福島第一原発の真実? 廃炉の「準備」が終わり、ついに次のステージへ

東日本大震災7年。今年も原発を取材した。

カテゴリ:国内

  • 筆者は2年連続で福島第一原発の構内を取材
  • カイゼン活動や建屋の見た目など去年との違いもある
  • 廃炉の「準備」から「本格作業」へシフトしつつある

去年と変わったこと、変わらないこと

「人が1時間程度とどまれば確実に死に至る極めて高い線量」 
 
今年2月1日に福島第一原発2号機に関する放射線量が公表され、様々なメディアから出た表現だ。 
 
核燃料が入っていた圧力容器の真下で1時間あたり7~8シーベルトという高い値だったという。 

2号機格納容器内=2018年1月19日(出典:東京電力ホールディングス)

去年も同じような見出しがメディアをにぎわせた。 
 
「人間が数十秒で死ぬレベル」 
 
この時は、2号機の格納容器の内部に関する線量が1時間あたり530シーベルトと公表されたことを受けたものだった。 
 
その際、立命館大学の開沼博准教授は「格納容器内部へ行けば放射線量が高いのは当然で、横に行けば数秒で死ぬ。火力発電所の火の上に30秒いれば死ぬのと同じ」と、報道のされ方に疑問を呈していた。 
 
今回の「1時間で死ぬ」という表現は、「今後の溶融核燃料(デブリ)を取り出す作業には過酷な環境での遠隔操作が必要だ」と伝えるために、意味のある表現だろう。 
 
ただ、測定位置や数字こそ違うとは言え、一般の読者が文言から受ける印象に大きな違いはない。「伝えられている福島」と「実際の福島」に、乖離はないだろうか。 
 
筆者は去年に引き続いて、日本記者クラブの取材団に参加することができ、福島第一原発の構内の取材を許された。 
 
去年と変わったこと、変わらないこと。そこに重点を置きながら、構内を取材した。

専用バスで福島第一原発へ(代表撮影)

カイゼン活動実施中

防護服は不要(代表撮影)

構内に入る装備は、去年と変わらず、普段着にヘルメットとマスク。線量計を入れるためのポケットがついたメッシュのベストを配られるのも同じだ。原子炉建屋の中に立ち入らず、真横へ行くだけであれば、真っ白なタイベック防護服は必要ない。 

構内に立ち入るためのゲートは少し様変わりしていた。 
 
ひとつは、静脈認証が導入されたこと。入構前に中指の静脈を登録し、ゲートでそれをかざす。間違いを確実になくし、人間が本人確認する労力を減らすのが目的のようだ。 
 
そして、張り紙。「ポケモンGO禁止」という掲示は去年のままだが、それよりも目立っていたのが「カイゼン活動実施中」という張り紙だ。 
 
その中では、「目標・待ち時間15秒!ご協力を!!」と呼びかけていた。トヨタ式カイゼン活動を導入し、効率性の改善を目指しているという。 
 
作業者の安全確保が命題だった福島第一原発の廃炉作業が、生産性の向上へと転換しているようだった。 
 
他にも「マスク着用省力化運用中」と書かれた張り紙もあった。東京電力の担当者も「廃炉を進めていくためには、普通の現場にしなくちゃいけない」と強調していた。

目に見える建屋の変化

構内は去年と同様、ほとんどがアスファルトなどに覆われている。 
 
そのため、放射性物質が飛び散るリスクは大幅に減り、建屋から100メートルほどの位置でも、1時間あたり150マイクロシーベルト。事故直後と比べると、抑え込みはある程度うまくいっている。

アスファルトに覆われた地面(代表撮影)

福島第一原発の1号機から4号機までを見渡すことができる高台に立つと、1号機と3号機の変化が特に目につく。 
 
まずは1号機。 
 
原子炉建屋上部にあるガレキ撤去が今年1月からスタートされていて、その作業の真っ最中だった。

1号機はガレキ撤去がスタート(代表撮影)

水素爆発によって崩落した建屋の屋根などがガレキとして残ったままだった1号機。このガレキが、使用済み核燃料プールに残っている燃料の取り出しを行なう上での障害となっていた。 
 
ガレキの撤去作業をしても、放射性物質が飛び散らないようにという準備作業を7年かけて行なっていたのだが、ついに撤去段階となったのだ。 
 
現場では、建屋の真横に大型のクレーンがつけられ、飛散防止対策をしながら、ガレキをひとつひとつ取り除いていた。 
 
 見た目に大きな変化が出ていたのが3号機。 
 
建屋上部が、かまぼこ型のカバーで覆われている。 

3号機にはカバー(代表撮影)

水素爆発で折れ曲がった鉄骨などのガレキはすでに撤去され、使用済み燃料プールに残された核燃料の取り出しに向けた準備が進んでいるのだ。 
 
取材時はカバーに使う8つのリングのうち7つまでしかできていなかったが、2月21日にすべて完成。今年の中ごろにも作業に入るという。 
 
損傷した建屋プールには566体の燃料が残っている。いくら放射性物質の飛散を抑えても、それを取り出さなければ、廃炉作業にはならないのだ。 

本格作業にシフト

建物の外で取材したのはおよそ1時間。 
 
私の積算線量は、去年の取材で測ったのとほぼ同じ0.03ミリシーベルト。歯のレントゲンが0.01ミリシーベルトなので、それを3回受けたのと同じくらい。胸部レントゲン0.06ミリシーベルトの半分くらいだ。

1時間取材した積算線量(代表撮影)

もちろん本来なら放射性物質などないのが当たり前なので、「低い」と言いたいわけではない。 
 
これまでは被害を拡大しないために、冷却し続けること、汚染水対策をすること、労働環境を守ることなど、ほとんどの作業は廃炉に向けた「準備」の段階だった。 
 
これがついにデブリを取り出すという、廃炉に向けた「本格作業」にシフトチェンジしつつあることは、取材を通して良くわかった。 
 
東京電力の担当者は「私たちが起こしてしまった事故によって、いまも5万人が避難している。どうやって普通の状態に近づけていくかを考えなければいけないし、『危ない』といった誤解によって帰還の邪魔にならないよう、情報発信をしなければならない」と語っていた。 
 
ただし、ここからが技術的にも、最も難しい作業になるので楽観はできない。 
 
「伝えられている福島」と「実際の福島」。 
 
『真実の福島』は、人によって違いがあるだろうが、伝える側も受け取る側も冷静な目は必要だ。

廃炉に向けた取り組みは続く(代表撮影)



(執筆:Shimizu Toshihiro)