乳がん治療は抗がん剤がベストとは限らない?「サブタイプ」で変わる治療法

小林麻央さん、最近ではだいたひかるさんと、今年は乳がんに関連するニュースを目にすることが多い年でした。 「がん治療と言えば手術と薬物治療」「薬物治療と言えば抗がん剤」と、つい思いがちですよね。 実は乳がんの場合、抗がん剤以外にも、その「サブタイプ」によって、副作用が少なく効果の高い薬物治療が適用出来ます!

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  • 乳がんは3つの指標によって、5つの「サブタイプ」に分類
  • 「サブタイプ」によって、副作用が少なく効果の高い薬物治療が可能!
  • ただし、治療期間は長期に

乳がんの3つの薬物治療法

乳がんの手術後、多少でも転移による再発の可能性が考えられる場合には、薬物療法を行います。

がんの薬物治療というと、すぐに抗がん剤を連想しますが、乳がんの場合は抗がん剤以外にも、ホルモン療法薬、分子標的薬という治療薬があるのです。

ホルモン療法は、がんの増殖を促す女性ホルモンが働かないようにする治療法。

また分子標的薬は、がん細胞の増殖・転移等に関わる標的分子に作用します。

そしてどの治療法が適用となるかは、乳がんの「サブタイプ」で決まるのです。

治療方針を決定づける乳がんの「サブタイプ」

「サブタイプ」とは、手術前後に行われる病理検査で、がん細胞の表面にあるタンパク質を調べて分類したもの。このサブタイプ分類は、乳がんの治療方針を立てる上でとても重要です。
その分類には、 3つの指標が使われます。

1、ホルモン受容体の陽性・陰性
2、HER2タンパクの陽性・陰性
3、増殖のスピード

これらの組み合わせによって、大きく5つのサブタイプに分類できます。
サブタイプによって、ホルモン療法や抗がん剤療法、分子標的療法などの薬物療法が選択されます。

がんの“エサ”と取り込む“手”を封じる「ホルモン療法」

乳がん細胞の多くは女性ホルモンである「エストロゲン」を“エサ”にして増殖することがわかっています。がん細胞が“エサ”である「エストロゲン」を取り込むための「手」をホルモン受容体といいます。

ホルモン受容体とホルモンは、鍵穴と鍵のような関係で、鍵にあたるエストロゲンが受容体にくっつくと、乳がん細胞が分裂・増殖することがわかっています。

そこで、“エサ”とそれを取り込む“手”を封じ込めようというのが、ホルモン療法です。

方法としては、卵巣からのエストロゲン分泌そのものを抑えるやり方と、「鍵穴」であるエストロゲン受容体に先回りして「鍵」であるエストロゲンがくっつけないよう「鍵穴」をブロックしてしまうやり方があります。

HER2タンパク陽性だと増殖・転移スピード早い

10~20%の乳がん患者さんのがん細胞では正常細胞に比べ「HER2」というタンパクが過剰発現、つまり陽性であることがわかっています。
「HER2タンパク」は、がん細胞に「増殖しろ」という指令を出します。つまり、増殖スピード・悪性度が高く、転移や再発を起こしやすくなります。

HER2たんぱく陽性ガンには「分子標的薬」

分子標的治療薬は、HER2タンパクだけを狙い撃ちします。

代表的な分子標的薬はトラスツズマブ(商品名:ハーセプチン)で、HER2タンパクに結合することで増殖を抑えます。

これまで、HER2陽性乳がんは予後不良でしたが、現在は分子標的薬の使用で、予後は改善が得られています。

3番目の指標である増殖のスピードは、Ki-6という増殖能を表す値で示されます。Ki-6の値が高いと、乳癌の増殖スピードが速くなり、悪性度も高くなります。

「サブタイプ」によって薬物治療法が変わる

以上、3つの指標の陽性・陰性等によって、上記の一覧に従い、治療法が選択されるのです。

ルミナールA型は、乳がん全体の60~70%を占める最も多いタイプです。副作用が最も少ないホルモン療法薬を中心とした治療を行うので、過剰な治療を回避することができます。

HER2型に適用の分子標的薬も、発熱や悪寒、頭痛等の副作用が見られることがありますが、脱毛、骨髄抑制等はほとんど見られません。

一方、乳がんの12~15%であるトリプルネガティブ型は、ホルモン療法も、分子標的治療薬も効果がありません。効果が期待できるのは、「抗がん剤」のみです。

副作用は少なく、効果は高い

では、抗がん剤以外の薬物療法の効果はどうなんでしょうか?

「ホルモン療法薬は、抗がん剤より治療効果が弱い」という誤解が一部にあるようです。

しかし実際は、ホルモン受容体陽性の乳がんなら、一般に抗がん剤よりホルモン療法のほうが効果的だとされています。

またHER2たんぱく陽性の乳がんに、分子標的薬トラスツズマブを抗がん剤と併用することで、死亡リスクが3割以上低減することが明らかになっています。

治療期間は「ホルモン療法」では10年に及ぶことも

ホルモン療法の継続期間は少なくとも5年。10年程度継続する場合もあります。

また、分子標的薬は通常、3週間に1回、1年間投与します。いずれも長期間の治療になります。

治療にかかる費用ですが、例えばトラスツズマブは、1回当たりの費用が約11.5万円です。

ただし、保険適用もあり、高額療養費制度もありますから、患者さんの負担はそこまで高いものにはなりません。