アイドル急死の原因か。「致死性不整脈」による突然死を防ぐ

実は、日本では7.5分に1人が心臓突然死で亡くなっています。その原因の大半は「致死性不整脈」です

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  • 致死性不整脈「心室細動」を発症すると数分で脳死
  • 救急車を待たずにAEDを!
  • 不整脈は重い脳梗塞の原因にも

7.5分に1人!多くの生命を奪う「致死性不整脈」

18歳で死去した人気アイドルグループ「私立恵比寿中学」のメンバー・松野莉奈さんの死因について、所属事務所は「致死性不整脈の疑い」と発表しました。

松野莉奈さん

実は、我が国では年間約10~12万人の突然死があり、このうち約7万人以上が、心臓の異常が原因となる心臓突然死です。

実に、一日に約200人、7.5分に1人が心臓突然死で亡くなっています。そして、心臓突然死の原因の多くが「致死性不整脈」なのです。

不整脈は健康な成人の誰にでもあり、ほとんどは無害

心臓は筋肉だけでできている臓器で、血液を全身に送り出すポンプの役割をします。ペースメーカーの役目をする洞結節から弱い電気が流れて、心房から心室に伝達されて拍動を生じ、血液が全身に送り出されます。通常は1分間に約60~80回の規則的なリズムで拍動を繰り返していますが、不整脈とは、この心臓のリズムが異常になった状態を指すのです。

実は不整脈は、成人で「全く無い人はいない」と言っていいほど、一般的なものです。しかも、ほとんどの不整脈は無害で、心臓のポンプ機能を悪化させる事もありません。では、死に至るという「致死性不整脈」とは、一体どんな不整脈なんでしょうか?

3~5分で生命を奪う恐ろしい「心室細動」

「致死性不整脈」の1つに、「心室細動」と言う不整脈があります。まさに、この「心室細動」こそが、心臓突然死の大半の原因です。

運動中に突然死する原因の多くも、心室細動です。左心室は、血液を心臓から全身へ送り出す重要な役割を果たしています。

しかし、「心室細動」を発症すると、心臓内に異常な電気刺激が発生します。すると、心室の筋肉は、1分間に300回以上、不規則にけいれんして、きちんと収縮できなくなります。その結果、血液を全身に送り出すポンプ機能が失われてしまうのです。

心室細動になると数秒でめまいを起こし、約10秒で意識を失い、さらに3~5分続くと脳死の状態となり死に至るといわれており、非常に危険な不整脈です。いったん心室細動が起こると自然停止することは、ほとんどありません。

「心室細動」から救えるのはAEDだけ!

心室細動を正常な脈に戻すにはAED(自動対外式除細動器)を使って、電気ショックで強制的に心臓の異常なリズムをリセットする「電気的除細動」をできるだけ早く行う以外にありません。

「心室細動」が起こると、医師や救急隊員がいても、AEDがなければ生命を救えません。一分一秒でも早く、電気ショックを行うことが重要なのです。

救急隊を待ってはダメ!

119番通報をしてから救急車が到着するまでの平均時間は、8.6分。
ところが、AEDによる処置が1分遅れるごとに救命率は10%ずつ低下します。
救急車の到着までに8分以上かかった場合、それまでに救命率は80%以上、低下します。

ですから、会社や学校など、AEDが設置してあるところで「心室細動」を発症した場合は、近くにいる人が速やかにAEDを操作しなければなりません。AEDは、それ自体が操作方法を指示してくれます。また、電気ショックが不要な人に対して、誤作動することもありません。

自宅で「心室細動」が起こったら?

普通、家庭にはAEDがありませんから、自宅で心室細動になったら救急車を呼ぶことになると思います。救急車が到着するまでの間、呼吸がない場合には、まずは「気道確保」をして、「人工呼吸」を行います。鼻をつまみ口から2回、大きく息を吹き込みます。その後、中断することなく「心臓マッサージ」をします。

胸の真ん中あたりに両方の掌を置き、胸が約5cm下がるくらいに強く、1分間に100回くらいの速さで30回圧迫します。

「心室細動」を発症する原因は?

心筋梗塞や心不全などの心臓病の進行にともなって起こるもの、先天性の病気に起因するもの、血液中のミネラルバランスが崩れて起きるものなどがあります。また、胸部にボールなどが当たった刺激や、感電によるショックで心室細動を起こす場合があります。

その発作、てんかんではなく、悪性の不整脈かも!

突然死のリスクがある危険な病態としては、適切な治療を行わないと心室細動に移行する「トルサード・ド・ポアンツ」という極めて危険な悪性不整脈もあります。

発症すると、意識を失って倒れ、全身痙攣などを起こすのですが、30秒も経たずに自然に収まり、回復します。しかし再発することも多く、適切な治療を行わないと容易に心室細動に移行し、突然死します。女性に多く、好発年齢は35~50歳です。

実は長い間、この不整脈を持っている人はてんかんと間違われていました。
以前は、てんかんの発作時に舌をかんで死んでしまうので、舌をかまないような処置が必要と言われていました。しかし、てんかんで死亡したと思われた人の多くは、舌をかんだためではなく、「トルサード・ド・ポアンツ」から心室細動に移行して、突然死していたのです。

長嶋さんの脳梗塞の原因も不整脈

実は、3割の脳梗塞の原因も不整脈です。

脳梗塞の原因となるのは「心房細動」という不整脈です。長嶋茂雄さんや小渕元首相が脳梗塞を発症しましたが、その原因となったのも「心房細動」でした。「心房細動」を発症すると、心臓のリズムが乱れ、心房がおおよそ1分間に400~600回も不規則に動いてしまい、うまく収縮できなくなります。すると強く動悸を感じたり、胸苦しさなどの症状となって現れます。

「心房細動」原因の脳梗塞は重症化

「心房細動」ですぐに死ぬ事はありませんが、心房全体の収縮性が低下するため、血液が心臓内に停滞してしまい、血栓が出来てしまいます。何かの拍子に血栓が剥がれると、血栓が動脈を経由して脳に到達し、脳の太い血管を突然詰まらせて脳梗塞を起こすのです。

「心房細動」による血栓は大きなものが多いため、脳梗塞は重症化するケースが多くなります。20%が死亡、40%に寝たきりなどの重い後遺症が残ります。

激しい動悸や胸苦しさなら循環器科の受診を!

先述したように、成人にとって不整脈は一般的なもので、ほとんどの場合は悪さもしません。ただし、激しい動悸や胸苦しさを感じたときは、ぜひ循環器科を受診しましょう。迅速に心電図を取ること等により、悪性の不整脈がある場合も、一般的な内科よりも早く診断できると思われます。