日本人が世界に通用するために、学ぶべきは英語よりもコミュニケーション。

「そうは言っても、英語力も鍛えたい」というのは、多くの日本人ビジネスパーソンが考えているところだ。

英語教育に関する著書なども多数あるアメリカ出身のお笑いタレント・パックンに話を聞いた。

 
 
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英語は同じものを指す複数の言い方がある

――外国人が日本語を勉強するのと、日本人が英語を勉強するのでは、どちらのほうが大変ですか?

それは英語です。ゼロから英語を勉強するとしたら難しすぎる。スペルもわけわかんないし。同じ音が同じスペルとは限らないじゃないですか。不規則動詞もいっぱいあるし、不規則な文法もいっぱいある。

“go home”って言う英語があるのに“go to the hospital”って言うでしょ。勉強する人には、かわいそうだなって思うんですよ。しかも、イギリスだったら「to the」が抜けて、“go hospital”になる。

他にも“down at the park”がアメリカ英語で、”down the park”がイギリス英語。例外だらけです。

使っている語彙は英語のほうが多いんですよね。なぜなら、「フランス語圏の英語」と「ギリシャの英語」、「ドイツの英語」、同じ意味の英語がいっぱいあるんですよ。

「beef・pork」と「cow・pig」。日本語だったら「牛肉・豚肉」と「牛・豚」ですよね。なんでわざわざ2つの言い方があるのか知っていますか?

「cow」や「pig」は、もともとイギリスにあったドイツ系の英語なんですよ。一方、「beef」と「pork」はフランス語系の英語なんです。

貴族はフランス語を話しているんですね。貴族が接する「豚」はもう調理されたあとです。庶民で英語を話している人が触れ合う「豚」は家畜です。だから言葉が違う。

同じものを指す複数の言い方があるが、全部覚えなきゃ、英語をマスターしたとは言えない。それはめんどくさいです。

日本人にとって英語は勉強しやすい言語

――なるほど。

ただ、日本人が英語を勉強するのは、ある意味、恵まれた環境ですよ。一生懸命勉強しなくても、覚えるから。例えば、この部屋で目に入るもので、英語で言えないものほとんどないんじゃないですか。

ホワイトボード、カップ、シュガー、ウォッチ…。全部知っているんですよ。義務教育を受けた日本人にとって、普通に日本の社会に暮らしている日本人にとって英語は勉強しやすいほうですよね。

この部屋で間違えるのはゴミ箱くらいかな。トラッシュカンだ。でも、なぜか日本人は「ダストボックス」って教わっている。

 
 

毎日英語を話せば上達する

――最近は随分と変わってきていますが、かつて日本の英語教育では、「“How are you?”と聞かれたら“I’m fine, thank you. And you?”と返す」と習いました。しかし、実際に外国人の方が使っているのを聞いたことはありません。「受験英語」には問題があると思いますか?

同じことを僕も思っています。受験英語自体は使えないものではないですよ。受験という基礎があってから、実践的な英語を学ぶと上達は早いです。

僕は日本の高等教育を変えたいんです。8月に都知事に直接提案しようと思っているんですけど、受験英語をとりあえず中学、もしくは高校に入るまでにして、一定の文法力や語彙力はある状態にしてからは、毎日訓練。

1日1時間、英語をしゃべっていれば100%うまくなるんですよ。実践の方法も、色んな形があると思います。曲を1曲覚えて歌う日もあっていいと思う。今日はスポーツについて話しますペアを組んで、よーいドンで話す日があってもいい。

言いたいけど、言い方がわからないことがあったら、明日までに調べるのを宿題にする。

明日のテーマは世界の料理です。そして、ご飯の話を1時間。家族の話。将来やりたいことの話。日本の未来の話。毎日やっていれば、どれだけうまくなるか。英語を話す怖さもなくなるし、英語をしゃべりたくなります。

 
 

英語もスポーツも一緒!

――受験英語で「完璧な英語」を求めすぎて、「自分が思ったことを英語で話すのが怖い」という経験を持つ日本人は少なくありませんね。

その通りです。僕はそれを一番直したいです。英語もそれだけ勉強したら、しゃべりたいって思うようになる。清水さんは昔、スポーツは何かやっていましたっけ?

――高校時代はハンドボール部でした。

今もハンドボールできますか?

――やろうと思えばちょっとはできますね。もう何年もやってないですけど。

謙遜しているからちょっとだけって言っているんですね。多分、普通の人よりうまいと思うんですよ。草ハンドボールがあったらやりたいぐらいだよね?80歳になったらできないと答えるかもしれないですけど、体が動く限りはできると言うと思うんですよ。

なぜ同じぐらいの年数で勉強した英語をできないって言う人がいるのか。そこを直したいですよね。6年も勉強しているんだったらできるものだと。

実践英語が足りないのはまったくの同感です。でも、やろうと思えば直せるものですよ。僕、日本の英語教育に対する考え方を変えたいです。スポーツだと思ってほしいですね。

 
清水俊宏
清水俊宏

世の中には「伝えたい」と思っている人がたくさんいて、「知りたい」と思っている人がたくさんいる。その間にいるメディアは何をすべきか。現場に足を運んで声を聴く。そして、自分の頭で考える。その内容が一人でも多くの人に届けられるなら、テレビでもネットでも構わない。メディアのあり方そのものも変えていきたい。
2002年フジテレビ入社。政治部で小泉首相番など担当。新報道2001ディレクター、選挙特番の総合演出(13年参院選、14年衆院選)、ニュースJAPANプロデューサーなどを経て、2016年から「ニュースコンテンツプロジェクトリーダー」。『ホウドウキョク』などニュースメディア戦略の構築を手掛けている。