大統領選より大事!?「連邦上院議員選」でTPPが見える

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  • TPP12か国合意は、2年前の中間選挙で野党共和党が議会上院の多数を奪取したから。
  • 大統領が望まなくても、議会は米の行方を左右する力を持つ。
  • TPPの行方を占うのは、誰が大統領になるかより、共和党が議会上院選で大勝できるかどうか。

TPP12か国合意の経緯

自民・公明の与党はTPP承認案件の国会通過を急いでいる。11月8日(火)のアメリカ大統領選挙の投票前に批准を確実にし、アメリカの背中を押したいのだという。

しかし、アメリカでのTPPの行方が気になるなら、注目すべきは大統領選ではなくて、同じ日に行われる連邦上院議員選の方だ。

それは12か国がTPP合意に至った経緯を振り返ってみると分かりやすい。

2014年の中間選挙で共和党が議会上院の過半数を握り、TPA(大統領貿易促進権限法)が成立したから交渉参加各国が本気になったのだ。

それ以前の民主党多数の上院では、オバマ大統領が何と言おうとTPAを通そうなんていう機運は全くなかった。与党民主党の上院トップが断固反対だったからだ。議会勢力図が変わると政策も大きく変わるのだ。

必ずしも強力ではない米大統領

アメリカの大統領は日本の首相に比べてずっと強力だと思われがちだが、必ずしもそうではない。

議院内閣制では議会による指名を受けた首相はほぼ自動的に議会多数の支援と協力を得られるが、アメリカの大統領は事情が全く異なる。

ついこの前、9月28日の事例だが、9.11同時テロの犠牲者遺族がサウジアラビア政府を提訴することを可能にする法案について、上下両院が圧倒的多数の賛成をもってオバマ大統領の拒否権を覆した。

両院とも野党共和党が多数だが、上院は97対1、下院は348対77と民主党議員の相当数も大統領に反旗を翻した。党議拘束がない上下両院議員は、自身の信念と再選に向けた損得勘定、そして同僚議員との票の貸し借りを勘案して行動する。

共和・民主のキー・パーソン

こうした議員たちを取りまとめてTPA成立にこぎつけたキー・パーソンは、ミッチ・マコーネル上院院内総務、ポール・ライアン下院議長、そしてオリン・ハッチ上院財務委員長の共和党トリオだ。そのライアン議長は11月に再選が確実視されているし、下院の共和党多数もまあ安泰だ。

マコーネル氏とハッチ氏は今回は改選の対象ではないので、要は共和党が上院の多数を維持しさえすれば、自由貿易推進派が議会中枢に居続けることになる。が、その上院の多数をめぐる戦いは相当きわどい勝負になりそうなのだ。

もしも民主党が上院で多数を奪い返した場合、NY州選出のチャールズ・シューマー上院議員が多数党院内総務に就任する見通しだ。

そのシューマー氏はTPPのように民主党内が割れる案件をわざわざ進めようとはしないと目されている。新大統領は否定的、新議会上院も動きそうにない。TPPの先行きは真っ暗だ。

「共和党トリオ」を動かせる?

となればかすかな光明をレイムダック・セッション(選挙終了から新議会が招集されるまでの2ヶ月足らずの会期)に見出すしかない。

しかし、TPPを争点にしない方が選挙対策としてはお得だからとはいえ、自由貿易派の共和党トリオですらTPPに後ろ向きな発言に終始した。その舌の根の乾かぬ内に「選挙も終わったことだしTPPを・・」と豹変できるのだろうか。

製薬業界のTPP合意内容への不満も強い。上下両院で共和党が大勝利する(それは非現実的だ)なら格別、オバマ大統領が必死の運動をしない限り、共和党トリオを動かすのは極めて難しいように思う。