「小目標」「洪荒の力」って何? 2016年の流行語で知る中国

中国国家言語資源観測センター、人民網などが選ぶ中国の今年の漢字。国内は「規」、海外は「変」が選ばれた。共産党の規律重視の姿勢や、米国大統領選でのトランプ氏当選などを反映した結果となった。同時に今年の言葉に選ばれた「小目標」や「洪荒之力」。一体どんな意味なのか? 流行語トップ3から中国の世相を探った。

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  • 1億元が「小目標」…大富豪の一言が流行語に
  • 天然キャラで五輪の人気者に…「洪荒之力」って何だ?
  • 「吃瓜群衆」…真相のわからない一般人を皮肉る

「まずは1億元が小目標」…大富豪の一言に唖然

今年の中国の流行語1位と言えるのは「小目標」。
発言の主は“中国の不動産王”でアジア一の大富豪とされる王健林氏です。
大連万達集団(大連ワンダグループ)代表。
中国でショッピングモール168、高級ホテル93、映画館228、などを経営。
米国ではホテル建設を始め、映画館やフィルム制作会社を傘下に。
映画業界にも積極的に進出しています。

過激な発言でも有名です。
上海のディズニーランド開業に
「ディズニーは中国に来るべきではない」と“口激”。
トランプ次期米大統領には
「もし中国の対米投資が規制されたら、米国の2万人が職を失うだろう」と警告しました。

そんな王氏がテレビのインタビューに答え、中国の若者にメッセージを送りました。

「金持ちになりたいと考えるのは正しい」
「まず達成できる『小目標』を定めること、例えば1億元(約17億円、1元=約16.9円)稼ぐことだ」

庶民が一生かかっても稼げない1億元を小目標と言い放ち、ネットは騒然。
この「小目標」は一気に流行語となったのです。

「私の小目標。今日の晩御飯はマントウに野菜じゃなく、肉を挟もう」
「月1万元の収入で上海に100平方㍍の家を買いたい。小目標はまず100年生きることだ」
「20年生きて2億しか稼いでいない。一つは失意、一つは追憶」(億・意・憶は同じ発音)

このように「小目標」はジョークとして使われるのが一般的です。
中国の超富裕層と一般庶民。
超えられない格差を目の当たりにし、もう笑うしかない。
……そんな庶民のぼやきが聞こえてきそうです。

天然キャラで大人気に…傳園慧選手の「洪荒の力」とは?

リオデジャネイロ五輪100メートル背泳ぎ銅メダルの傳園慧選手(20)。
茶目っ気のある受け答えで一躍人気を集めました。
決勝直後のインタビューではこんな発言も。
 傳選手「メダルは獲れなかったけど…」
 記者「3位ですよ」
 傳選手「えっ、そうだったの!」
中でも流行語になったのはこの一言。
「洪荒之力(全ての力)を出し切りました!」

表情豊かに心のままに言葉を口にする傳選手。
洪荒之力とは「太古の力」。
洪荒(混沌とした未開の状態)を変えるパワーを意味します。
中国の人気ドラマで使われ、ネットを中心に広まった言葉だといいます。

「中国共産党、中国人民、祖国のおかげです」
メダルを取るとお決まりの発言を繰り返すことが多かった中国のアスリート達。
これに対し、メダル獲得に固執せず、力を出し切ったことを素直に喜んだ傳選手。
同年代の「90後」(90年代生まれ)を中心に幅広い共感を得ました。

一方、世界中から注目を浴び、人気者になったことに戸惑いも。
「自分らしく生きるべきだと思う」
「何だか分からないうちに有名人になってしまっただけ」
「私自身は以前の自分と何も変わっていません」
これからも自分らしく。
中国の若者の変化を感じさせる傳選手の「洪荒之力」。
若い世代を象徴し、共感を表している言葉といえそうです。

「吃瓜群衆」……真相のわからない一般人を皮肉る

「吃瓜群衆」とは直訳すると「ヒマワリの種を食べる人達」です。
ヒマワリの種は中国人がよく食べるおやつ。
暇つぶしの代名詞でもあります。

もとはネット用語でした。
掲示板などで議論している際、トンチンカンなコメントをする人=「瓜子」を指していました。
「吃瓜子(瓜子を食べている人)」、転じて「吃瓜群衆」になったとも。
当初、ネット上の議論に加わらず、野次馬的に見物する人を指していました。
それが進んで「真相を知らされない一般人」を意味するようにも。
中国では報道は共産党の宣伝扇動の手段と位置づけられます。
党批判、各種の抗議デモ、人権問題などには統制がかけられます。
そうした事情を皮肉って「私は“吃瓜群衆”だから」などと使うこともあるといいます。

他には
 套路:計略を練る人(ネットゲームから流行)
 網紅:ネットの人気者
 網約車:ネットの車予約システム
……などネット用語から派生したものや、
 電信詐欺:振り込め詐欺
 二孩:二人っ子政策
 供給側改革:サプライサイド改革
 不忘初心:初心忘れるべからず(党創立95年の演説で習近平総書記が強調)
……など社会・政治分野の用語も挙げられました。

中国社会の今を象徴する流行語。
さて、来年はどんな言葉が登場するのでしょうか?