「共同経済活動は北方領土返還とトレードではない」 ロシアの本音に切り込む

ロシアの軍事・安全保障の専門家、「プーチンの国家戦略」の著者 小泉悠氏がロシアの思惑を解説

カテゴリ:ワールド

  • ロシア側はアメリカの同盟国である日本がどこまで自分で決められるかと懸念
  • ロシア側から日露2+2(両国の防衛担当と外交担当による会議)再開提案の理由とは?
  • 朝鮮の核・ミサイル開発では利害は一致するが米の軍事プレゼンスが上がることを問題視

能勢:
ロシアは、とにかく経済活動が平和条約締結に向けての一歩のための基盤ということを言っているんですね。

小泉:
能勢さんの「一歩のための基盤」はそうだなと思うんです。つまり共同経済活動が北方領土返還とトレードではないんですよね。ロシア側のロジックではこれくらい経済協力をやってくれたら話し合いを始めますよということ。ロシア側の立場が色濃く表れていた。
日本側としてはロシア側のロジックをまずはのんで、こっちから経済協力をしますから、いよいよ平和条約を始められんでしょうね?という所が今の焦点だと思います。

能勢:
わざわざロシア側から日露2+2(ツープラスツー:両国の防衛担当と外交担当による会議)の再開を言ってきたのはなぜですかね?

小泉:
ロシア側としては島を引き渡して大丈夫なのかという懸念がありますよね。プーチン大統領の独占インタビューの中でも日本はアメリカの同盟国じゃないですかと、同盟上の義務を負っていますよねと。その中で日本はどこまで自分でものごとを決められんですかと相当率直にプーチン大統領は言っていて、これはロシア側の立場そのものだと思うんです。もうひとつプーチン大統領が言ったのは、中露は40年かけて信頼関係と作ったんですよと。ロシアと中国はいろいろな問題でいがみ合っているですが、中国は自分のことは自分で決められるんです。日本はここで約束したとしても対米関係上、本当に大丈夫なんですか?というのがロシア側が必ず突っついてくるポイントなわけです。
だったら日本と領土の話をするんだったら、まずは2+2のハイレベルな防衛対話をやって、あるいは止まっていた日露の合同海上捜索救難訓練を実施するという話が日程に上ってくると思うんですが、少なくともこれまでできていたことはやるましょうよと、さらにその先に深い防衛協力とか信頼情勢措置とかができたら初めて信頼関係の確立というのがロシア側の言い分だと思います。

能勢:
15日の会談ではロシア側の話では北朝鮮の話もしたと言っています。日本にとって安全保障上の懸念材料はまず北朝鮮、そして中国の海洋進出ですが、そういったことも日露間の議題になりうるのでしょうか?

小泉:
中国の海洋進出に関しては微妙なところがありますが、北朝鮮に関しては日本とロシアが話せる立場にあると思います。ロシアにとっても北朝鮮の核・ミサイル開発はありがたくない。不拡散はロシアの国益であるという立場、そして朝鮮半島の軍事化が進むとアメリカの軍事プレゼンスが高まってくるわけです。これはありがたくない。さらにそれを話しあうためのフォーマットとしてロシア側は6者協議に引きずり出したいと考えている。北朝鮮問題を好機としてロシアが北東アジアの安全保障に入り込むにはロシアとしてはありがたいわけですよね。
ただ、サードの韓国配備の問題を最近ロシアが言い出したのでちょっと複雑化している。


(執筆: 能勢伸之)

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