ハフポストはジャーナリズムなの?エンタテインメントなの? NY本社を直撃!

特集「日本のメディアが米メディアから学ぶこと」第5回

カテゴリ:ビジネス

  • ソファも昼寝部屋も「良い仕事」のため!
  • “テレビ型”は費用対効果が悪いので撤退した
  • 成功の秘訣は「課題分析」と「スピード感」

医療関連メディア「WELQ」で記事の信憑性や制作体制が問題視されたことをきっかけに、ネットメディアのあり方が大きな議論となっている。『ホウドウキョク』では秋のリニューアルを前にアメリカで様々なメディアの現状を見てきた。その内容は、今の日本メディアが学ぶべき点も多い。それを全5回でリポートする。5回目の最終回はニュースサイト「ハフィントンポスト」だ。

自慢は昼寝部屋

真っ白なカベに幅広の階段、あちこちにモダンなソファ。大都会ニューヨークのビル外観からは想像もつかないほど、ハフィントンポストのオフィスはオシャレだった。

広い洋館に足を踏み入れたかのような雰囲気に何度も驚きの声をあげていると、案内役のニコラス・グラハムさん(現在は退職)が「クリエイティブな発想はクリエイティブな場所で生まれる」と胸を張った。

ニコラスさんの一番の自慢は「昼寝部屋」。入り口には予約表がぶら下げられ、空いていれば自由に利用できる仕組みになっている。

当初は周囲の目を気にして使う人が少なかったそうだが、今は毎日利用者がいるそうだ。同行していたアメリカ人スタッフに「アメリカ人でもやっぱり周囲の目が気になるんだね」と素直に感想を話してみたら「当たり前でしょ!」と怒られた。

創設者のアリアナ・ハフィントンは「睡眠の重要性」を様々な機会で訴えていて、日常生活で睡眠が果たす役割などを記した本も出版している。

「十分な睡眠によって生産性や幸福が増す。残念ながら、睡眠不足が男らしさの象徴になっている」という講演での彼女の言葉はとても共感できるが、仕事中の昼寝まで奨励するというのはさすがとしか言いようがない。

「インターネットテレビ局」やめました

そんな素敵なオフィスの一角に収録スタジオがある。テレビ局でも十分通用する立派な設備。ただし、電気は消えて真っ暗だった。

2012年8月からスタジオを使い、「ハフポストライブ」として1日8時間の生配信をしていたのだが、今年でそれを終了。ライブ配信が必要な時はFacebook Liveを利用する形となり、現在は1週間に25回くらいの放送にとどまっている。

しかも、Facebook Liveでの配信の際は、わざわざお金をかけていないよう見せるために、演出として自分の机でライブを行なうことも多いという。なので、なおさらスタジオが使われない。

1日8時間の“テレビ型”のライブ配信をやめたことについて、動画担当だったニコラスさんは「費用対効果の悪さ」を一番の理由に挙げていた。

「朝と昼にライブ配信を見る一般の人は実に少ない。しかし、技術の費用はかなりの額がかかり続ける。生配信した番組はアーカイブにしていたが、それを見る人も残念ながら多くはなかった」

ハフィントンポストでは「決まった時間に長時間」という形からは撤退したが、ライブ配信そのものには重点を置いている。

ニコラスさんによると、リアルタイムに質問したりする“参加感”はライブでしか味わえないと言い、アーカイブ番組も「カナダ発の健康料理」など実生活に役立つものは数日経ってもかなり視聴されたそうだ。

目指すのはジャーナリズム?

Facebook Liveを始めたことなどからファンは確実に増え続けているが、それが逆に課題になっているという。

「今はメディアとしてFacebookに頼りすぎている。確かにフォロワーは増えたが、アルゴリズムがいつ変わるかわからない。Facebookだけにビジネスを頼るのは非常に危険だ。ハフィントンポストのサイトに客を呼び込むように努力しないといけない」

多くの客を呼び込むために、ハフィントンポストは政治やビジネスだけでなく、生活スタイルやお笑いなど幅広い分野を扱っている。

そこで、ニコラスさんに聞いてみた。「ハフィントンポストが目指しているのはジャーナリズムですか?それとも、エンタテインメントですか?」

ニコラスさんはひときわ大きな笑い声をあげて答えた。

「いい質問だね。実はまだわからない。インターネットでベストのネタというのは誰にもわかっていないんだ。ただ言えるのは、私たちが目指しているのは『情報を与えること』と『楽しむこと』。この基準でコンテンツを作り続けるよ」

デジタル時代の先駆者となってきたハフィントンポスト。“インターネットテレビ局”に参入したのも早ければ、撤退を決めたのも早かった。

常に新しいことを考え、失敗を素直に認めて次に進む勇気とスピード感。これが多くの人に支持されているのだろう。

『ホウドウキョク』も今秋の大リニューアルでスタジオでのライブ番組の時間を効率化し、Facebook Liveなどの活用を増やした。

“インターネットテレビ局”にとどまることなく、「総合ニュースメディア」として、ますます新しいことに挑戦していくつもりだ。

行った場所:ハフィントンポスト本社(ニューヨーク)
答えてくれた人:Nicholas Graham氏(インターナショナル動画担当<当時>)