受信料は不公平?公共放送をあらためて問う

ネット時代の受信料制度はどうあるべきか?議論が再燃している

カテゴリ:国内

  • ネット時代の受信料制度をどう見る?
  • そもそも公共放送とはどうあるべき?
  • 受信料の考え方とその徴収方法は?

NHKの存在意義はどこにあるのか?

このNHK受信料の題について、津田氏はかねてより「国民全員からの強制徴収としたうえで、料金を半額ぐらいにし、オンデマンド放送などを無料とする」のがよいのでないかとしている。そのうえで、専門家の意見をうかがってみよう。

永田さんはNHKにも長く在籍されていたそうですが、この問題をどう捉えていますか?
「戦後のNHKは国民の側に立って受信料で財源の心配をせずに続いてきたが、現在は放送だけでまかなえなくなってきている。今後は通信の世界にも足を踏み込んでいこうというのに、従来のように受信機を持っていたらすべて徴収するというのは無理があるだろう」

公共放送はいらないという人もいるが、国によって公共放送の位置づけや受信料の徴収の強制力の違いは?
「広告収入を財源として認めている国も多い。韓国などは、国営放送の受信料は電気料金に上乗せして徴収しているので未払い問題が起きない。NHKスタイルの雛形はよその国にはないだろう。NHKはある意味、潔癖で希有な放送局といえる」

地上波料金と衛星料金の2種類しか受信料にないのも問題なのではないか?
「利用スタイルによって変えるのはよい考えだと思う。地上波は見る見ないにかかわらず、受信機を持っていたら払う義務がある。そもそも受信料は、離島や山間まで放送を行き渡らせるためという理由もあったが、今は衛星があればどこでもまかなえてしまうし、電波をアンテナで受信しないことが当たり前になっているので、前提が変わってきてしまっている」

今後、ネットでも受信料を払うのは妥当か?
「公共放送というのは受信料で成り立っていて、国の税金ではなく受信料で放送をするという国民の財産のようなもの。それをやめてしまうのはデメリットが大きい。しかし全員がネットの恩恵に浴しているわけではないし、すべてネットでカバーできているわけではないので、今、舵を切るのは乱暴なのではないか」

僕は強制徴収でその代わりオンデマンドはタダにするという意見ですが……。
「今は払っている人と払っていない人の不公平感が顕著で大きい。表に出ているデータでは、例えば、秋田県では9割払っているが、沖縄県では半分以下程度。地域差があるのはおかしい。これをどうするのか議論する必要があるだろう。みんなが払って額を少なくするのは一つの落としどころかもしれない」

公共放送にふさわしいサービスとは?
「国民全体が最低限の知識を共有できないで、世の中で知っている人と知っていない人に分断されてしまうのは良くない。情報の供給システムは必要だ。国が提供する情報だけではなく、国から独立した公共報道機関があることは必要だろう。しかし、NHKはその役割を残念ながら果たしていないと思う」

NHKが組織として変わるべきポイントは?
「公共放送だから、多くの人が楽しめ、ためになり、情報を享受できるのが最低限必要。NHKニュースを見てもよくわからないなど、世の中の批判を真摯に受け止めて、みんなから支持されてこそのNHK。市民に向けての放送局に変わってほしい」

ネットと公共メディアの関係

続いて、上智大学文学部新聞学科教授 音 好宏氏に伺ってみた。

ネット時代の受信料制度についてどうお考えになりますか?
「NHK内部では早くからネット時代の対応について研究していた。ネットへの展開は当然の流れ。将来的にはNHKとしてはネットも空中波放送と同じものを放送したいという方針だろう。」

受信料で充実したコンテンツをネットで常時流すとなると、新聞業界や民放業界との関係は?
「民放業界は協力してもらえたらネットでの展開もよしとしているが、新聞は受信料を使ってニュースの方に出てこられるのは避けたいだろう。しかし、ユーザーが何を求めているかという議論が少ないのが問題」

受信料の徴収についてはどう考えるか?
「支払い義務化を100%とすると営業現場からすると大変。春に転勤や引越が多いので、対応は難しい。受信料は契約する人、契約しようとする人にお願いする制度。しかし、政府や国会に支払いについて保護されると、そちらの顔色を見るようになるので、複雑だ。ネットでも徴収するとなると、地上放送と衛星放送を一緒にして総合受信とし、ネットはプラスアルファとするか。それを短期間にできるかどうか、難しいだろう。受信料を数十円下げても豊かなサービスになるのかどうかが問題。私たちの皮膚感覚に合うかが重要だ」

公共メディアにふさわしいサービスとは?
「民間企業を邪魔しないサービスなのか、それとも違うのか? これでは視聴者が何を求めているのかが表に出てこない。私たちの方にもNHKをチェックする必要がある。NHKと民放の違うものがあって、選択肢がある方がいい。違うものがある方が豊かな国になるだろう。日本の公共放送に求められるものは日本で考えるべきで、よその国をお手本にすることではないだろう」


専門家お二人の意見をふまえて考えてみる。

①なぜNHKはネットやワンセグで受信料を取ろうとするのか?
取れるところから取らなくてはという事情もあるだろう。このような議論が起こることはかなり前から察知していて内部でも対応を考えていたようだ。

②ネットでも受信料は妥当なのか?
料金体系を変えた方がよいのではないか。オンデマンドでいつでもどこでも見られるならネットの方が便利。放送波より便利になるので、そうなると料金体系を変えた方がよい。

③「公共メディア」にふさわしいサービスは?
NHKと民放が同じ事をやる必要はない。NHKらしさが必要。

④受信料制度全体の見直しは必要か?
必要。方向性をどうするかが問題。もっと国民に呼びかけてほしい。カギとなるのはネットやアーカイブ。それらを国民の財産として受信料支払いを呼びかけるのがよいのではないか。


あしたのコンパス「きょうのPick Up1」(2016.9.28放送)より
津田大介 大島由香里