イスラエル発、ベッドの下の“見守り役”。呼吸や心拍の異常を通知

日本上陸も検討中。全世界注目のイスラエル企業にインタビュー

  • 世界が注目するEarlySense社のプロダクト
  • 病院向け非接触型の体調管理システムで病院や患者の負担軽減
  • 100億円も資金調達した企業が日本にやってくる!?

世界各地とスカイプをつないで、話題のスタートアップ企業にジャーナリスト佐々木俊尚が直撃インタビュー。初回はイスラエルに本拠を構えるEarlySense社の注目技術を取り上げる。イスラエルからアブノル・ハルペリンCEOとリアット・ツォレフ デジタルヘルス事業部長、そしてイスラエルのスタートアップ事情に詳しい「aniwo」CEOの寺田彼日さんが出演、スタジオの「aniwo」COOの植野力さんとともに、企業の生の声を伺った。

スタートアップ企業が続々生まれるイスラエル


佐々木俊尚
イスラエルは昔からサイバーセキュリティ関係の産業が多いことで有名ですね。そこから派生した色んな技術があるので、スタートアップ企業も多い印象があります。

鈴木唯アナウンサー
植野さんはイスラエルのスタートアップ企業の情報を世界に伝える仕事をされているんですよね。なぜイスラエルを選んだんですか。

植野力(「aniwo」COO)
用意していたことを佐々木さんに言われちゃいましたが(笑)、イスラエルはIntelの拠点があったり、Googleの予測検索だったり、世の中を変える様なテクノロジーやビジネスがある一方、日本では危ない国と思われて知名度が低いところも含めて面白いなと思っています。

EarlySense社とSkype中継

左から)リアット・ツォレフ デジタルヘルス事業部長、アブノル・ハルペリンCEO、寺田彼日氏


鈴木
EarlySense社は、どんなことを手掛けているんですか。


寺田彼日(「aniwo」CEO)
このようなデバイスを作っています。

これは病院のマットレスの下に敷いて、患者さんの呼吸や心拍数を検知し、ドクターやナースに通知します。ユーザー数は約25万人いて、年間100人程度の患者さんの命を救い、病院のコスト削減にも繋がる、非常に画期的なプロダクトです。


佐々木
素晴らしい。その板が圧力とか振動とかを読み取るセンサーなんですか?

植野
そうですね。動きを検知するセンサーで、ハードウェアの技術だけでなく「この動きは心拍だ」とか「呼吸だ」とかを判別するソフトウェアの技術も優れているんです。

佐々木
脈拍と呼吸って全然別じゃないですか。それが同じ体の中で起きていても、それぞれ別に認識できるってことですか?

植野
そうですね。ちなみに一つのベッドに二人寝ていても、一人一人の心拍や呼吸を判別できます。

佐々木
データをきちんと分析して見分けてるんですね。

植野
そうです。これがあれば離れたところにいても異常に気づけます。病院で使えば、夜に全ての患者さんの容態を何回も見て回らなくて良くなるので、コストが削減できるんです。


佐々木
なるほど。自分で様態を伝えられない人にとっても、ありがたいですね。日本には導入されていないんですか?

植野
日本はまだですね。アメリカのFDA認証や、EU加盟国のCEマークも取得しているので、安全基準を満たしていると販売を許可されている国もあるんですけど。

佐々木
身体に色んなセンサーつけてデータを読み取る試みは、ここ数年盛んに行われるようになりましたね。アップルウォッチも、当初は30種類くらいのセンサーが内蔵されるっていう話だったのに、やってみたら、多分バッテリーとか重量とかの問題とかがクリアできなくてあんなチープなモデルになっちゃった。これから、どんどん高度なセンシングが可能になるんでしょうね。

世界が注目するプロダクトの仕組み

鈴木
センサーはどういう仕組みになっているんですか?

Liat Tsoref(EarlySense社 デジタルヘルス事業部長…寺田さんによる訳)
簡単に言いますと、このデバイスは物理的な振動を電気化して、3つの信号に変換しています。一つ目が「身体の動き」。


二つ目が「肺の膨らみ」。

三つ目が「心拍」です。


EarlySense社の強みは、それらの信号の違いを長期間に渡って研究・分析し、最適な検知ができる仕組みを作れることにあります。このデバイスによって、心拍数や呼吸数が一定の基準を超えたり、また患者さんがベッドからいなくなって一定時間を越えた場合は、緊急事態を伝えることができます。


佐々木
病院で使うことで、どのような効果があるんでしょうか。人員を減らせるとか、夜間に巡回する仕事量が減るなど、ビジネス的なメリットは出るのでしょうか。

Halperin(寺田さん訳)
まず、患者さんに適切な処置を行うことで、入院の期間を短くすることができます。例えば、病院にいる期間を減らして、治療後に老人ホームへ移すなど、医療費の削減に繋がりますこれは実際にハーバード大学と共同で10ヶ月間の実験を行いまして、効果があることが実証されています。

鈴木
病院だけでなく、一般家庭向けの商品も出てるんですよね?


Liat(寺田さん訳)
こちらのデバイスは、スマホのアプリで睡眠時の心拍数と呼吸数を管理し、睡眠の時間や、睡眠の質、平均的な心拍数、呼吸数などを記録します。例えば、離れて暮らしている高齢の親御さんの状況を見守ったり、緊急事態が起きればスマホで通知を受け取ったりすることもできます。


鈴木
EarlySense社には、どんなところが投資しているんですか?

Halperin(寺田さん訳)

イスラエルのピタンゴなどのベンチャーキャピタルや、アメリカ系の投資家、アジアではサムスンも投資しています。サムスンとはパートナーシップを組んで、アジア展開に向けた活動も行っています。日本からは三井物産が投資をしていて、累計では100億円以上の資金を調達しています。


佐々木
100億円以上とは、日本でスタートアップ企業に投資するケースとしても相当大きい方ですね。

Halperin(寺田さん訳)
イスラエルでもトップレベルですね。もうすぐ10億ドル以上を集める、いわゆる「ユニコーン企業」になるだろうと言われていて、今最も注目されるスタートアップ企業です。

鈴木
今後、日本で展開する予定はないんですか?

Halperin(寺田さん訳)
今、三井物産からのサポートをうけて、日本展開に向けた調整を行っています。

佐々木
これは厚労省などの許認可は必要なんですか。

植野
病院にシステムを入れるとなると、遠隔医療という分野になると思います。その分野は今、法整備が徐々に進んでいるところです。

佐々木
日本は高齢者が多いので、こういう製品のニーズはすごく高そうですよね。頑張ってください。IoT=Internet of Things=「モノのインターネット」っていうんだけど、人間の身体などから読み取った情報を、インターネットに接続して集約し、フィードバックする仕組みの、典型的な良い試みですよね。