福島第一原発380円の食堂で考える。「安全なのに売れない」は本当か?

「風評被害」を叫んでいるのは地元?

カテゴリ:国内

  • 福島第一原発の食堂は福島産の食材を多く使う
  • 風評被害は根強く残っている
  • 全量全袋の検査を見直す話も出ているが難しい

福島県産の食材を使用

福島第一原発の食堂。メニューはどれでも1食380円。温かい料理が安く食べられるとあって、働く人たちに人気となっている。

筆者が食べたのは、回鍋肉とかぼちゃのそぼろ煮。濃いめの味付けでご飯が進む。ごはんの大盛りも可能だ。

(代表撮影)

食堂では期間限定で「おとなのお子様ランチ」を出すなど、営業努力をしている姿も感じられる。この日は魚定食とカレーライスに人気が集中したようで、すぐに売り切れてしまった。

(代表撮影)

料理を作っている場所は、原発の立地する大熊町に建設された福島給食センター。原発事故から4年後の2015年4月20日から料理の提供を開始して、去年12月には累計100万食を超えた。

この福島給食センターを作った目的は3つだ。

ひとつは、温かい食事の提供によって福島第一の作業環境を改善すること。それから、給食センターの建設と運営に伴う雇用を創出すること。そして、もうひとつが「福島県産食材の使用・地域雇用による風評被害の払拭」だ。

この食材で提供される食材の多くは、福島県産のものを使っているという。

「風評被害」は福島県内こそ深刻?

原発事故から7年が経過し、帰還困難区域を除くほとんどの地域で避難指示が解除され、福島県の復興・再生に向けた動きは本格的に始まっている。

それでも、今もなお風評被害は根強い。修学旅行などの観光業は不振が続き、福島県産食材は全国平均価格との乖離が続いている。

福島・浜通りコシヒカリは価格が低い(出典:経済産業省HP)

福島のコメに関しては、放射性物質が少しでも検出されないか、全量全袋のスクリーニング検査をし、結果を公表している。そのため、風評被害のほとんどは、科学的根拠に基づかないものが多い。

政府は「放射線に関する正しい知識や福島県における食品中の放射性物質に関する検査結果等が十分に周知されていないことに主たる原因で、このことを国は真摯に反省する必要がある」として、全国に向けた情報発信に力を入れている。

全量全袋の検査が続く

ただ、被災地の飯舘村復興対策課専門員(所属:農研機構)の万福裕造さんは次のように語る。

「風評被害を叫んでいるのは、地元が根強いと感じています。消費していただける方にとって見れば、産地の記載や情報が記載されていれば、選択していただけます。もともと、福島のお米の全国的なシェア率は5%程度。現在、生産できない地域のお米はその中の数パーセントにすぎません」

それでは、風評被害はどうしたら払拭できるのか。やはり、地元での利用が一番だと考えている。

「全国民的な懸念払拭というのは、放射性物質に関係しているので極めて難しいですが、シェアから考えれば、十分にご理解頂いた消費者の方に買っていただければ、おそらく大丈夫と考えています。
風評被害の払拭のためには、まず地産地消からはじめ、『地元では食べています』『美味しいですよ』という基礎的なベースアップがなければ、消費地に送り込むだけでは難しいと感じています」

飯舘村復興対策課・万福裕造専門員

新米が出荷できない

福島の食材を食べようという意識は、福島県内でも強くなっている。

福島県教育委員会は先月、小中学校の給食に福島県産の食材が使用された割合を公表し、2017年度は35.6%となって、原発事故前の水準に回復したと発表した。

2010年度には36.1%あった割合が、原発事故の翌年の2012年度には18.3%と、ほぼ半減していたという。

去年4月1日に避難指示が解除されたばかりの富岡町のスーパーでも、惣菜コーナーなどで福島の食材を使ったものがいくつか目についた。

ただ、全国に広げていくためには「安全安心のイメージ」だけでは、なかなか難しいところもあると立命館大学の開沼博准教授は指摘する。

「福島県はコメを年間1000万袋、全量全袋を検査で測っている。東京ドームに入る5万人が、200回転する作業量です。普通は新米ができたら、すぐに出荷しないと他県に勝負に負けるにもかかわらず、東京ドーム200回転をフル操業でずっとやってきたわけです」

これまで、全量全袋検査をやってきて、2011年に作った厳しい基準値を越えるものは一袋も出ない状態が続いている。そのため、検査の見直しについても議論が出始めている。

「検査結果はゼロになるとわかっているのに、50億円かけて1000万袋を測り続ける必要があるんですか、むしろデメリットの方が大きくなっているんじゃないですかと、ここ半年くらいずっと話題となっています。もちろん、ちょっと待てよと異論もあります。検査を縮小すると言えばまたデータを隠しているんじゃないかと」

震災から7年。原発事故直後からの意識や、そこで作られた厳しい基準を、どう変え、もしくはどう維持していくのか。本当の復興に進むには、まだ道のりは長い。

福島ブランドが戻る日は…