金正男氏“暗殺”報道をめぐる中国の苦悩と今後

北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長の兄、金正男(キム・ジョンナム)氏が、マレーシアで暗殺された事件で、韓国の朝鮮日報は16日、政府当局者の話として、「口から泡を吹いており、典型的な毒殺」と判断したと伝えた。 中国政府はこの事件をどう受け止めているのか。フジテレビ外信部・鴨下 ひろみ東アジア担当部長が解説。

カテゴリ:ワールド

  • 韓国の朝鮮日報「口から泡を吹いており、典型的な毒殺」と報道
  • 中国政府は、金正男氏を1つの“政治的なカード”として監視
  • 北朝鮮の暴走を最小限に抑えたいが、思うように影響力を発揮できない

(中国の最新情報は?)

中国も連日、金正男氏殺害のニュースを伝えているが、中国の国営放送、中国中央テレビのニュースの中では、「金正男」という名前をあえて言わずに、「北朝鮮籍の男性」と伝えている。
北朝鮮の金正男氏が、中国にいるということは、中国にとっても、非常に敏感な問題の1つ。
なので、北朝鮮に対して、中国は、当然配慮しなければならないと同時に、今回の殺害が北朝鮮の犯行だとわかった時に、騒ぎが大きくなって、中国がこれに巻き込まれるかもしれないということを、非常に懸念しているのではないかと思われる。

(正男氏は、ずっと中国の保護下にいたという話があるが、本当なのか?)

いわゆる、護衛をがっちりつけて、いかにも保護しているというような形の保護ではなく、つかず離れず、背後から遠巻きに、何をしているのかを常に見ている、いわば、監視しているような形の保護だったとみられる。

金正男氏を1つの“政治的なカード”として監視

(監視の理由は?)

お父さんの金正日(キム・ジョンイル)総書記が生きている時は、「一種の人質」と言ったら言葉は悪いが、人質にもなり得る存在ということで、何か大事があったらいけないわけだし、何かあったらすぐ影響も及ぼせるような形で、実情を把握しておきたい。
そして、金正恩氏になってからは、口には出さないにしても、一種のけん制のような形で、「金正男氏という人が北京にいるんだ」ということを誇示しておきたい、そういう狙いがあった。
つまり、中国としては、金正男氏を使って、政権交代を自分がやろうというところまでは考えていなかったと思われるが、1つの政治的なカード、「いつか、もしかしたら何かの形で利用できるかもしれない」、そういうカードとして、金正男氏を自分の影響下に置いておきたいという思惑があったと考えられる。

北朝鮮の暴走を最小限に抑えたいが、思うように影響力を発揮できない

(今後、中国はどのような出方を見せるのか?)

金正男氏の殺害については、北朝鮮の犯行であるということが明らかにならない限りは静観し、弾道ミサイル発射などをめぐる、国連の制裁には同調する見通し。
中国は北朝鮮の崩壊には反対で、北朝鮮の暴走を最小限に抑えたいのが本音だが、張成沢(チャン・ソンテク)氏ら、中国とのパイプが粛清され、思うように影響力を発揮できていない。
北朝鮮には振り回され、国際社会からは中国が影響力を行使していないと批判される、そんなジレンマが続くとみられる。