安倍首相肝いりの「働き方改革」で“ブラック企業”完全淘汰を

安倍首相の「働き方改革」は2017年3月末にも、指針や方策を示す予定。「非正規」という言葉をなくす、長時間労働をなくすなど、首相自らスローガンを示した政権の経済社会政策の重点だ。

カテゴリ:国内

  • 長時間労働に対して応分の給料を支払わない企業
  • 部下に異常なプレッシャーを強いる労働環境
  • “ブラック企業”に若い人は行かない

2015年に団塊の世代が65歳になり、ほぼ全員が年金受給開始年齢に達し、労働力人口が減少した。

この働き方改革は、労働力減少の対策として女性や高齢者の雇用促進を図り、出生率低下への対応として非正規で働く人たちの年収増など安定雇用の環境を確保し、安心して家庭を持ち、子育てをしやすくすることである。

様々な法制度の改正が必要であり、改革は緒に就いたばかりである。

この働き方改革で、もう一つ確実に狙いを定めた方がいいという点を指摘しておきたい。それは、いわゆる“ブラック企業”の完全淘汰である。

“ブラック企業”の定義は一様ではなく難しいが、大まかに2つがあると思う。

【ブラック企業の定義その1】長時間労働に対して応分の給料を支払わない

1つ目は、長時間労働を強いてそれに対する応分の給料を支払わない企業だ。

中小企業に例が多いが、社長ら経営者らが「俺が給料を払ってお前ら従業員を食わしてやっている」という、前近代的な考えを深層心理に持っているケースが多い。こうした会社はすでにバブル崩壊後の20余年で多くは姿を消しているが、いまだに経営者が勘違いしているケースも散見される。

だいたい、会社に収益が出ているのは「従業員が働いているおかげだから」という基本的な認識が経営者の心の奥底にない場合がほとんどだ。

経営者が「俺が食べさせてやっている」という意識を持つ会社は、いずれステークホルダーに見放されるのであり、今回の働き方改革に合わせて、徹底的に日本から姿を消す画期にしてほしいものである。

生産年齢人口の減少に伴う人手不足は、普通なら主に人件費増で対応しない限り雇用者の確保は難しくなる。

【ブラック企業の定義その2】部下に異常なプレッシャーを強いる労働環境

2つ目は、収益は出ているが企業文化として労務管理がいびつで、その結果として労働環境が“ブラック化”している企業だ。

この場合は、完全淘汰を目指すことはもともとの人間の弱さからは難しいかもしれない。

異常なプレッシャーや労働を強いられるケースの多くは、中間管理職や管理職の底の浅い功名心が組織全体に通奏低音のようにある企業の場合であろう。

目先の短期的な手柄や業績を管理職として喧伝し、出世したいという動機から部下に普通でないボリュームの労働やプレッシャーを与えている場合である。
「部下は1日で上司を見抜く」というが、底の浅い出世欲をにじませる管理職は、部下から軽蔑されるだけの存在で、その管理職からの命令に対しては単なる面従腹背状態が生じるだけであろう。言わずもがなであるが、この状態は生産性を低減させる。

人間は感情の動物であり、経営学の教科書に異口同音に示されていることは「人間は古今東西、誰一人として奴隷のような気持ちで働きたい人は絶対にいない」というシンプルなものである。

労働力人口、生産年齢人口減少という労働力供給の制約がある中、“ブラック企業的管理職文化”が蔓延するような企業には、今後もう優秀な若い人材は集まらなくなるのは必然になっていくかもしれない。若い人たちの労働への価値観が多様化する中、また、主にサービス産業などで組織のフラット化も進む可能性がある中、量的変化が質的変化を生む可能性も出ている。この質的変化の兆しを企業文化面での“ブラック企業”淘汰に結び付ける方向に向かってほしい。