いまや中国人もミニマリスト志向? 日本発「断捨離」本がベストセラーに

日本で一大ブームを巻き起こした「断捨離」。これは単なる片付けではなく、モノの捉え方を見直すことで、自分を見つめ直していく引き算の解決法。 この本が、中国でも数年前に出版され、ベストセラーになった。 中国人は「断捨離」のどこに惹かれるのか? 急激な発展によって生まれた「過剰さ」が新たな悩みを生み出していた。

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  • スピード発展の代償……中国で断捨離が受けるワケ
  • 「着たい洋服がない」悩み……目に見える執着を捨てる
  • 人間関係の断捨離とは?……適切な距離の取り方を身につける

スピード発展の代償……中国で断捨離が受けるワケ

断捨離の提唱者、やましたひでこさん。
4年ほど前から中国を訪れ、各地で講演を続けています。
著書「断捨離」は中国語に翻訳されベストセラーに。
中国では1億人以上が断捨離に関心を持っているそうです。

なぜでしょうか?

やましたさんは「急激な経済発展に伴うひずみ」に原因があると見ています。
日本の倍以上のスピードで経済発展を遂げた中国。
豊かさの一方で格差は広がり、濃密な人間関係にも変化が生まれています。

「不足」はすぐに実感でき解決が可能です。
でも「過剰」の弊害には気がつきにくい。
それがじわじわと自分を苦しめる原因になっていると、やましたさんは指摘します。

過剰なモノ・情報・人間関係にがんじがらめにされる今の中国。
何とかしたいという思いが、断捨離への高い関心を呼び起こしています。

「着たい洋服がない」……着ない服は「執着」のバロメーター

もともとはヨガの「断行・捨行・離行」の教えが起源だという断捨離。
「執着を断ち、捨て、執着から離れる」を目指すものです。

この考え方を、やましたさんも最初は理解できなかったと言います。
しかし、着ない洋服でいっぱいのクローゼットを思い浮かべた時、はっとしました。
着ないのに捨てられないのは、自分の中に執着があるから。
「高かったから」「いつか着るかも」と言い訳しながら、執着を見て見ぬふりをしていたのです。

心の中の執着は目に見えませんが、クローゼットの「着ない洋服」は見えます。
最初に感じたのは自分への怒り。

「何でこんなにたくさん買っちゃったんだろう」

次に感じたのは周囲に対する怒りでした。

「何でこんなにいらないものがあるの?」

そして、洋服を溜め込むことで不安や自信のなさを埋めようとしていたことに気づきました。
そうすると、感謝の気持ちが生まれ、手放すことができるようになったと言います。
モノ軸から自分軸へ、モノを捨てることを通じて見えてきたのは、「自分に本当に必要なものは何か」でした。

人間関係の断捨離とは?……適切な距離の取り方

モノが片付かない悩みを抱える人たち。
その多くが、実は人間関係に問題を抱えている、とやましたさんは言います。
中国の講演でもこんな質問が。

――両親の溜めこんでいるものを捨てたいがケンカになる。どうすればいいか?

やましたさんの答えは「放っておきなさい」でした。

やましたさん自身が経験した人生最大の断捨離は母親との関係を改めたことでした。

「スーパー断捨離(ダンシャリ)スト」を自称するやましたさん。
対する母親は「スーパー溜め込みアン」。

30年ぶりに再同居した時、「捨てろ」「捨てない」でぶつかり合いを繰り返しました。

でもある日、こう考えるようになったそうです。
 ……母には母の人生があり、母なりに懸命に生きてきた
 ……恐らくこのまま死ぬまでモノを貯め込みながら生きていく
 ……それもまた、母の人生である
そして、やましたさんの心に変化が生じたそうです。
「母の価値観、受け入れてみてはどうか」
 ……母親は「捨てない」立場を譲らない。
 ……でも、それでいいではないか。
自分の価値観を母親に押しつけたいという執着
――これを断捨離したわけです。

問題そのものは解決したわけではありません。
でも、母親への敬意が生まれ、喧嘩はなくなりました。
母親の人生を受け入れる。
これこそ、やましたさんが身をもって知った「人間関係の断捨離」でした。

モノ・情報があふれ、人間関係が複雑化する中国社会。
その傍らで「持てる者の悩み」が人々を惑わせます。
この社会をどう生き抜けばよいか。
中国人はその答えを「断捨離」に求めているのかも知れません。