16 日の日経平均株価終値
16 日の日経平均株価終値
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株価の上昇に弾みがついています。
16 日の日経平均株価は終値で2万1200円台を回復して、10営業日連続で年初来高値を塗り替え、約21年ぶりの高値を更新しました。

アメリカをはじめとした世界的な景気拡大への期待を背景に買いが広がり、企業業績が一段と伸びるとの観測も株価を押し上げる材料となっています。

こうしたなか、投資による資産形成を助けるために導入された「NISA」(ニーサ)と呼ばれる投資優遇制度をめぐり、新たな動きが始まっています。

NISAは、株式や投資信託などで得た利益を非課税にする制度ですが、その「積み立て」タイプである「つみたてNISA」が来年からスタートすることになっていて、今月から申し込みの受付が開始されたのです。

 
 

「つみたてNISA」…非課税の投資枠上限は40万円、期間は20年

現在のNISAは、非課税となる投資枠の上限が年間120万円で、期間は最長5年間ですが、新たに始まる「つみたてNISA」は、毎月決まった金額を投資信託に積み立てていくタイプで、年間投資上限額は40万円と現行のものより低いものの、非課税期間は20年にわたるという特徴があります。

一度、購入する商品を決めて手続きすれば、毎月一定額をコツコツ積み立てる形で投資することができるというものですが、政府が、この「つみ立てNISA」に力を入れる背景には国内で投資による資産形成が進んでいない現状があります。

毎月一定額をコツコツ積み立て…

日本の家計が保有する金融資産は約1800兆円に上るものの、現金・預金がほぼ半分を占め、株式・投信は15%と、大きな偏りが見られるほか、金融庁のまとめでは、ここ約20年間で家計金融資産は、アメリカが3.32倍、イギリスは2.46倍に増えたのに対し、日本は1.54倍にしかなっていません。

アメリカ・イギリスでは運用収入により資産が増えた一方で、日本では、低金利の環境下で資産が預貯金に偏っていたために数字が伸びなかったとみることができます。

2014年に始まったこれまでのNISAも、口座数こそ、3月末現在で1077万を超えたとはいえ、一度も買い付けが行われていない「非稼働」のものが証券会社のNISA口座の4割を占めています。

 
 

こうした現状の打破を図るべく打ち出されたのが、「つみたてNISA」です。

安定的な資産形成に向け投資を始めやすい制度を目指し、「長期」「積立」「分散」投資というキーワードを掲げ、それらに適し、手数料が0円もしくは低水準で、信託報酬も低いという一定の投資信託に対象商品が限定されています。

あらかじめ決まった金額を続けて投資していけば、安いときに買わなかったり、高いときにだけ買ってしまったりすることを避けられるほか、値動きの異なる複数の資産に分散投資し、長期間続けることで、リスクの軽減効果が生まれる傾向があります。

値動きの異なる複数の資産に分散投資

金融庁は、2015年までの20年間、毎年同じ金額で3パターンの異なる投資を行った場合の、各年末の累積リターンについて試算を行っていますが、全額が定期預金の場合は、損は出なかったものの、20年で1.32%増えただけなのに対し、国内の株と債券に半分ずつ投資した場合は、年によりプラスマイナスを繰り返しましたが、最終的には38%のプラスとなりました。さらに、国内・先進国・新興国の株と債券に、6分の1ずつ投資した場合は、上昇下降はあったものの、各年でマイナスとなることはなく、最後は79.9%増となっています。

日本人の資産が投資へ向かわない大きな理由の一つに、元本割れに対する警戒心があるとされるなか、つみたてNISAを通じて、長期・積立・分散投資の効果を経験できる機会を増やし、安いときに買って高いときに売ろうという短期売買でなく、長期的な視点に立った資産形成が広がることにより、市場を活性化していく、これが政府の狙いです。

対象として届け出があった商品は、今月2日時点で、公募投信5000本のうち103本。3月時点の対象数からは倍増しています。

iDeCoの運用利益も非課税。掛け金は所得控除の対象

長期・積立・分散による資産作り制度としては、ほかに、iDeCo(イデコ)と呼ばれる個人型確定拠出型年金もあり、今年から、加入対象者が、従来の自営業者や企業年金のない会社員のほか、専業主婦や公務員などにも広がりました。

運用で得られた利益が非課税になる点はNISAと同じですが、こちらは、さらに、掛け金の全額が所得控除の対象となり、税金を軽減できるのが特徴です。ただし、原則60歳になるまで資金を引き出せません。

 
 

年金受給開始年齢の引き上げが検討されるなか、老後の安定した暮らしを確保するうえでも、若年層を中心に、自発的に資産形成に取り組むことの重要性は増しています。

税優遇制度の選択肢が増え、投資初心者が知識を深め、経験を積むことを後押しする環境を醸成できるのか、「長期的な投資運用の定着」への模索は緒に就いたばかりです。

智田裕一
智田裕一

金融、予算、税制…さまざまな経済事象や政策について、できるだけコンパクトに
わかりやすく伝えられればと思っています。
暮らしにかかわる「お金」の動きや制度について、FPの視点を生かした「読み解き」が
できればと考えています。
フジテレビ解説副委員長。1966年千葉県生まれ。東京大学文学部卒業。同大学新聞研究所教育部修了
フジテレビ入社後、アナウンス室、NY支局勤務、兜・日銀キャップ、財務省クラブ、財務金融キャップ、経済部長を経て、現職。
CFP(サーティファイド ファイナンシャル プランナー)1級ファイナンシャル・プランニング技能士
農水省政策評価第三者委員会委員