「治らない」が常識の糖尿病。 新たな研究成果は根治への光明に!

“予備軍”まで含めると成人男女の4分の1に上る「国民病」糖尿病。 「根治することはなく、一生付き合う病」とされてきました。しかし新たな研究成果が出ており、糖尿病根治につながるのではないかと期待が集まっています。

信太 暁子
カテゴリ:国内

  • 日本の成人の4分の1、2000万人超が「糖尿病」か「予備軍」
  • しかも日本人は体質的に「生活習慣病」2型糖尿病になりやすい
  • 新たな研究成果「β細胞再生」「異種移植」…糖尿病根治の道開くか

子どもが発症する1型と「生活習慣病」の2型

日本人の糖尿病の総患者数は316万6000人(平成26年厚労省調べ)。
さらに「糖尿病が強く疑われる」「糖尿病の可能性を否定できない」人を合わせると、なんと男性の27.3%、女性の21.8%、合わせて2000万人以上が糖尿病かその予備群になります。
糖尿病は大きく分けると、上のように1型と2型の2タイプに分けられます。

1型は北欧に多く、日本人は比較的少ない

小児1型糖尿病の発病率には人種差があります。
国内の15歳未満の発病率は、毎年10万人あたり1.5~2人です。
これは世界的にみると非常に少ないほうです。例えばフィンランドでの発症率は、毎年10万人あたり36人以上に上ります。これは日本の20倍前後の数字です。
小児1型糖尿病についていえば、白色人種に多く有色人種は少ない、緯度の高い地域に多く緯度の低い地域は少ない、という傾向がみられます。
とはいえ、乳幼児や思春期の子どもたちが、毎日数回のインスリン注射を継続する辛さは、どの国においても同様です。

日本人は「生活習慣病」2型になりやすい体質

その一方、アジア人、特に日本人は白人に比べすい臓におけるインスリン産生能力が弱く、2型糖尿病になりやすいことがわかっています。
白人の糖尿病患者にはかなり肥満した人が多いですが、日本人には少ない。
日本人の場合は、あそこまで肥満する前に糖尿病になるのです。
もともとインスリンを分泌する量が欧米人に比べて少ない私たち日本(アジア)人が、欧米化した食生活や食事を多くとりすぎれば、糖分の処理が追いつかなくなり、血糖値は上がりっぱなしになります。

インスリン分泌のβ細胞再生に成功

今回、糖尿病のマウスに遺伝子の働きを抑える「マイクロRNA」という分子を注射して血糖値を下げることに東北大のチームが成功しました。
血糖値を下げるインスリンを分泌する、すい臓のβ細胞が再生されたということです。
では、「マイクロRNA」とは、どんな働きをするのでしょうか?

「骨髄移植で糖尿病改善」からヒント得る

研究チームが最初に注目したのは、白血病治療等の骨髄移植で糖尿病が改善するという報告でした。
研究チームは、骨髄移植後に血中濃度が高まるマイクロRNAが約40種類あることを調べ、さらにその中から、β細胞の再生を促す働きのある2種類を特定しました。
マイクロRNAは、20個程度の塩基からなる小さな機能性核酸で、遺伝子の働きを抑制する役割があります。
薬でβ細胞を殺して糖尿病にしたマウス6匹に対し、しっぽの静脈にこの2種類のマイクロRNAを5日目、8日目、11日目に注射しました。

その結果、20日目には空腹時の血糖値が、注射をしなかったマウスに比べて4~5割低くなり、正常なマウスの1.2倍ほどになりました。
インスリンの血中濃度は、注射をしなかったマウスに比べて2倍になっています。

マイクロRNAがβ細胞増殖を阻害する遺伝子を邪魔!

マイクロRNAは、遺伝子の働きを抑制する役割があります。
今回は、すい臓で、β細胞増殖のブレーキ役をしている遺伝子を、マイクロRNAが邪魔をして、細胞の増殖が促されたとみられます。
実際、顕微鏡でβ細胞の増殖も確認できたそうです。

研究チームは「糖尿病の根治につながる新規の治療法となる可能性がある」としています。
マイクロRNAは化学合成できるので費用は安く抑えられます。
また手術でなく、注射で治療できるので、患者さんの負担も軽く済みます。
今後は、再生したβ細胞が時間の経過で減っていかないかどうか等を調べる必要はあります。

ドナー不足を解決する「異種移植」とは?

もうひとつ驚くべき研究成果が、昨年報告されました。
1型糖尿病治療のための移植手術として、β細胞がある「すい島」を移植するという方法があります。このほうが、すい臓移植より、患者さんの負担が少ないのです。
しかし実際は、「すい島」を提供してくれるドナーの不足で、実施は年数件に留まります。
それを解決する研究成果のキーワードは「異種移植」でした。

ブタの細胞移植で糖尿病が改善!

日本の製薬会社とニュージーランドのベンチャー企業が、ニュージーランドで行った共同研究で着目したのが、インスリンの構造や機能がヒトとほぼ同じであるブタでした。
そこで、無菌の清潔な環境で飼育したブタとブタの間に生まれた、医療用の赤ちゃんブタのすい臓から採取した「すい島」を、直径0.5mmの特殊な素材のカプセルで覆い、免疫拒絶反応を起こさず、インスリンがしみ出るように加工しました。
それを患者さん4人に、体重1kgあたり2万個を点滴で腹部に移植したのです。
その結果、血糖の状態を示すヘモグロビンA1cは4人全員で下がり、平均値では2年以上にわたり糖尿病治療の目標となる7%未満を維持しました。
これを受け、日本国内でも、数年後に1型糖尿病の患者にブタ細胞の移植を計画しているそうです。

糖尿病対策は世界的な課題

世界の糖尿病人口は4億1500万人(2015年)。
20~79歳の成人の、実に11人に1人が糖尿病有病者と推定されています。
しかも、2030年には5億5180万人に増加すると予測されています。
糖尿病関連の医療費は約81兆円(6,730億ドル)で、世界の主要国で全医療費の5~20%を占めています。
糖尿病の根治が可能になれば、世界的にも多大な恩恵があります。
マイクロRNAを使う療法や異種移植は、糖尿病の根治に至るかはこれからの研究次第ですが、期待して待ちたいと思います。