最大のライバルはFacebook? 動画の王者『YouTube』に聞いてみた

特集「日本のメディアが米メディアから学ぶこと」第4回

カテゴリ:ビジネス

  • 「ニュース」と「スポーツ」の動画に力を注いでいる
  • Facebookの動画は成長がすごい
  • YouTubeにとって、テレビもライバルではない

医療関連メディア「WELQ」で記事の信憑性や制作体制が問題視されたことをきっかけに、ネットメディアのあり方が大きな議論となっている。『ホウドウキョク』では秋のリニューアルを前にアメリカで様々なメディアの現状を見てきた。その内容は、今の日本メディアが学ぶべき点も多い。それを全5回でリポートする。第4回は動画の巨大プラットフォーム「YouTube」について。

市場も敷地も大きい!

サンフランシスコの照りつけるような太陽の中を市内から車で20分。サンブルーノにある小高い丘の広大な敷地にYouTubeの建物はあった。

5年前、従業員は500人ほどだったが、今はこの敷地にビルが3つ建ち、2000人が働いているそうだ。動画市場の発展を象徴するように、世界では3000人の社員を抱えるまでに成長している。

ちょうど昼時だったので、外でランチを食べる人の姿もちらほら見られる。カラッとしているので日陰は気持ちいいが、オシャレなゆりかご型のベンチは直射日光が当たるため、誰も使っていなかった。

出迎えてくれたのは、ティモシー・カッツさん。YouTubeでニュースのパートナーシップ戦略を担当している。別の会社でスポーツチャンネルを担当したという経歴の持ち主だ。

「これまでYouTubeはビデオゲーム、美容、音楽などの動画が中心だった。ただ、多くのユーザーに満足してもらうためには常に新鮮なコンテンツが必要だと思っている。それが『ニュース』と『スポーツ』で、今はそこに力を入れているんだ」

最大のライバルはFacebook?

しかし、YouTubeほどの巨大プラットフォームも安泰ではない。いま動画プラットフォームとして急速に存在感を示しているのがFacebookだ。

米調査会社によると、Facebookでの1日の動画視聴は2014年に10億回だったのが、2015年には80億回に跳ね上がっている。1年で8倍という驚異的な伸び方だ。

そこで、ティモシーさんにストレートに質問をぶつけてみた。

「いま最大のライバルはFacebookですか?」

ちょっとムッとされるかなとも思ったが、ニヤリと笑って答えた。

「その答えは、イエス&ノーだな」

確かにFacebookは動画視聴数を伸ばし続けているので、その意味では『イエス』だが、YouTubeとはユーザーの使われ方が全然違うのだという。

彼がFacebook動画の特徴として挙げたのは『音声なし』『短尺』『たまたまタイムラインに現れる』という3つだ。

確かに、自分自身の行動で考えてみると、Facebookのタイムラインで動画を見つけても音声をオンにして見ることはあまりない。長尺コンテンツを最後まで見ないことも多いし、そもそも「動画を見よう」という動機でFacebookを開くことは皆無だ。

「YouTubeは動画を見たい人がやってくるプラットフォームだから、3分以上でも最後まで見てくれる人が多い。もちろん音を出してね。確かに『動画の鮮度』ではFacebookに劣っていることが多いし、小さなパイを分け合っているのなら脅威かもしれない。だけど、動画はまだまだ成長する市場で、Facebookは一緒に動画市場を拡大してくれる存在だと思っているよ」

Facebookを褒めすぎたと思ったのか、「一度上げた動画が3か月経っても再生されるのはYouTubeだけだよ」と自らの特性を強調するのも忘れなかった。

YouTubeはテレビの敵?

それではライバルはいないのか?失礼を覚悟で、もうひとつストレートに聞いてみた。

「YouTubeはテレビの視聴者を奪う存在ですか?」

様々な尺の動画コンテンツが日々大量に公開されるYouTube。ブルームバーグのように24時間ストリーミングを行なっているところも複数あり、もはやネット上のテレビのような存在とも言える。

「確かにアメリカではテレビの視聴者は減っている。だけど、それはYouTubeのせいじゃないよ。単にケーブルに加入しなくなっているだけだね」

その「ケーブルに加入しなくなった理由」がYouTubeなのでは?などと考えているうちにティモシーさんは話をどんどん続けた。

「YouTubeの動画を見たのをきっかけとしてテレビを見ることだって多くなっている。例えばYouTubeでスポーツを少し見た人は、やはりテレビで見たくなる。ニュースも同じ。YouTubeでトランプ候補のクレイジーぶりを見た人はテレビのニュースチャンネルも見たくなるんだ。だから、YouTubeもテレビもどちらも強くなっていく」

ただ、テレビにもたらしている変化も認めた。

「みんな個々に好きなコンテンツを見たいという趣向にはなってきているね」

ライブ配信では収益化できていない

ハフィントンポストは1日8時間のニュース生配信を今年から中止したが、YouTubeでは長時間のライブ配信を続けているメディアや個人は多い。これで収益化は本当にうまくいくのだろうか?その答えは「NO」だった。

「正直言って、ライブ配信では収益化できていない。ライブをやることによって人を集め、アーカイブの動画広告で稼ぐんだ」

ニュースでもスポーツでも、新しい動画を上げれば過去の関連動画を次々に見てもらうことができる。その視聴数が増えれば広告による収益化が可能になる。そのため、飛行機墜落など注目されるニュースを少しでも早く上げることは大事だが、収益化という観点からは「必ずしもすべてライブ配信である必要はない」と断言した。

皆さんあってのYouTube

ティモシーさんが語っていたことをまとめると、「Facebookは動画市場を一緒に開拓する存在」で、「テレビは相乗効果をもたらす存在」。そして、「無理にライブ配信で戦わない」という。

優しい性格のティモシーさんと話していると特にYouTubeが「敵を作らない戦略」をとっているように感じられる。

「これからも自分たちで取材してオリジナルコンテンツを作ることはしません。ホウドウキョクのようなメディアなどと連携して良いコンテンツを供給していきます。私たちはあくまでもプラットフォームですから」

私たちはプラットフォームだから――。後日、スーザン・ウォジスキCEOの講演でも自分たちの強さとして同じことを語っていた。

「YouTubeはファンの共同体に支えられています。それが他のプラットフォームとは違います。私たちは世界で最もコンテンツの集まるプラットフォームです」

ユーチューバ―、ファン、そしてメディア。それぞれを大事にして大量かつ良質なコンテンツを集める。YouTubeの勢いはしばらく続きそうだ。

行った場所:YouTube本社(サンブルノ)
答えてくれた人:Timothy Katz氏(ニュース・パートナーシップ戦略担当)