ニュースがつまらない。それは伝え方が悪いから。

【パックンと探る】日本人のコミュニケーションの現状や改善するための方法

カテゴリ:話題

  • 伝え方を工夫すればニュースももっと面白くなる
  • アメリカの大学では専門家による論文の授業がある
  • 文章は膨らませて、面白い部分を取捨選択する
鈴木款 Reporter Jun 28, 2017

「日本人のコミュニケーション」はどうすれば向上するのか?日本社会や教育の観点から、アメリカ出身のお笑いタレント・パックンに話を聞いた。

ニュースも描写で引き付けてもいい

――パックンの著書の中で、「小学校で先生が『ロッカーから定規を持ってくる時にしゃべる必要ある?ないでしょ!』と注意しているのを見て驚いた」というエピソードが出てきます。
確かに私自身もそういう教育を受けてきたので「しゃべらないのが当たり前」と思っていましたが、「20秒以内に定規を持ってきなさいと時間を指定すればいいだけで、しゃべるのを止めるのはおかしい」というのには非常に納得しました。これがしゃべる機会を奪っているなんて考えたこともありませんでした。
そういった、「日本人が気づいていない、おかしなこと」は、もっとたくさんありますか?


テレビを見ていて思うのは、多くのニュースで見出しを読んだ後、もう一回同じことを言うじゃないですか。アナウンサーが「和歌山県で殺人事件がありました」と言った後、VTRが始まっても「午前0時、和歌山県で殺人事件がありました」って。見出しじゃん!変えろよ!って思いますね。さっき言ったよ!って。

ニュースも描写から入ってもいいと思うんですよ。「静まり返った和歌山の郊外。金管バンド部の朝練があるから早めに家を出た4年生のサチコさん…」それだけでぐっと引き付けられるよね。

ニュースは引き付けちゃダメみたいな固定観念もあると思うんですけど、ニュースももっと面白くできるんですよ。「なんでみんな時事ネタ、政治ネタに関心持っていないんだ」って嘆く大人はいっぱいいるんですけど、伝え方がつまんないからだと思うんです。

別にアメリカみたいに恐怖をあおる必要ないし、毎日がパニックみたいにしなくていい。でも、伝え方をちょっと工夫すれば、ニュースを見るのが、聞くのが楽しみになる。そう思うんです。

アメリカの台本はチームで練り上げて作る

――耳が痛い部分がありますね。「警察は捜査しています」などの定型文。警察が捜査しないわけないから必要ないっていつも言うんですけど、新人記者などはつい書いてしまって先輩に直されます。

アメリカの場合、オリジナリティが入っていないといけない。

例えはドラマ。日本は大体、作家1人がずっと締め切りに追われて頑張って書いていることが多い。まあ、それもかっこいいなと思うんですけど、アメリカのドラマはチーフライターがあらすじを書いて、もう1人ジョークの得意な人が入ってきてジョークを加える。

もう1人がキャラクターを目立たせるような工夫が上手い人が手を加えたり、トリックが得意な人が入ってきて、もっと、こういうキャッチーな展開にしたらどうかって言ったりする。結局、チームライターの下なんだけど、チームですごい強い人や人数が手を加えて練り上げて練り上げてできるものなんです。

それぞれのスタンスで、もっと面白みを足そうとする。やっぱり、そういう風にできた台本は世界に通じるものだと思うんです。

アメリカの台本がなぜ世界を制覇しているかというと、やはりクオリティーが高いんですよ。言語も、マーケティングも資金の規模の違いとかも色々ありますけど、アメリカのコミュニケーションの力を多くの作品から感じます。付加価値が大きいんです。

――アメリカの学校教育でも付加価値やオリジナリティが大事にされていますか?

アメリカでは「情報がまとまっています」では評価されなくて、「情報はまとまっている。で?」となってしまう。「新しい観点から展開や発想ないのか?」と先生から言われるんです。

日本の学校では、論文の書き方を専門家に教えてもらうことはありますか?

――あまりないですね。

アメリカでは大学に入って、まず出されたテーマについて書く、能力検定みたいなものがあるんです。そこで十分な能力がないと判断されると論文の授業が待っている。たぶん6割ぐらいの学生が通わされています。

僕は高校では賞を取るぐらいの文章力を持っている子だったんです。だけど、大学では論文の授業に通わされた。最初は「失礼だな」と思ったんですけど、周りの子の文章を見るとひっくり返るくらい上手なんですよ。

半年の間、毎週1つか2つ小論文を書く。各月ごとに小論文10ページとか20ページとか書いて、それをずっと書き直しさせられる。猛特訓です。すると、半年後の文章は最初のころに書いていた文章とは全然違うんですよ。

それは、しゃべる訓練、考える訓練にもなる。そうした訓練をやっているか、やっていないかで、コミュニケーション能力が全然違うと思います。

文章を膨らませて削る能力の大切さ

――日本は「蛇足」という言葉に象徴されるように、「無駄な付け加えはするな」という考えが根底にあるのかもしれません。アメリカにも「蛇足」に当たる言葉はありますか?

もちろんありますよ。面白いとこに絞りなさいって。論文の授業では、いらないところを削るという作業もさせられるんですよ。

「5ページの論文を書いてこい」と言われて書いていきました。すると、「よし、2ページにまとめろ」と。

ハーバードの大学生は文章を適当に膨らませる能力はすごいんです。だから、その「削る作業」が今も効いていると思っています。

例えば、1400字の文章を書くときに最初は2000字ぐらいで書いて、削って削って削って、勢いのある文にするんです。伝えたかったことを捨てることになってしまいますが、取捨選択がすごく大切なんです。

それに、いま捨てても、違うところで使えると信じている。昔は自分の文に対して親の気持ちみたいに「捨てられない」という執着がありましたが、それはなくなりました。捨てるのが逆に良いものができるという自信にもなっているんですよね。

――VTRを編集していて、総合演出から「3分で」と言われているのに、取材した思い入れが強くて6分ぐらい作っちゃうなんてことはテレビ局にいるとみんな経験があります。これを削る作業をするのは本当に悲しいですが、6分のVTRを3分にすると、本当に伝わりやすくて面白いものになるんですよね。

パックンマックンで「開運!なんでも鑑定団」(テレビ東京)をやっているんですけど、2時間、会場は爆笑の渦ですよ。それなのにオンエアでは二言ぐらいしかしゃべってないんです。「おい!編集者、来い!」ってちょっと思うけど、それは大事な作業ですよ。それで視聴率を取れて、番組が繁盛をして、長く続けられるんですから、編集者にはすごく感謝しています。