「みんいく(睡眠教育)」で子どもの不登校が減った! 大阪・堺市の取り組みで劇的な効果が

睡眠負債シリーズVol.6

カテゴリ:国内

  • 堺市のある中学校では、睡眠教育によって不登校が減少
  • 堺市の小中学校に広まり、「みんいく」ハンドブックがつくられた
  • 「みんいく」は集中力や自尊心の高まりにも効果があった

睡眠教育によって不登校率が改善

中学校の不登校の生徒は、全国で平均2.8%いると言われている(文科省平成27年度調べ)。
 
しかし、いまから3年前、大阪・堺市立三原台中学校の不登校率は約5%と平均の2倍近くあり、教員たちは「何とかしたい」と悩んでいた。 この学校で生徒指導をしていた木田哲生さん(現:堺市教育委員会指導主事)は、ある日たまたま子どもの睡眠についての研究を目にした。 

この研究を行っていたのは、後に「みんいく」ハンドブックを監修することになる、熊本大学の三池輝久名誉教授。 

「ぴんとくるものがあった」という木田さんは、早速三池教授に会いに行き、不登校の改善につながればと、手作りの冊子で「みんいく」を開始した。当初教師やPTAからは、「睡眠が大切なのは知っているけど、学校でやる必要があるのか」といった懐疑的な声が聞かれたという。 

しかし、「みんいく」を行った1年間で不登校の生徒数は著しく減少、不登校率は32%改善した。 

「みんいく」ハンドブックに書かれていること

堺市の小学校や中学校の間では「みんいく」が徐々に広がり、今年からは市を挙げての取り組みに発展、とうとう「みんいく」ハンドブックが完成した。ハンドブックは、小学校低学年(1、2、3年)、小学校高学年(4、5、6年)、中学校の3冊に分かれている。

小学生低学年向けの「みんいく」ハンドブックは、なんで寝るの? という素朴な疑問から始まり、上手に寝るためのコツや、夜更かし習慣に対する注意などが記載されている。 

高学年になると、ゲームやスマホの睡眠への影響についても教え、中学校ではよい睡眠をとるための具体的な生活の仕方について指導が行われる。 

木田さんによると、「学校に来るようになる子どもは、スマホやゲームを制限できる子ども」で、子どもにスマホやゲームの睡眠への影響をきちんと理解させることが、不登校を減らすポイントになるといえる。また、「みんいく」では、睡眠と朝食時間の調査票を書かせていて、これには就寝と起床の時間が規則的になる効果があるということだ。

集中力や自尊心にも「みんいく」の効果が

「みんいく」の学習時間は、各学校の判断にゆだねられているが、学期ごとに1回、総合学習や保健体育の授業の中で行っている。企業向け睡眠研修を手掛け、このハンドブックの編集にも携わったニューロスペースの小林孝徳社長は、睡眠は本来学校教育で教えるべきだと言う。 

「脳や身体の発達のために、最も睡眠を必要とするのが10代です。寝ないで勉強するという生徒がよくいますが、脳が働かず記憶力が低下しますし、身体の成長にも影響が出ます。さらに大人になって、寝ないで仕事するとなると、うつ病や生活習慣病の原因にもなります。子どもたちに正しい睡眠を教えることは、これから生きていくための知恵を与えることです。」

「みんいく」では不登校率の低下だけでなく、思いがけない効果もあらわれた。 実施後のアンケートでは、「授業中、学習に集中していますか」との問いに、「はい」と答えた1年生は10ポイント以上上昇(2、3年生も5ポイント程度上昇)。 また、「自分に良いところがありますか」という自尊心についての質問にも、「ある」と答えた生徒が、各学年とも10ポイント以上増加した。 

さらに保健室に来室する生徒の数も減少した。 

睡眠への理解が、規則的な生活につながり、授業への集中力や自尊心が増す。 「みんいく」はいいことづくめだ。ニューロスペース小林さんは、こうい言う。
 
「睡眠の大切さは家族も理解してもらわないといけません。自分の子どもがきちんと睡眠をとっているのか、家族も知るべきです。スウェーデンでは、国として睡眠学習の制度があります。」 

子どものころから睡眠を正しく知ることは、国を挙げて取り組むべきものといえるだろう。

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