これで目覚めはスッキリ! 睡眠の質を上げる3つのコツ

特集「睡眠改善委員会」第3回

カテゴリ:暮らし

  • 1日のはじまりは前夜からと考える
  • 睡眠の質にこだわるなら、入眠から3時間を意識!
  • 生活のオン・オフを切り替えることも大切

1日のスタートは朝ではなく“前夜”

クラウドサービスの普及などによって、「いつでもどこでも仕事ができる」というワークスタイルが定着した現代。仕事を家に持ち帰って行っているという人も少なくないだろう。

しかし、その結果として真っ先に犠牲にされるのが“睡眠”だ。翌日のパフォーマンスに悪影響を及ぼすことはわかっていながらも、夜遅くまで仕事を続け、その結果、食事や入浴なども後ろ倒しになり、十分な睡眠時間を確保できない。そんなビジネスパーソンが多く存在している。

だが、そもそも「睡眠=睡眠時間」と考えるのはちょっと違う。本連載の第2回でも説明したとおり、最適な睡眠時間は人それぞれ。8時間眠ったからといってベストパフォーマンスを発揮できるとは限らない。

「睡眠の話になると、いつも睡眠時間ばかり着目されますが、むしろ意識しなければいけないのは質。どんなに睡眠時間を確保しても、質が低ければ十分な睡眠を取れているとは言えません。限られた時間のなかでどれだけ熟眠できるか。これが大切なんです」

睡眠は時間と質の二軸で考えることが大切。自分にとって適切な睡眠時間を知り、そのうえで質を追求していくことが理想的な睡眠を手に入れるために求められる

そう話すのは、現役医師であり、医療経営コンサルタントも務める裴英洙さん。

睡眠には、脳と心の疲れを取るレム睡眠と、体の疲れを取るノンレム睡眠があることは知られているが、これらが交互にバランスよく繰り返されることで質の高い睡眠が得られるという。そして、その実現のためには、まず1日のスタートを変える必要があるそうだ。

「睡眠の質を高めたいのであれば、1日のはじまりは朝ではなく、前夜からだと考えましょう。『大量に飲酒してしまった』『ついつい夜更かしをしてしまった』こうした状態で次の日を迎えたとき、体調がすぐれていると感じることはまずありませんよね。コンディションの善し悪しは、その前夜の行動で決まることがほとんどなんです」

つまり、寝ることで1日を終えるのではなく、次の1日をはじめるために寝るという意識に変えるのだ。すると、当然ながらどのように寝ると朝から活発に動けるか、と考えるようになるという。

質の高い睡眠は、入眠から3時間で決まる!

また、睡眠コンサルタントの友野なおさんは「入眠から3時間の質にこだわってほしい」と話す。

「細胞の新陳代謝(メンテナンス)を活発にする“成長ホルモン”は、1日に分泌される総量の約70%が睡眠中に分泌されるのですが、とくに寝入ってすぐのノンレム睡眠時に集中して分泌されることがわかっています。眠りはじめの3時間をしっかり眠るために、ベッドに入るための準備をしっかりすることが大切なんです」

また、人を自然な眠りへ誘う“メラトニン”というホルモンは、朝起きてから約15時間後に分泌がはじまるという。毎日の起床時間から寝る時間帯をある程度定め、それに合わせて1日を過ごすように習慣づけるのが好ましいそうだ。

「しかもメラトニンには、抗酸化作用があり、細胞の新陳代謝の促進や疲労回復の作用があります。先ほどの成長ホルモンの分泌のタイミングと重ねると、より質の高い睡眠が可能になるはずです」

睡眠前の“ルーティン”が重要


また、眠る前に生活のオン・オフを切り替えるための“ルーティン”を行うのも睡眠の質を高めるのにいいと快眠セラピストの三橋美穂さんは言う。

「体の機能を最適な状態に保つ自律神経には、活動時に活発になる“交感神経”と休息時に活発になる“副交感神経”があります。眠る前にオン・オフを切り替えるためのルーティンを行うと、体や心がリラックスできて“副交感神経”の働きが優位になり、寝つきがよくなるんです」

「パジャマに着替える」「アロマを炊く」「クラシック音楽を聴く」このような行動を眠る前のルーティンにするだけで、睡眠の質の向上につながるという。また、睡眠環境を整えるのも重要だと三橋さんは言う。

「眠る環境を考えたときにまず考えたいのは枕とマットレス。とくに枕は自分の首の高さに合っていないと、肩こりやイビキなどの原因にもなります。自分に合ったものをオーダメイドするのも、パフォーマンス向上のための投資としてはお手頃だと思いますよ」

マットレスは、スリムな人は“やわらかめ”、標準体型の人は“中くらい”、ガッチリしている人は“固め”を選ぶのが目安だそうだ。しかし、それまで使っていたものと極端に違うと違和感があるという人は、“中くらい”を使ってみるといい。そして、できるならば壁紙や寝具の色、カーテンにもこだわりたい。

「寝室に赤や黄などの鮮やかな色があると脳が興奮して眠りの妨げになる。ベージュやパステルカラーなどをうまく使うとリラックスできます。またカーテンは、眠りの質だけを追い求めるのであれば、遮光度の低い2級や3級がオススメです。部屋が徐々に明るくなって、太陽の光を浴びるほうが自然な目覚めを迎えることができますから。しかし、睡眠時間が限られている人は逆に光を遮断してください。真っ暗な空間の方が短期間に深く眠ることができます」

もちろん、これ以外にも細かいコツはいろいろあるが、まずは「1日のスタートを前夜からに変える」「入眠から3時間にこだわる」「生活のオン・オフの切り替えをしっかりする」この3つから始めてみてほしい。

■取材協力者プロフィール

友野 なお
睡眠コンサルタント、株式会社SEA Trinity代表取締役、科学でわかる ねむりの環境・空間ラボ主催。順天堂大学大学院博士前期課程にて睡眠を研究。日本睡眠学会、日本睡眠環境学会に所属。著書に『ぐっすり睡眠!疲れとり足首ウォーマー』(KADOKAWA)、『やすみかたの教科書』(主婦の友社)

裴 英洙
医師・医学博士、MBA。ハイズ株式会社代表取締役社長。現在も医師として臨床業務をこなしつつ、臨床の最前線からのニーズを医療機関経営に活かすハンズオン型支援を行なっている。著書に『一流の睡眠』(ダイヤモンド社)、『なぜ、一流の人は「疲れ」を翌日に持ち越さないのか』(ダイヤモンド社)

三橋 美穂
快眠セラピスト・睡眠環境プランナー。寝具メーカーの研究開発部長を経て2003年に独立。現在は、全国での講演や執筆のほか、ベッドメーカーのコンサルティングなど、企業の睡眠関連事業にも広く携わる。著書に『驚くほど眠りの質がよくなる 睡眠メソッド100』(かんき出版)、『脳が若返る快眠の技術』(KADOKAWA)


文=村上 広大(EditReal)
イラスト=浜名 信次(Beach)

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