「辞めなくてもよかったのでは」

平井上席解説委員:
二人というのは蓮舫民進党代表と稲田防衛大臣です。 僕は二人とも辞めなくても良かったんじゃないかって未だに思っているんです。

まず、稲田さんの日報問題ですが、これはPKOに行っていた 現地の兵隊さんが「戦闘」のようなものを「武力衝突」と書けばいいのに「戦闘」って書いたもんだから PKOが続けられないと言うことになった。本部で色々相談したあげく、これはあくまで 「武力衝突 」だった、「戦闘」ではないという判断をしたのに、 日報には「戦闘」と書いてあったという問題 なんですね。これは、日本の安全保障の根幹に関わる問題じゃないんです。 それから 「自衛隊が応援します」という発言も、別に稲田さんがそう言ったからと言って自衛隊の人が投票するわけではないのでこれも法令違反ではない。

稲田さんは”保守のエース” なので、これを早く潰したいという勢力がいて、その動きに安倍さんがむきになったという状況があった。

一方の蓮舫さんはもっと気の毒です。師匠である野田幹事長をクビにして他の人に頼みに行ったら皆断られちゃった。最後は孤独の中で辞任した。戸籍の問題も、ミスなんですけれども、おそらく総理になるわけではないのでそこまでいじめる 必要なかったんじゃないか。つまり  左の人が右のエースの 稲田さんを潰し、右の人が左のエースの蓮舫さんを潰した。お互いが潰しあっている。ただでさえ女性が少ないのに そんなに人材 潰して良いのかと私は思いました。

ーー二人の辞任、決定打となったものは何だったのでしょうか。

平井:
稲田さんは、監察結果は白だったが、陸幕長が辞めるって言ったんで、陸幕長が辞める以上は自分も辞めざるをえなくなったんですよ。確かに自衛隊の中がバラバラになっちゃったんです。それはもう辞めざるを得ないですよ。

ーー稲田さんといえば、安倍総理のお気に入りですよね。稲田さんが辞任することで、 安倍政権にはどのように影響が出てくると考えですか。

平井:
保守のエースですから それを失うのは安倍さんにとっては痛手です。しかし、かばい過ぎた為に支持率も下がってしまった。もうちょっと早く切っておけばよかったけども、安倍さんとしてはむきになって守った。しかし、僕は 仕方がない気がします。つまり  どの問題も全て日本の政治の根幹に関わる話じゃないんですよ。潰す為に出しているような話なんです。だから、僕は 安倍さんの態度はそんな間違っていないと思いますけども ただ 世間の動きはそうじゃなくても「稲田けしからん!」ってなっちゃってるんで、皆よく分からずに言ってんですよ。稲田けしからんって。確かに稲田さんも悪いところもあるんですけど、例えばあの服装とかね。しかし、やはり、稲田いじめの部分もあるな。両面でしょうね。それは、蓮舫さんについても同じですよね。

戸籍謄本を出すというのは尋常な話ではない

ーー蓮舫さんといえば、戸籍の問題もありましたね。

平井:
戸籍謄本を出すというのは尋常な話ではない。プライバシーに関わるし、家族も名前がのっていますから。そこまでするほどのことなのか。確かに、総理大臣になるんだったらそれはどの国民にどの国家に忠誠を尽くすかって大事なので、それは日本人であることを明らかにする必要はあるんですけれども、そうでない人に そこまでやるべきなのかという問題です。だからちょっとそこは 稲田さんと全く逆で、右の人が左のエースをいじめたって言う感じを持ちました。お互いがいじめあっている。

政界って、女性が少ないんですね。参入が難しいんですよ。数も少ないし、上にいってもすぐ潰されちゃうんですね。他の国では皆、女性が首相になったり上にいっているんですが日本ではなかなかならないですよね。今回も 左右の両エースが潰されちゃったでしょう。日本では、女性の総理って遠いなあって感じがします。

ーーお互いに潰しあうんですね。

平井:
男性の嫉妬、女性の嫉妬、もありますよ。女性活躍社会って言いながら実は活躍する女性のことが憎らしい・・・みたいな。もちろん 何か理由がなくてはだめだけど、何か 少しでも付け入る隙があったら バッーっと責める、ということがありますよね。今回の「稲田 蓮舫いじめ」って それがすごくあるなと思います。二人ともトップを狙っていたわけだから、勿論本人の不徳の致すところなんですよ 一瞬の隙を見せてもいけないんだけど、それにしてもこの国は、細かいことをグダグダ言うな、と思います。

先日小泉進次郎さんが言っていました。「この国は若者を潰す国だ」って。「若者をおだてておいて、何か失敗したら すぐ批判して、ボコボコにされる。だから僕は大人しくしてるんです」って言っていたけど、僕ね、小泉さんのような37歳の政治家にそんなことを言わせてしまうというのは、駄目な国だなと思いましたね。

そういう風に僕らが思われているんですよ。こいつら 俺のことをおだてておいて潰すんだ、思われてる訳ですよ。確かにそういう面ってあるんですよ。それは良くないです。

若者や女性に、もっと力を持たせて、もっと力を発揮させる社会を作らないと日本はだめになりますよ。親父ばっかり威張っていては。

ーー今回お二人が辞めることで、今後どの様な影響が具体的には出てくるんですか?

平井:
どんどん上を目指す女性ががいなくなると思いますね。

今井絵理子さんの不倫、といわれていますが、あれは不倫ですか?本当に。だって 今井さん 独身でしょ?彼ももう奥さんと別居しているんでしょ? だったら自由恋愛でいいじゃない。それなのにさっきテレビを見ていたら「今井さん辞めろ!」と。何で辞めなきゃいっけないのって思いました。つまりマスコミって、面白いからどんどんフレームアップしていくでしょ?だけど、やられる方にしたらたまったもんじゃないですよ 。

特に女性の場合は 色々ハンディキャップはありますよ 。妊娠、出産、 体調、体力の面でも。男性とはまた違うんでね。国会って、昔は女性トイレもなかったんですよ。遠くにあって走って行ってた。今は、だいぶ増えましたけど。酷い社会 なんですよ

ーー本当に男性社会 なんですね。

平井:
でも、女性をもうちょっと活躍させないともったいない。能力があるのにもったいない。そういう女性が「政界って嫌だなあ」と思うのが一番困りますよ 。そういう風にならないようにしてほしいな。

ーー政界だけでなく、 一般的にも女性が活躍できる社会になるといいですよね。

平井
そういう社会を作ろうとしている訳ですから、政界というのはその象徴みたいなところだから、当然閣僚にも半分は女性がいるべき。 でもいないんですよ 。何故いないか って言うとね いい人がいないんですよ。閣僚にしてしまうと、失言してしまいそうで怖くて閣僚にできないんですって。総理の側近がいうには。
いい人材が入ってこない。

ーー折角スター性のある方が出てきたと思うと、 また 潰されてしまう?

そうなんです。悪循環なんです。

平井文夫
平井文夫

言わねばならぬことを言う。神は細部に宿る。
フジテレビ報道局上席解説委員。1959年長崎市生まれ。82年フジテレビ入社。ワシントン特派員、編集長、政治部長、専任局長、「新報道2001」キャスター等を経て現職。