3棟に1棟で修繕積立金が不足

マンションの住み替えや購入をお考えの方。
マンション人気に警鐘を鳴らす、ある不安な調査結果が国交省から出されたのをご存じだろうか。マンションの購入者が将来の修繕のために積み立てているお金「修繕積立金」が、全体の35%、3棟に1棟の割合で実際に金額より不足しているというものだ。

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街でこの話を聞くと「『修繕するには修繕積立金だけじゃ不足しているから、いくらか払わなければいけない』という話を聞いたことがある」という方もいた。そこで取材班は、東京・足立区のマンションを訪れ、管理組合の理事長に話を聞いた。

管理組合の役割とは

藤谷万二理事長:
管理組合の役割には、管理費をいただいて日常の管理業務・掃除業務などをやる部分と、マンションを維持するための修繕費用を集金して、次に備える部分がある。

管理費が日常的なマンション清掃などに充てられる一方で、修繕積立金は外壁など共用部分の修理などに充てられるという。
この修繕積立金が不足すると、どんな不具合が起こるのだろうか。

あなぶきハウジングサービス東京東支店・斉藤正和主任:
建物は自然劣化していくので、築10~12年の周期で大規模修繕工事をやる必要があります。工事ができないと外観もボロボロになり、資産価値が落ちて管理組合が立ち行かなくなる危険があります。

修繕積立金は、なぜ不足してしまうのだろうか。マンション問題に詳しい1級建築士・岩山健一さんによると、修繕費が当初の予測よりかかることがあるほか、修繕積立金の滞納者が増えたことも影響しているという。

神戸市ではチェック体制の強化を検討

修繕積立金の問題は「長期修繕計画」を定期的に見直すことが対策になるといい、神戸市では、管理規約の内容や修繕積立金の残高などに対するチェック体制の強化に向け、分譲型タワーマンションの管理組合に対する認証制度の導入を検討し始めた。
2020年にも導入する方向で検討しており、実現すれば自治体としては全国初となる。

しかし、修繕において気を付けるべき点はほかにもある。

取材班と岩山さんが訪れたマンションでは13年前、管理会社が修繕費2,400万円で駐車場の給水管を工事した。岩山さんによると、これは不要な工事だった可能性が高く、その際にマンションを支える「梁(はり)」に穴を開けたため、耐震性が弱まった可能性があるという。なぜこうした工事が行われたのか。岩山さんはこう分析する。

マンションの不要な工事部分を指摘する岩山さん
マンションの不要な工事部分を指摘する岩山さん

岩山さん:
「修繕積立金を使い切るため」といいますかね。そういう目的でやらなくてもいい工事をやっている。

このマンションのケースでは、管理会社も梁の工事は不適切だったと認めている。

管理組合が修繕積立金を悪用するケースも

3割以上のマンションで不足している、マンションの修繕積立金。
一方で、この積立金を勝手に飲み会に使うなど、管理組合に悪用されることもあるという。

実際のトラブル例では、マンションのブローカーが住民としてマンションに入り込み、大規模な修繕計画が出ると、自分と関係ある建設会社に工事を発注して、バックマージンをもらうという悪質なケースもあった。

自分たちのマンションを守る意識を

マンションで生活する方々は、どうすれば良いのだろうか。
管理組合の理事を経験した、フジテレビの風間晋解説委員はこう分析する。

風間解説委員:
大概のマンション問題の原因は、住民の意識の低さにあるのではないか。
便利に気持ちよく生活するには、例えば「ドアがちょっと開きづらくなった」とか「エレベーターの調子が悪い」とか日常的な問題から、大規模修繕の準備まで含めて、自分たちのマンションの価値を守るという意識が大事だと思う。

国交省は「今、マンションに住んでいる人たちの約63%は、そのマンションに住み続ける」という統計を出している。そう考えると「自分が管理組合に関心を持っていなければ、自分のマンションをいい状態に保っていくことはできませんよ」というのが、今のマンション問題の根っこかなと思います。

良いマンションにできるだけ長く住むには、「修繕積立金を支払ってるからいい」と考えるのではなく、人任せにせずチェックしていく意識を持つ必要がありそうだ。

(「Live News it!」5月14日放送分より)