古市憲寿が流行語大賞「日本死ね」炎上騒動のウラを斬る

今年2月に話題になった「保育園落ちた日本死ね」という言葉が流行語大賞に選ばれ、また炎上騒動が起きている。

カテゴリ:国内

  • 騒いでいるのは、右派・ネット右翼・保守・保守系言論人…
  • 炎上の背景にあるのは近代史軽視の教育
  • 「保育」と「死」の対比が大きなインパクトになった

今月1日に発表された「2016ユーキャン新語・流行語大賞」のトップテンに「保育園落ちた日本死ね」が入った。この言葉は、保育園の抽せんに落ちた怒りをつづった匿名ブログに使われたキーワード。「死ね」という言葉の良しあしや、授賞式に民進党の山尾志桜里衆院議員が登場したことなどで注目を集め、SNSなどでいわゆる炎上騒ぎになっていた。そのウラ事情を知る専門家に古市憲寿が根掘り葉掘り聞いた。

文筆家  古谷経衡さん

要するに、古市さんもご存じの通り「文脈読まない厨」みたいな人がたくさんいて、「日本死ね」という言葉が日本への「ヘイト」であるとか、けしからんとか、怒っているという事です。騒いでいるのは、「右派」とか「ネット右翼」とか「保守」とか「保守系言論人」とか、いろいろな呼び方がありますけど全部一緒になっています。まあ、そんなに人数はいないですよ。ものすごく怒っている人にリアルでは会ったことはないですね。

なぜそんなに怒るのか

ひたすら「日本死ね」はダメなんですよね。日本を叩くとかdisるのがとにかく嫌なんです。もとになった匿名ブログすら読んでないんじゃないですか。ブログを書いた人の文脈は完全に無視して、「日本死ね」という言葉じりに憤っている。

「日本死ね」というものが、彼らの嫌悪するような物事と結びついているんです。たとえば民進党のガソリン何とかと言われた議員とか、共産党とか、社民党とか、野党の政治的な動きとか。反安倍も反日も許せない。「日本死ね」も許せない。それを流行語に取り上げるとはどういうことかと。彼らが言うには「日本死ね」が日本ではなく「韓国」や「中国」なら問題になるのに、なぜ日本だと流行語なんだと、そういうこと言ってますよね。

本当は中国や韓国問題の方が炎上できるんでしょうけど。要するに嫌韓・嫌中本が売れない。本にするのに必要なファクト(真実)を出し切ったということですね。燃料がなくなった。ねつ造してまで中国や韓国をdisることできませんし、韓国も日韓談話とか合意とかありましたから、日本を心底恨んでるという時代は過ぎ去っています。

しかも、同じ考えだと思っている安倍政権には怒りの持っていきようがない。どうしても野党を叩かざるを得ないんですが、野党の力が落ちているので巨大な敵をたたく快感はない訳ですよ。燃料が慢性的にないのですから、ちょっとしたことがあるとすぐ燃やそうとするんです。

炎上させている人物像

学歴の程度は高いです。日本の場合、近現代史を習熟してなくてもいい大学に行けますが、それが問題なんですよ。日本では近現代史の知識と学歴って比例しないんです。そこにトンデモ論の知識が入ってくるわけです。

むしろネット右翼界隈でやってきた人が、ちゃんと勉強されてネトウヨ嫌いになったというケースもありますよ。ただサイクルがありますから、入ってくる人がいれば出ていく人もいますので、総数的には縮こまっていますが、レベルもそんなに変わってないんじゃないですか。ただ昔の方が本を読む文化があったので、レベルは昔の方が高いかもしれません。

大阪教育大学教育学部 准教授  小崎恭弘さん

待機児童問題は、突然降ってわいたような感じで社会に発信されてますけど、10数年前から大きな問題になっているので、たぶん保育の関係者は、今更どうしてこのタイミングで、って思っているでしょう。

背景には政府とか国自体の矛盾があると思うんですね。ブログの中でも書かれていたように、一億総活躍という前提がありながら、保育園に入れない問題を長らく放置している。という矛盾が大きくなって、それに対する怒りが沸点を超えて爆発したんだとボクは思います。

「日本死ね」の衝撃

非常にインパクトがある言葉ですよね。あまり肯定的に使わない「死」という言葉と、「保育」という子供や生命などを連想させる言葉という対比が、大きなインパクトを与えたんだと思います。ボクはもともと保育士だったんですが、生命のあふれ出るところに冷や水をかけるようなイメージですよね。だから、余計に感情的になってしまったり、保育に対して否定的に捉えた方もいたと感じました。

保育の現場への影響

保育現場の劣悪な待遇っていうのは、保育業界レベルでは問題になていましたけど、多くの人は知らなかったと思います。それが、ブログによって社会に発信されて「ようやくこういうことが話題になった」と保育業界の人も思ったでしょう。しかし、現場で働いている保育士と、待機児童を抱えている保護者って、実は接点はほとんどないんです。まさに待機児童で困っている方は、市役所に行ったりするので、保育士がその問題を感じているかは分からない部分があります。

保育業界にもこのブログはすごく影響を与えたと思います。今まで保育のことを、社会全体に発信するというプラットホームがなかったと思うんですよね。このブログにより、「そういう状況があるんだ」とか「じゃあ保育士の待遇はどうなっているのか」とか保育問題を社会の中で市民が語るプラットホームがようやくできたんじゃないでしょうか。

待機児童の問題って一過性なんですよね。自分の子が保育所に入ってしまうと、問題は解消しますよね。それがきちんと、社会の中で共通概念として取り扱われるようになったということは非常に大きなインパクトを与えたと思います。

アンカー古市憲寿のまとめ

この言葉が社会に一石を投じた意味は大きかったと思うんですよね。「死ね」という表現が「保育」という命を育むイメージと対極にあるという小崎さんの指摘は面白いですね。インパクトがある言葉だから大きな話題になったわけで、これが小さな話題でしかなかったら保育士さんの待遇の深刻さも分からなかったでしょう。やはり資格が必要な仕事だから、当然たくさん給料もらってるんだろうと思いきや、逆に普通のアルバイトより厳しい状況だったなどの事態が明らかになった意味は大きかったと思います。

今、保育園を探すのは妊娠中から始めなきゃ間に合わないって言われています。ただでさえ、つわりとか大変な状況にあるのに、保育園を探さなきゃいけないって、おかしいじゃないですか。本当は産んでから余裕を持って、好きなところの保育園を自由に選べるぐらいの方がいいと思うんですけど、そうなってないのは状況がいびつなんだなあと思います。

ここで、ただいま第1子を妊娠中の大島由香里アナウンサーからのTwitterを発見

大島さんが「保育園義務教育化」ってツイートしているんですが、実はボクはそういうタイトルのすごくイイ本を出しているんです。ただ「保育園落ちた日本死ね」ほどは流行っていないんですが、まあ、ちょっとづつ話題にしていきたいなと思います。


(執筆:compass)

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