安全運転の高齢者は増えている…高齢ドライバー事故増加の知られざる実情

相次いで報道される高齢者ドライバーの事故に打つ手はあるのか?佐々木俊尚が専門家に聞く。

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  • 実は高齢者の事故確率は減っている?…事故増加の理由は別にある
  • 高齢者全体より高齢ドライバーの増加率が急増しているわけ
  • まだ時間がかかる自動運転よりも確実な対策はあるのか?

高齢者が運転する車の死亡事故が各地で相次いでいる。2016年9月までに起きた死亡事故で、運転者の年齢を調べると、65歳以上の高齢者が28.6%と3割近くに上る。事故が増える背景と、対策を2人の専門家に聞いた。

山梨大学大学院 総合研究部・伊藤安海准教授―安全な高齢ドライバーは増えている?

実は、高齢の運転者1人当たりが事故を起こす確率を調べると、昔より今の高齢ドライバーの方が若干安全な傾向がみられるんです。しかし、高齢ドライバーの人数がすごいスピードで増えていますので、高齢ドライバー全体の事故数が増えているんです。それにこれからは、高齢者全体の増加のペースよりも急激に高齢ドライバーが増えます。なぜかというと、今の高齢女性は運転しない方が多いんですが、50代以下になると運転する女性が多くなって男女比は変わらなくなります。ですのでこれから高齢ドライバーは、今までよりも倍くらいのペースで増えていくと思っています。

高齢ドライバーの事故に有効な対策はあるのか

一年でも長く安全運転できる方を増やしていきながら、最低限のどうしても運転やめて頂く方に関してはいろいろ対策とっていくのが大事だと思います。免許返納は、都市部では進むでしょうけど山間部や地方では難しいと思います。そういう場所では、80代くらいのドライバーが、さらにご年配の方々を病院や郵便局に車で連れて行っているんです。それに対して行政はどう動くべきなのかなかなか難しいでしょう。例えば体を動かすスポーツクラブに行くのにも車を使っていたりするので、運転をやめてしまうと今度は健康を維持する運動機会も減ってしまう問題があります。

危険運転の兆しをどうキャッチするのか

よく言われるのは、普段から運転に同乗していた人が気づくことが多いそうですね。例えば、旦那さんの運転で夫婦でよく車に乗るのであれば、奥さんに聞くと「最近たまに信号見落としてるんじゃないの?」と言われたりして気が付くと思います。あと、実際に隣に同乗者がいることによって、かなり事故率も減るといわれています。アドバイスもらえますし、人を乗せていると思うと、かなり気を遣って運転もするようになりますので、特に高齢になったらなるべく一人より複数で車に乗ったほうがいいのではないでしょうか?

日本大学理工学部・小早川 悟教授―有効な対策はあるのか?

Uber(ウーバー)などシェアリングサービスの問題点


たとえば過疎地域では、高齢者の方が広い範囲に点々と住んで需要が分散していますので、労力や金銭的なコストがあうのか社会実験などで確かめる必要があるでしょう。都心部でやる場合と、地方でやる場合とでは仕組みが違ってきたりすると思います。

免許自主返納の問題点

自主返納は、今のところは自主的にということになっていますが、車は非常にに便利な乗り物なので、その利便性を手放すのはなかなか難しいのではないでしょうか?かなり高齢者やドライバー全体の意識が変わってこないと、自分から免許を手放すというのはなかなか大変なのだろうと思います。

自動運転の問題点

自動運転が最初に使われるのは、高速道路やショッピングセンターの駐車場など限られた区間だと思います。一般道に出ていくのはかなり色々な複雑な処理があるので、相当大変でしょう。

自動運転より今すぐできる対策は?

これは私の個人的な考えなんですが、一足飛びに自動運転の車を目指すより、衝突防止や人を検知して止まるような先進の技術を持った車をまず開発して、高齢者の方々に乗ってもらう方が現実的だと思います。たとえば、そういう機能のある車には補助金を出すとか重量税を下げてあげるとか、喜んでそういう機能のある車に乗ってもらう仕組みを作ることはできるでしょう。自動ブレーキ車の利用を義務付ける案も出ていますが、何かエラーがあった時にだれが責任を負うのかという話になるので難しいかもしれません。

これをすれば解決するというものは、なかなかでないでしょう。車は20世紀中の最大の発明の一つと言われていますけれども、これだけ利便性がよい乗り物をぱっと手放すのは結構難しいのだと思います。

アンカーの佐々木俊尚のまとめ

紅葉スポットに平日、車ででかけると高速道路は大渋滞で、周りを見渡すと運転しているのはみんなお年寄りでした。これから特に女性の運転者が増えることになれば、ますます高齢ドライバーが増えるでしょう。

事故対策で印象的だったのは、セーフティ機能のついた車に補助金を出して高齢者に乗ってもらうという話し。あと、認知処理能力の衰えは本人が気づきにくいので、運転するときはなるべく誰かが隣に乗ってもらうようにした方がよさそうです。

免許の自主返納は進まないでしょうね。車がなくて生活できる都会なら、30~40代でも車に乗ることを辞める人もいますが、100m先のコンビニにも車で行っていたような人に免許の返納を求めるのは酷な話でしょう。


(執筆:compass)