森本・元防衛相が解説!トランプ政権下、日本は安全保障で「新しい関係」を迫られる

森本敏(もりもと・さとし)元防衛大臣が2時間生で解説した日米安全保障の未来。その一部を再録で紹介する。

カテゴリ:国内

  • トランプ政権下、2月2日~4日にマティス国防長官が韓国・日本を訪問
  • 米軍駐留経費よりも直接の防衛努力を求められることが課題となるだろう
  • 共同開発を日本側から新たに提案していくなど新しい発想で対応を

能勢伸之解説委員:いよいよアメリカのマティス国防長官が日本に来ます。マティス国防長官は日本とどんな話をするつもりなのでしょうか?

森本・元防衛大臣:わかりません。
わかりませんが国防長官就任以来、最初の訪問国として韓国・日本を選んだというのは非常に意味があると思います。
最初に韓国においでになるんですが、韓国は今、大統領の職務は停止され首相が大統領代行をやり、裁判所がどういう判決をするかということによるかと思いますが…今年の夏前には大統領選挙が行われるかもしれない。
一方、日韓の関係というのはご覧のとおりで、大使、総領事を引き上げてしまわなければいけないという状況なので日韓関係も順調とは言えないですよね。
アメリカとしては今年の6~8月ごろにTHAADミサイルを計画どおり配備したいということなので、これを確実にするということが第一。そしてもうひとつは在韓米軍の将兵に対する激励…今は大使も帰ってしまっていませんので。
大統領がいない今の韓国政府と米韓の同盟関係をきちっと維持するということをやりながら、その成果をふまえて日本においでになって日米の同盟関係を確実に強化するということを確認しあうというのが目的だと思います。
もちろん場合によっては在日米軍の将兵に対して激励の言葉を投げかけられるという機会があるのかと思いますが日程がまだよくわかっていませんので。
いずれにせよ安倍首相の訪米直前なので日本にとって非常に重要です。私は稲田防衛大臣との会談もさることながら安倍首相表敬の中でどういうメッセージが交換されるかに非常に注目しています。

能勢:アメリカからのメッセージとなると気になるのは在日米軍の駐留経費です。

森本:平成29年度に要求しているのはおよそ1,962億円で去年とさほど大きな差はありません。これは去年の4月に5年の特別協定を結んだところなので、その協定に基づいて額は維持されると思います。
トランプ大統領は在日米軍のための日本のホストネーションサポートが少ないと、そして全額払わないと軍を撤退するぞと言っておられたんですが、大統領になられてからはその発言は控えておられる。

少し事実認識に関しては理解をしていただく必要があると思います。おそらく日本はアメリカの同盟国の中で最も顕著な、抜きん出たホストネーションサポートを拠出しているので、極端なこと言うとこれ以上払うということになると、在日米軍の将兵の給与や、アメリカの国防省で予算を取ってやらなければならない事業…たとえば施設整備は燃料費といった活動にかかわる直接の経費まで払うことになり、これは合衆国憲法の趣旨から言って、到底できない。
ホストネーションサポートについては日本側の説明をしてそれを理解してもらうということにとどまると思いますね。

問題はそうではなくて、「防衛努力」についてどういうやりとりが今後行われるのかということです。これは防衛費にかかわることもありますが、どちらかというとアメリカがアジア・太平洋に持っている米軍の機能や役割をもう少し日本が負担する、強化するというのが防衛努力です。

能勢:直接の役割分担ですか?

森本:たとえば後方支援をやるとか、あるいは日米で基地の共同使用をするとか、日米で兵器の共同開発をするとかということを含めたもので、それが「直接」という意味です。
何でこういうことになるかと言うと、経済について日本は貿易摩擦が中国ほどではない。それなりに良質の製品をアメリカに輸出しているので、あまりアメリカに妥協する必要はないと判断します。
しかし安全保障については冷戦後、ずっとアメリカに依存して国家の安全を維持してきた。トランプ大統領が言っている同盟国がその対価をもっと払えということ、対価というとお金だけではなく、役割を果たしなさいということです。それは今後日米間でちゃんと協議をしながら、どういう貢献をすることが日米同盟をさらに強化することにつながるかとうことについては、これから然るべきところに収まっていくと思います。
私はさほど心配していませんが、今までどおりで良いとも思っていません。単にアメリカの装備を買って防衛費が増えるというのには私個人としては賛成しません。

能勢:今おっしゃった共同開発ですが、何か具体的にはお考えになっていますか?

森本:日本の防衛調達の経費の7割以上はアメリカの商品、つまり防衛装備品をFMSで購入するということです。FMS日本側からわかりやすく言うと完成品を買っているということ。だからライセンス国産みたいに日本の産業にはお金が落ちないんです。
だからいくらアメリカから防衛装備品を買っても日本の防衛産業は利益を受けないので疲弊していくだけなので、そうではなく共同開発をする案件を日本側で作る。日本の防衛費は増えるかもしれないが、そのお金が同時に日本に落ちる、そういう道を日本の側から打ってでなくてはならない。日本からアイディアを出していく。

能勢:たとえば?

森本:私は一番良いと考えるのは無人のシステム。たとえば無人の航空機だとか、AIとかIoTを使った・・・わかりやすく言うと人工ロボットで運用する潜水艦などを共同開発して海に浮かべる、それで日本の産業も利益を受ける。アメリカも同時に日本の技術を使うことができる。
そういう案件を日本側からどんどん提案していくということもひとつの方法だろうと思います。

いずれにせよ、ヒラリー・クリントン政権だったらそのままで良かったことが、トランプ大統領が誕生したことで、新しい発想を迫られているという感じは強くしますね。
(文責:松島 スタッフ:能勢・中西・北原)

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