていく。それが地域のにぎわいになることを期待している
車体に描かれたジグソーパズルのイラストには、こんな思いが込められている。
デリナカズミ 村上裕紀子さん:
みんなが支えあいながら暮らしている地域だから、そういうようなイメージが表現されるようなマークがいいなと
スタートして半年。少しずつ営業の幅を広げている。
デリナカズミ 村上裕紀子さん:
(小谷は)とても居心地がいいというか、皆さん当たりが柔らかいというか、それがあるから今活動できていると思います
曽田集落で月に一回開かれる介護予防講座に出向いた。2回目の営業だ。
デリナカズミ 村上裕紀子さん:
(コロッケ)17個注文いただきました。地域の人たちがこの車のことよく知らないので、様子見という感じだと思います
この日、調理したのはコロッケのみ…
客からは「温かいし、おいしかった。ありがたい。おいしいし、すぐお昼に間に合う」といった声が聞かれた。
コロッケ4個を購入した丸山愛子さん。さっそく昼食にコロッケを出した。
夫・和市さん:
頂きます
丸山愛子さん:
きょう買ってきたコロッケ食べて
夫・和市さん:
おいしい
夫の和市さんと2人暮らしの丸山さん。週2日、JAの移動スーパーを利用している。
できたての総菜が食べられる村上さんの移動販売車も気に入ったよう。
丸山愛子さん:
すぐに温かいの買ってきて食べられるのはいい。年取ってるので外へ出られないし、ありがたい
買い物の機会が限られる住民に、ちょっとした楽しみを…
これが村上さんの思い描く「デリナカズミ」の姿。
デリナカズミ 村上裕紀子さん:
ちょっと楽しいワクワクするみたいな存在になれたらうれしい。コストの面でも課題は多いと思いますけど、だからこそやると思って始めたことなので、色んな形で生活の暮らしのサービスに関わるような活動をしていけたらと思っています。
(長野放送)