議員が増えて国民には30億円の“新規負担”  消費税も上がるのに国会議員は「身を切る改革」をしないのか

カテゴリ:国内

  • 参院議員の「給与削減案」が“立ち往生”
  • 消費税増税…あの時の“国民との約束”は?
  • 急浮上「自主返納案」は解決策となるか

消費増税は目前…でも議員の「身を切る改革」はなし? 

消費税率が10%に引き上げられる予定の10月まで、5カ月を切った。
 
教育や子育て、社会保障の充実が目的とはいえ、国民の負担が増えることには違いない。しかし、増税が迫る一方で、税金を政治活動に充てている国会議員の「身を切る改革」は遅々として進んでいない。むしろこのままでは、30億円を超える経費の増加という「身を切る改革」から逆行する動きのみが実施されようとしているのだ。
 
そうした中で、議員の給料をめぐってすれ違う与野党の主張。

「この国会のうちに責任をもって結論を出す必要がある」(自民党・岡田参院幹事長代行)
「国民の納得が得られるとはとても思えない」(立憲民主党・蓮舫参院幹事長)

国会で今、いったい何が起きているのだろうか。

自民党・岡田参院幹事長代行 立憲民主党・蓮舫参院幹事長

参院議員の給与めぐり“異例の再協議”

1月から始まった通常国会で、2019年度予算や幼児教育・保育を無償化する法律などが次々と成立する中、いまだ出口が見えないどころか、審議にすら入れていないのが、参院議員の歳費に関する法案だ。
 
「歳費」とは議員の給与にあたるもの。与党は、この歳費について、参院議員1人あたり月額7万7000円減らす法案を2月に国会提出した。
 
与党側は、当初、ゴールデンウィーク前に法案を参院で可決する方針で、4月22日からの審議入りを決めた。しかし、野党側が激しく反発したため、当日になって審議入りを中止。ゴールデンウィーク後に、改めて与野党で法案の扱いを含めた協議を行うという異例の展開となっている。

新たな国民負担「30億円」をどう補うか… 

与党が歳費の削減に取り組む姿勢を示している理由は、今年夏の参院選で議員の定数が3増え、3年後の参院選と合わせると定数が6増えることが決まっているからだ。
 
参院事務局の試算によると、定数が6増えることで、
議員事務所の新設などで約3億8000万円、
議員の歳費など(7500万円×6人×6年)で約27億円、
あわせて約30億8000万円もの新たな経費が必要になる。
 
そこで与党としては、議員歳費の削減を実現することで、定数増について国民の理解を得たい考えだ。

一方の野党。議員給与を削減するという法案に反対するのは、国民にマイナスの印象を与えるように思えるが、立憲民主党を中心に強気な姿勢を貫いている。その理由は、そもそも定数6増が「1票の格差」を是正すると同時に、選挙区が「合区」された地域の自民党議員を救済する目的のものだったからだ。
 
「自己都合で姑息(こそく)なやり方だ」(立憲民主党・白眞勲議員)
「定数を党利党略で増やした分をごまかすためのやり方」(共産党・小池書記局長)

立憲民主党・白眞勲議員 共産党・小池書記局長

野党は、定数増を改めて批判した上で、法案で歳費の削減期間が3年に限定されていることの問題を指摘するなど反発していて、与党は審議入りに踏み切れない状況だ。

消費税は10月に増税 “国民との約束”は? 

この問題を考えるうえで重要なことは、10月からの消費税率アップだ。
 
思い返せば、2012年の党首討論で、当時の民主党政権の野田首相の「消費税の増税で国民に負担をお願いする以上、議員定数の削減の道筋を付けないといけない」との提案に、当時野党自民党のトップだった安倍首相も同意。公明党を加えた3党合意を経て、消費税率が引き上げられた経緯がある。

野田首相(当時)と自民党・安倍総裁の党首討論(2012年11月)

消費税の増税のみが実施され、議員定数の方は削減どころか増加が行われるようでは、国民との“約束違反”と言われても仕方ない状況だ。
 
こうした背景があるにもかかわらず、定数を増やす法案を提出し成立させた与党は当然批判を受ける立場だが、野党も、定数増が既に決められている以上は、何の措置も講じず歳費削減に反対するだけでは、国民の理解はなかなか得られないだろう。

「自主返納案」が急浮上…「身を切る改革」は実現するか

出口が見えない状況を打開するため、5月10日、与党の呼びかけで、与野党の参院幹事長らが会談した。与党側は、改めて歳費削減法案の速やかな審議入りに応じるよう求めるとともに、参院で使用される資料のペーパーレス化や参院選の期間短縮などによるコスト削減を新たに提案した。

与野党の参院幹事長らの会談(5月10日)

これに対し、立憲民主党の蓮舫参院幹事長は会談後、「参議院選挙が近くなり、話し合いで決着に持っていきたいという提案なのかなと、うがった見方をしてしまう」と記者団に語り、ペーパーレス化などについては“行政改革と定数の話は別”との姿勢を強調した。

立憲民主党・蓮舫参院幹事長(5月10日)

一方、会談では、野党の一部からも新たな提案があった。国民民主党は、衆参の歳費が違うことは憲法違反の疑いがあることから、歳費を自主的に返納する案を示し、自民党も「考え得ることだ」として、検討に前向きな姿勢を示した。
 
また、立憲民主党内には「中途半端なことをやるなら、衆参ともに歳費削減を行うべきだ」との意見があるほか、日本維新の会が「すり替え、誤魔化しはすべきではない」(東徹参院国対委員長)として、独自に提出している歳費2割削減法案の審議を主張するなど、解決策自体はさまざまな案が浮上してきている。

日本維新の会・東徹参院国対委員長(中央)

与野党の幹事長らは、15日に再び会談し、引き続き、協議を続けることになったが、与党は、自主返納案を軸に、早期決着を図りたい考えだ。
 
果たして消費税を上げておいて議員数は増やし、さらに「身も切らない国会議員」から、「身を切る国会議員」に脱皮できるか。税金の負担と使い道にかかわる問題だけに、議論の行方には、国民1人1人が厳しい目を向ける必要があるだろう。

(フジテレビ政治部 羽山寛)
 

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