安倍さんは改造で実は嫌いな野田聖子氏や変人の河野太郎氏を入閣させるなどして、あとは林、小野寺、上川などの実力者を再入閣させ斎藤、小此木など初入閣も実務派そろえた。

少なくとも「出血」は止まった感じで支持率下落は止まるのではという気がします。

河野氏は変人だが、前回入閣で意外にお行儀良かった。内閣不一致の危険性が少ない。菅さんが野党時代に、河野さんの突破力に期待して総裁に推したことがあるくらい仲が良い。

さらに父の洋平さんはリベラルでしたが、太郎氏はむしろ歴史観や安保観ともに安倍さんに近く、心配がなく安心感がある。むしろ安倍さんの外交観の範疇内で冒険をして思い切ったことをしてほしいという期待感があります。

もう一人の野田さんは、これまでは反安倍ということを言っていて石破さんや岸田さんと比較すると格が下、という印象でしたが、総裁候補としてはこれで完全に並びました。今後は週2回、大臣会見がありますので、ここで色々と発信をして、もしこれがうまくはまれば今後は、安倍さんを食ってしまう可能性もあるわけです。つまり来年の総裁選にむけて彼女が最大の障害になる危険性もあるという存在です。

あと二人岸田さんと石破さんです。

岸田さんは味方につけ、石破さんは敵にまわしました。それが明確になりました。そんな中で野田さんが今後どんな対応を示すのか、が今後の最大の見どころになると思います。

ー野田さんは安倍さんにとってはライバルでもあるでしょうが、何故、入閣できたのか?

「安倍一強」はけしからん、おごっていると批判されているので、それをかわす狙い。また、野田さんは女性でしかも子育てをしているので、小池さんに対抗できる人。小池さんが何かいっても野田さんが切り返せば政権としてうまく使える。安倍さんを総裁選で脅かすまではならないだろうというのが安倍さんの判断。もしブレイクしたら安倍さんは困りますね。

ーでは野田さんは小池都知事を意識しての入閣?

女性の待望論は強い。稲田さんが失敗したので、自民党内で、新たな女性のトップがほしかったということもある。だけど敵である。敵を使うのは難しいんですがね。

ー≪河野談話≫については、安倍さんはいい印象を持っていないが、太郎さんは洋平さんの息子さんですよね。

中国韓国は、太郎さんは洋平さんの息子なので日本は今後中国韓国に優しくなるだろうとマスコミが言っているのですが、それが大きな勘違いです。
太郎さんはむしろ歴史観、安保観では安倍さんに近く、それは大丈夫だとふんで外務大臣に任命している。前回の大臣でも意外と行儀がよく、クレバーで、内閣不一致のリスクはない。

―支持率は回復という面で、ほかのメンバーも含め如何でしょうか。

他の方は、実務派ばかりです。ミスはない。では支持率が上がるかというと、そんなに簡単ではないです。それは小泉進次郎さんを入閣させれば支持率は上がるでしょう。しかし本人も潰されるのがいやだからやりたがらない。それに実力に応じた人を入閣させたほうがミスはないですが支持率は急には上がらない。ただ、下げ止まればいいな、と安倍さんは思っているんだと思います。すこしずつ積み重ねて、上がればいいと。

ー長期的視点ではどうですか?

それは野田さの活躍次第、経済状況次第、また、政策が実現するかどうか。

ー憲法改正について、時期にこだわらないと。

当初は2020年中に何が何でもやるということで、来年中にもやると思われていたのですが、昨日の会見では方針転換をして「スケジュールありきではない」と言った。改憲については党内の取りまとめは岸田さんがやる。岸田さんには2020年、または2021年までには総裁の座を譲ると約束していると思う。だから総裁選でも票を分け合ったりする。岸田さんは安倍さんには逆らわない。安倍さんが改憲をしたいと言えば、岸田さんが合わせてくると思う。安倍さんはぐっとこらえてそれを待って改憲してくる。

私は安倍さんに直接聞いたんです。「安倍さんが憲法改正しないと、あなたが総理になった意味はない」と。そしたら安倍さんはっきり言ったんです。「私は必ずやる。9条は必ず変える!」と。
彼は憲法改正できないなら、総理を辞めますよ。それが彼の存在理由だから。「やるか」「辞めるか」どっちかです。

ーそれを期待している人も多いですか?

現在の支持率が約35%ですよね。改憲をやらないなら、その35%でさえ離れてしまいますよ。

―注目ポイントは?

野田さんがどう化けるかでしょうね。野田さんは頭がいいので、内閣不一致にならないように根本的な反対はしないで、こちょこちょと安倍さんをいじりながら発言をしていく。そこで人気が上がれば総理になる。それが上手くいかなければ岸田さんになる。石破さん三者が睨み合いながら、そこに河野さんも入ってくるかもしれない。

ポスト安倍の構図が見えてきた。国民にとって視野が開けてくる。

平井文夫
平井文夫

言わねばならぬことを言う。神は細部に宿る。
フジテレビ報道局上席解説委員。1959年長崎市生まれ。82年フジテレビ入社。ワシントン特派員、編集長、政治部長、専任局長、「新報道2001」キャスター等を経て現職。