「ゆとり教育」以来の大改革!『アクティブラーニング』は浸透する?

米国の教育改革の旗手である米ミネルバ大学創始者ベン・ネルソン氏に『アクティブラーニング』をどう導入すべきか聞いた。

カテゴリ:ワールド

  • 2020年、日本の教育現場で導入されるアクティブラーニング
  • ネルソン氏は、導入は急がず段階的に行うべきと語る
  • ただし、日本は米国の教育格差まで追随すべきではない

大改革を前に教育現場からは困惑の声

2020年度からスタートする教育改革。その「キモ」となるのが、アクティブラーニング(=学ぶ側が主体的、能動的に取り組む学習方法)の導入だ。

これまで学校の授業は、教師から生徒へ一方向で行われていたが、2020年度からは全員参加型のディベートやディスカッション、プレゼンテーションが導入され、日本の教育制度はまさに「ゆとり教育」導入以来の大改革となる。

しかし、教育現場では「アクティブラーニングとは何なのか?」「どう教えればいいのか?」と困惑の声が上がっている。 

トップエリートに特異な教育、米ミネルバ大学

欧米はアクティブラーニングを早くから学校教育に導入してきた。中でも革新的な教育を行っているアメリカのミネルバ大学の創設者ベン・ネルソン氏の来日にあわせ取材する機会を得た。

ミネルバ大学は世界中からトップエリートを集めて、4年間で世界の7都市の寮を移動しながら、オンライン授業や各都市の行政・研究機関などとプロジェクト学習を行うという特異なカリキュラムを実践している。

創立2年目ながらすでに著名なグローバル企業が、学生たちの取り込みに動いているともいわれ、ハーバード大学を超えるのではないかと世界が注目している大学だ。

ネルソン氏は、ペンシルベニア大学ウォートン校に在校時、カリキュラムの改革を訴えて学校側に導入させ、さらにシリコンバレーでビジネスを成功させた後、再び教育界に戻ってミネルバ大学を創設したアメリカ教育改革の旗手だ。

ネルソン氏には、アクティブラーニングの経験のない日本の教師に、どう浸透させたらよいのか伺った。

ミネルバ大学の場合、すでにアクティブラーニングのスキルのある教師の中からリクルートしてくるのだが、それでも教師に対して4カ月の研修期間を設けており、授業を開始してからもしばらくの間は大学側がその様子をモニタリングするという。

さらに授業時間をプレゼン、ディスカッションなどに細分化し、それぞれのタイムラインを決めることで、教師の負担を軽減している。

導入段階ではセミ形式を採用すべき

では70万人近くいる日本の教員に、アクティブラーニングを浸透させるにはどうすればいいのか?

ネルソン氏は、まず教育現場では導入を急がず、段階的に行うべきだと言う。
そもそもアクティブラーニングは、すべての生徒が主体となってフルに参加する形式と、一部の生徒が主体となるセミ形式がある。

生徒が主体的にフル参加する形式では、すべての生徒が授業中ずっとディスカッションやディベートに参加することになる。この場合ファシリテーターとしての教師が求められるスキルも高くなり、ネルソン氏は導入段階としては適さないとする。

一方セミ形式では、2人の生徒がディベートしている間、他の生徒は聞き手に回り、ディベート終了後に教師が他の生徒に意見を求めるので、教師と生徒双方にとって導入ステップとしては適していると言える。

日本は米国型教育を目指すべきではない

また、日本全国にいる70万人の教員にどう研修するかについて、ネルソン氏は、学区ごとに数人の優秀な教師を選んで行政機関などが研修し、その教師が各学区の他の教師に学んだスキルを伝えることが最も効率的だと勧める。

日本の教育改革の目指すのは、欧米型ともいえるが、ネルソン氏は日本がアメリカ型教育を目指すことには否定的だ。アメリカではいま、大学の授業料が高騰して、中流家庭でも子どもを大学に進学させるのが困難になっている。

その背景には、大学のランキング競争が激化することで、経営側が学生を呼び込むために、キャンパスを整備し(ネルソン氏は「ディズニーランドのようだ」という)、スポーツや研究施設に多額の資金を投入し、著名教授の引き抜きのために報酬を釣り上げるなどした結果、学業の本筋ではないところで経費が掛かり、それが学費の高騰につながっていることがあるという。
アメリカの教育界ではすでに、格差社会の波が押し寄せているのだ。

日本の教育はいま、親の所得格差が子どもの学力格差につながる「負の連鎖」が問題となっている。グローバル化やITの加速度的な発展で、アクティブラーニングの重要性は益々高まることになるが、教育格差までアメリカに追随するべきではないと、ネルソン氏は警鐘を鳴らしている。

日本人なら知っておきたい 2020教育改革のキモ』 
編著=フジテレビ「ホウドウキョク」 出版社=扶桑社
フジテレビのニュースチャンネル「ホウドウキョク」で現代の教育問題に切り込むトーク番組『教育のキモ』。専門家20人が各30分間、語りつくした内容が一冊に。日本の未来を担う教育の行く末を占う、親ならずとも必携の著!巻頭に作家・佐藤優氏の序言を収録。