人工知能(AI)が企業の学生採用を支援。 AIはどうふるいにかけるのか?

企業の採用活動を人工知能で支援するサービスが始まった。

カテゴリ:テクノロジー

  • 三菱総研が、AIで企業の採用活動を支援するサービスを昨年10月から開始
  • AIが、人間の代わりに大量のエントリーシートを評価してくれる
  • サービスを活用した企業からの評価は高い

三菱総研がAIで企業の採用活動を支援するサービスを開始

三菱総合研究所は、昨年10月から、人工知能が企業の採用活動を支援する「エントリーシート優先度診断サービス」を開始した。この春の大学生向け採用活動で、このサービスを活用した企業は15社。人工知能による採用で、就職戦線は何が変わったのか。


三菱総研が、採用選考に特化する人工知能エンジンの開発を始めたのは2015年7月。このプロジェクトの主任研究員である山野さんは、開発を始めたきっかけについてこう語る。

「人工知能はこれまでビッグデータを活用して、主にマーケティング分析で活用していました。しかし社内で、データ解析の技術をほかの領域に展開できないかという話になり、人事(Human Resource)の領域、学生の採用選考に企業のニーズがあることがわかりました。」

大学生の就職活動では、人気企業ともなるとエントリーシート(以下ES)が1~2万件も届き、採用担当者がすべてを読み切れないという。そのため、これまでは学歴などである程度ふるい落としていたのだが、企業の人事部には、こうした選考過程が適正だったのか疑問が残っていた。

人工知能が人間の代わりに大量のESを評価


そこで求められたのが、人間の代わりに大量のESを評価してくれる人工知能の存在だ。
ESを人工知能が選考するのに先立って、人工知能にはこれまで採用してきた学生のESを学習させる。この学習によって人工知能は、これまでの採用の傾向を分析し、企業のニーズにマッチングしやすい学生を探すのだ。

具体的には、学習した過去のESデータや企業の事業データをもとに、学生時代にやってきたことと志望理由がつながるのか、企業が重視しているポイントと学生がマッチするかなどを人工知能が評価し、学生の優先順位を5段階で判断する。

人事部にとって人工知能を活用するメリットは、判断が客観的・統一的になり、可視化されることだ。また、採用の効率化・スピードアップにより、優秀な学生を他社に先駆けて囲い込める。

通常1万件ものESがくると、どんなに人海戦術で頑張っても、読み切るには1~2週間はかかるという。しかし、人工知能の処理スピードは桁が違う。「人工知能の過去のESデータの学習は、1万件あっても1日かかりません。また、人工知能によるESの評価は、1万件あっても50分程度です」(三菱総研・山野さん)。

また、費用対効果を見ても、三菱総研のサービスの場合、基本料金はES1000件までは70万円だ。このコストで優秀な学生を効率的に採用できるのであれば、安いものだと考える採用担当者は多い。

三菱総研の山野さん

今春の採用活動で活用した企業からも高評価


実際、この春の採用活動で人工知能を活用した企業からの評判は、すこぶるいい。

「やはりスピード感と公平性ですね。採用担当者の負担が軽減され、働き方改革にもつながります。より多くの学生を面談に呼べるようになったという声もあります」(山野さん)



三菱総研によると、ある企業では人工知能によるES選考通過者と人による選考通過者では、最終面接に残る率が、人工知能枠が2倍だったという。一方で、人工知能を活用して採用活動を行っていることを、公表している企業はほとんどない。



なぜなら「人工知能による採用活動は、学生にネガティブな印象を持たれる可能性があるので、企業側も慎重になる」からだ(山野さん)。ほとんどの企業は学生をふるい落すのではなく、学生の優先度を決めることに人工知能を活用している。しかし、就職活動中の学生からは、「人工知能に評価されるのは、あまりいい気はしない」という声も聞こえてくる。



それでは、今後人工知能による採用活動は増えてくるのか? 三菱総研では、企業研究を始めた学生に、人工知能がおすすめ企業を診断するサービスをこの秋から始める。学生の「やりたいことやスキル」と、企業側の「求める人材」をつなぐのだ。

また、採用面接にも人工知能の導入を検討している企業もある。「企業には面接も定量的に評価したいというニーズがあります。面接の場合は動画、画像認識によるデータの学習が必要ですが、課題としては、ディープラーニングするにはデータが足りないのが現状です」



人工知能は、辞退する可能性が高い学生をあぶりだしたり、採用後活躍する学生を予測することも可能だという。アメリカでは、転職エージェントが人工知能を活用した人事評価を行うことで、最適な転職先を探し出すサービスをすでに行っている。

日本でも社員の早期退職者予測や配属最適化に、人工知能が活用される日は近い。