【日米首脳会談に向けて】“B級ビジネスマン(?)大統領”とどう付き合うか

“内向き”指導者トランプ氏は“内省感”のある人物なのかどうか

カテゴリ:国内

  • 内省的感覚がトランプ氏にないなら、世界は混乱していくだろう
  • 日米首脳会談で重要なのは、安倍首相がトランプ氏の本質を見抜けるかだ
  • トランプ氏は徹底したビジネスマンなのか、“ずぶずぶ感”が入り込む人物なのか

私は経済担当の解説委員なので、心理学者ではないし、政治家人物研究、分析の経験もないが、アメリカ・トランプ大統領の誕生については、トランプ氏がビジネスマンということもあり、経営者像の観点から分析してみたくなったので今回はその私見を。

むき出し、露骨、小心、思い込み過多、直情型、思い上がり、単細胞、単眼的、近視眼的…。

選挙戦から当選までの演説、1月末の大統領就任演説、マスコミメディア対応発言やぶら下がり(設定された記者会見以外で記者の質問等に応じて話したり、自らメディアに話したいことを短時間で話すこと)や、ツイッターの発言など、トランプ氏の発言やその表情を見てきて、常にこれらの形容詞や単語がいつも頭に浮かぶ。

これは単にトランプ氏のキャラクター、パーソナリティに帰するだけかもしれないが、世界に多大な影響を与える国家指導者、政治家、あるいは経営者として、考え抜くことからにじみ出る深い哲学や、“トップ”として「選ばれてあることの恍惚と不安」の風情すら感じたことがない。

政治家と経営者を一緒に論じることはできないが、幾人かのグローバル事業展開企業の経営者を取材した経験からは、“うちの会社だけ儲かればいい”という感覚がにじみ出る経営者はあまりいない。

会社の経営のあり方に世界、社会、ステークホルダー、関係業界など、多方面に同時に思いを致しつつ、想像力を働かせて、悩みつつ、穏やかかつ毅然とした経営者が多かった。

そうした経営者像とはいわば正反対の人物感を、国家指導者としてのトランプ氏に感じる。就任直後からむき出しスタートのTPP離脱、NAFTA再交渉など保護主義、マルチ(多国間)よりバイ(2国間交渉)の取引的?姿勢、巨額財政出動と偏った規制緩和といった、経済政策方針の具体像の今後も重要だが、この人物が多角的重層的思索と孤独な指導者としての重圧をどうマネジメントするのかの方が心配である。

世界で最も影響力を持つ国のリーダーでもすべてが自分の思う通りになるとは限らない。そういう内省的感覚がトランプ氏に今後もないなら、経済面だけでなく、世界は混乱していくだろう。

今週末(2月10日)、日米首脳会談が行われる。焦点は経済面については、▼TPP離脱表明後の通商戦略、特に日本に対しての2国間の通商についてどういう方針を持っていて、どういう話になるか▼トランプ氏が言及している自動車市場のこと、特に日本市場への米国自動車の輸出量(日本にとってみればアメリカ車を輸入すること)やアメリカの対日本の貿易赤字(日本の対米貿易黒字)の関係▼「日本と中国は通貨安誘導をしている」という為替政策のトランプ政権側のスタンス、などだ。それぞれがどう話題になり、どういう話し合いが行われ、いわゆる“トランプ氏の思い込み”等が氷解する方向に向かうかどうか。

しかし、今回の日米首脳会談で一番大事なことは安倍総理が、ゴルフも共にしながら2日間にわたって日程をこなす中で、トランプ氏という人物の本質を見抜いて、見定めることができるか、ということではないだろうか。

理詰めでも理詰めでなくても、トランプ氏が徹底したビジネスマンとして、利害を突き詰めて丁々発止で対応してくるのか、またその関係を日米の首脳で認識しつつ今後の2国間関係や交渉の在り方を作っていける人物かどうか。

一方、徹底したビジネスマン的な利害で交渉・対応する面以外に、個人的な感情をベースとした日米首脳間のいわば、国家の利害とは少し違う次元で「安倍ちゃん、そこんとこよろしく、何とか頼むよ、おれ(トランプ氏)と安倍ちゃんの仲じゃないか」という感じのトランプ氏側の対応が今後生まれてしまうタイプの人物かどうか。

私は、前者の場合は厳しく激しいながらも2国間の、国家と国家の冷徹な交渉の在り方はこれまでの近代政治外交の範疇に収まると思うが、後者の場合は“未知の領域”に入り込む可能性や恐れがあると思う。とても品のない言葉でいえば、“ずぶずぶ感”が入り込む可能性や恐れがあるということだ。

“トランプはいつまでたっても永久にトランプのまま”、あるいは“トランプは○○なきゃ治らない”みたいな感じなのかどうか。

トランプ氏が政治家として、権力者として、前者なのか後者なのか、今回は安倍・トランプ会談としては2回目だが、首相と大統領としての会談は初めてであり、“トランプ氏という人物の本質”を安倍首相が見極めて帰ってくること、その人物像とトランプ氏の思考回路や行動様式のベース、本質を判別してくることができるかどうかが、今後の日本とアメリカの関係を占うことになる、と考えるのである。