「爆買い」だけじゃ、満足できない! 日本文化に"心の支え"を求める中国人

中国で日本の生け花や茶道などが静かなブームとなっています。人気の理由は精神的に「落ち着けるから」。物質的な豊かさだけでは満たされず、内面を充実させたいと考える人が増えています。もはや爆買いだけでは満足できない――中国社会の変化を追いました。

カテゴリ:ワールド

  • 豊かさの追求に疲れ…「内面の充実」欲求が強まる
  • 生け花、茶道など…日本文化の習い事が静かなブーム
  • 「引き算の美学」…生け花から「本当に必要なもの」を学ぶ

内面を充実させたい…お花ブームの背景

中国で森月日本花道(池坊)教室を主宰する堀江森花さんの教室。
生徒はほとんどが中国人です。
ほとんど宣伝していないにも関わらず、口コミで生徒は約60人まで増えました。
なぜ今、中国で生け花を学ぶ人が増えているのでしょうか……。

「『ここに来ると落ち着く』という生徒さんが多いです」

堀江さんはこう話します。
外からは、豊かに見える中国社会。
でも、生徒たちは物足りなさを感じていると言います。

「内面的なものを充実させたい、充実させなければ」

こんな生徒たちの思いが伝わってくるそうです。

理論好きな中国人、感覚重視の日本人

生け花のルーツは中国。
仏前に花を供える習慣が日本に伝わり、独自の伝統文化・華道に発展しました。
日本では「生け花は一生かけて勉強するもの」と理解されています。
しかし、中国ではこの考えはあまり理解されていません。
堀江さんは、日中の文化の違いをどう教えるかに苦労されたそうです。
日本の伝統文化は、理論よりも、まず師匠の作品を見て感じ、模倣することから始まります。

一方、中国人は理論重視。「良い加減」とは何を意味するのか、最初は感覚では理解できません。
それでも何年か続けていると、その「良い加減」が通じるようになる、というから不思議です。

日本のバブルを彷彿…豊かさ追求に疲れて

中国はいまや世界第2位の経済大国になりました。
ただ、堀江さんは、かつての中国の方が「モノはなくても、生活を楽しんでいた」ように感じると言います。

…自分も周囲もモノを持っていなかった。
…モノのある/なしによって、心が乱されることはなかった。

でも今は違う。
…これが手に入ったら次はこれ。
…隣の人が持っていれば、自分も。

堀江さんの目には「豊かな中国」がこう映るようです。

「生活が豊かになった分、余計に飢えている」
「豊かさを追い続けねばならないので、少し疲れている」

右肩上がりの成長を続けてきた中国は、バブル期の日本を彷彿とさせます。
ただ、このままの成長が今後も続くのか、漠然と不安を抱く人も増えているのです。

引き算の美学…生け花の精神性

生け花とは、引き算の美学。

「葉も花も、これ以上無理だと思うぐらい削ぎ落とし、そこに美を見出す」

不要なものを取り除くことに価値を見いだします。
豊かさを追い求めてきた中国人と、対極の考え方です。
習い始めのころ、中国人生徒たちの多くは「もったいない」と花を切り落とすことができないといいます。
どの花を切り、どの花を残すのか。
この判断が、自分にとって本当に必要なものは何か、を自問することにつながります。
切ることとは、一つの決断。

「これを積み重ねると日常生活にも変化が表れ、決断できるようになる」

爆買いから体験型へ。
中国人観光客の日本での行動パターンも変化の兆しが表れています。
中国社会はモノの豊かさから精神面での充実へ、大きな転換点を迎えようとしています。