車内の化粧はみっともない? 波紋を呼ぶマナー広告を斬る

ネットで論争を呼んだ『電車内のマナー動画』について、鉄道と若者文化の専門家が分析する

カテゴリ:暮らし

  • 鉄道ジャーナリスト「『みっともない』では根拠が薄い?」
  • 若者研究者「広告としての出来が問題なのでは?」
  • 化粧はマナー違反か?禁止事項か?違いはどこか?

東急電鉄のマナー向上広告について、ネットユーザーが激しい議論を繰り広げている。問題の動画は、上京したばかりの女の子が電車内で化粧をする女性を見て「みっともな…」とつぶやくという内容。動画に賛同する人がいる一方で、「何がいけないの?」と反発する声も出ているが、専門家はどう見るのか?

広告動画の狙いはクレーム対応?
― 鉄道ジャーナリスト・梅原淳さん

化粧をする女性は、私も都内の通勤電車でよく見かけますね。広告の意図としては、他のお客さんからクレームが来ているからだと思います。要するに『やめさせてくれないか?』という声を受けて広告を作ったんでしょう。

でも、なぜダメなのか理由を言ってません。

拡大して考えると、周りの人にファンデーションがかかって保健衛生上問題があるのかもしれませんし、器具を使ったときに隣の人にぶつかると危ないのかもしれません。

『みっともない』という事を、ダメな理由にするのは根拠が弱い気がしますね。

たとえば人にぶつかって謝らないとか、濡れた傘をたたまないとか、ヘッドフォンの音漏れとかは苦情が多いので注意しましょうという広告は多いですね。

これは、本当なら鉄道側が直接注意できればいいんでしょうけど人手が足りないので、『注意してますよ』という広告を作って、みんなが守ってくれればいいなと考えているのでしょう。ダメではないことでも、公共の場なのである程度は相手のことを考える必要はあるのかなとは思います。

若者は『化粧はみっともない』と思ってる?
ー博報堂ブランドデザイン若者研究所・原田曜平さん

若者が話題にしているポイントを一言でまとめると『感じが悪い!むかつく!』だと思います。広告としての出来がいかがなものかということです。細かいことを言うと、まず主演の女の子がかわいくない。人の心をつかむうえで、『イケていない』人に言われるのがそもそも許せないんです。これが例えば石原さとみさんや新垣結衣さんなら文句は言われなかったんでしょう。

あと設定が古い。これが90年代ならわかるけど、『東京にはきれいな人が多い』みたいな、東京ラブストーリー的な設定も、若者からすると時代錯誤で真剣さを感じないようです。

昔のコギャル全盛期なんて電車でケバい化粧をしている人なんて普通にいて、当時から批判されていたじゃないですか。それから何十年も経っているので、さすが化粧ぐらいは若い子たちの間じゃあ普通になってますよ。

今ちょうどハロウィーンですが、全国調査をしたら、電車の中に仮装している人がいても違和感があったという人はものすごく少なかったんです。若い世代は、お化粧なんて気にしてないし、やるときはもっと控え目ですよ。彼らの実態を踏まえたうえで作ったらよかったのではないかと思います。

アンカー速水健朗のまとめ

鉄道会社として公共交通機関として、社内の化粧に関する大量のクレームを受けているのでしょう。化粧はマナー違反かもしれないが、これを『みっともない』として禁止するような形になったのが問題だったんだと思います。

しかし、クレーマー社会になってしまうのは問題です。なぜならルールが行き過ぎてしまうんです。人にとっては平気なことでも、誰かが嫌なものを禁止していくと、どんどん狭苦しい社会になりますよね。鉄道会社にクレームをつける前に相手に言えばいいし、そんな状況なら化粧する人はいなくなるのではないでしょうか。


(執筆:compass)