三谷幸喜『真田丸』からの「気分転換」とは

大ヒットドラマ執筆後に選んだのは24年ぶりの舞台出演だった

カテゴリ:芸能スポーツ

  • 三谷幸喜さん作・演出の舞台『エノケソ一代記』上演中
  • 2年間かかりきりの『真田丸』から気分転換が必要だった
  • 24年ぶりの舞台出演はコメディアン・古川ロッパ役

その名も『エノケソ一代記』。
「エノケン」のミスではないかって?いえいえ「エノケソ」です。現在、世田谷パブリックシアターで上演中の三谷幸喜さん書下ろしの舞台は、昭和の喜劇王・榎本健一=エノケン、ではなくそのニセモノの「エノケソ」の物語。昭和初期に舞台や映画で活躍しジャズも歌った、日本最初のミュージカルスターともいえるエノケンには、ニセモノが全国に存在したらしいのです。そんなニセモノ「エノケソ」を演じるのは、三谷さんが「現代の天才のひとり」と絶賛する市川猿之助さん。歌って踊って舞台を駆け回ったエンターテイナーにこんなにぴったりなキャスティングはありません。エノケソの妻には吉田羊さん。今やドラマでひっぱりだこですが舞台もイイ! 歌もとても上手なんですね。2人の厳しくもあたたかな夫婦愛がこの作品の1つのテーマです。

エノケソは一座を組み、本物は決して行かないであろう田舎を回って興行を行っています。エノケンとして舞台に立つものの、主催者にばれると妻は「エノケソですが何か?」と開き直る。エノケソは本物のエノケンに心酔していて、とにかく「エノケン」になろうとする。同じ名前の愛人を持とうとしたり私生活まで真似しようとする。そしてある日、エノケンが病気で足を切ったという新聞記事を読んだエノケソは1つの決断をする…それはもう常軌を逸していいるとしか思えない決断を(と書くと何となく分かりますよね)。劇中のセリフを借りれば彼は「本物のニセモノ」になろうとするのです。
と書くと重い感じがしますが、そこは三谷さん。泣きながら笑える、重いけど軽い、深ーい作品に仕上がっています。芸人の業、舞台に立つものの業が描かれて、観終わってずしーんと効いてきます。

三谷さんは今年の大河ドラマ『真田丸』を担当、その執筆に2年間かかりきりだったそうです。だから、次の場所にいくために気分転換、起爆剤となるものが必要だったとコメントしています。それが24年ぶりの俳優としての舞台出演。榎本健一とは「エノケン・ロッパ」として人気を競ったコメディアン・古川ロッパ役です。猿之助さんは才能でエノケン(エノケソ?)になるけれど自分は外見から、とのことで確かにロッパそっくり(知らない方は画像検索してみてください)。
私が観たのはまだ初日から間もない頃でしたが、久々とはいえやっぱり舞台の三谷さんは生き生きしています。慣れてきたらアドリブがバンバン飛びそうで、もう1回は観たいなぁと思っています。

どうやら「気分転換」はばっちりの様子。年明けには更なる書下ろしの舞台も待っています。来年も三谷作品から目が離せませんね。

カバー写真=宅間國博
舞台写真=加藤孝