“イクメンであれ”というプレッシャー 現代の男性が目指すべき父親像

特集「U39世代の現在地」第4回

カテゴリ:話題

  • 昭和vs現代「苦労は現代の方が多い」と現代の父
  • イクメンでないことが悪という風潮が父親たちのプレッシャーに
  • 目指すべき父親像は「マルチプレーヤー」 器用さより柔軟さ

自分の父親と今の自分 父親としてどちらが大変?

35~39歳世代は、働き盛りではあるが、同時に子育て世代であることが多い。最近では「イクメン」という言葉の流行に象徴されるように、子育てに積極的な男性が増え、仕事だけこなせばよい父、とはいかない。子どもの頃、眼にした父親像の再現では時代遅れなのだ。

子どもは、夫婦ふたりのもの。男女の区別なく、子育てに参加するという考えは理解できるものの、「男性にのしかかる負担が大きいのではないか?」という声も漏れ聞こえる。実際、子育てと仕事を両立している男性たちは、どう感じているのだろうか。

『ホウドウキョク』では、子持ちの男性161人を対象にアンケート調査を実施。子を持つ父親の本音を探ることにした(調査方法:インターネットによる独自調査。調査期間:2016/9/7~13実施。調査協力:ネオマーケティング)。

まず、気になったのは、父親としての役割の負担感。現在の父親層(30~40代)は、かつて自分が見た父親と重ねて、親の大変さをどのように感じているのだろうか?

「一概に比べることはできませんが、自分の父親と今の自分を比べ、しいて言えば、どちらの方が父親として苦労が多いと思いますか?」という問いに対しては、「どちらかというと父親の時代(55名:34.2%)」「どちらかというと現代(106名:65.8%)」と、現在の自分たちの方が苦労が多いと感じている父親が多いという結果になった。

戦後~バブル崩壊以前までは、「男は外で稼ぎ、女は家庭を守る」という風潮は根強く、「亭主元気で留守がいい」という言葉もあった。

しかし、長き不況もあいまって、専業主婦は減少し、働く妻は増加し続けている。厚生労働省の調査では、共働き家庭は、平成26年時点で1114万世帯にも上る。

仕事で稼ぎ、家族を養うということが、夫・妻両方に課せられる時代になり、「ならば妻同様に育児にも専念せねばなるまい」と、考えた父親は少なくないだろう。ところが、OECDが先進国を対象に行った調査「無償労働時間と有償労働・学習時間の調査」(2014)の結果を見ると、日本の夫は圧倒的に労働時間が長い。育児を手伝いたくても、圧倒的に時間が足りないのだ。

育児参加しない父親は、周囲の価値観が許してはくれない。
「仕事も育児もしっかりやることが良い父親でありたい…けど、正直しんどい」。
現代の父親の方が苦労が多いと感じる人が多い背景には、そんな本音が見え隠れする。

そこで登場した「イクメン」という言葉に関しても、彼らに本音を問うてみた。

「イクメンはこうあるべき」父親を襲うプレッシャー

「『イクメン』という言葉や取り組みに対して、あなたが抱く印象に近しい選択肢をお選びください」という問いには、次のような結果に。

・「良い取り組みだと思う。自分もなるべくイクメンでありたいと思う(43名:26.7%)」
・「良い取り組みだと思う。なるべくイクメンであるよう努力はしているが、イクメンになるためには自分だけでは解決できない問題があるように思う(41名:25.5%)」
・「良い取り組みだと思う。しかし仕事と育児の両立をしなければいけないという価値観は、どこか息苦しさを感じる(39名:24.2%)」
・「悪い取り組みだと思う。仕事で忙しい父親が多いなか、育児も課そうとすることは時間的・労力的に無理がある(12名:7.5%)」
・「悪い取り組みだと思う。イクメンは夫に育児の負担を増やしたが、妻に対し、夫同様の働き方や稼ぎを求めることが難しく、公平性を欠いているように感じる(9名:5.6%)」
・「悪い取り組みだと思う。夫と妻、性差や負担する事柄が異なるからこそ、上手に家庭が回ることが多いように思う(17名:10.6%)」

全体としては「良い取り組みだと思う」派が多いものの、息苦しさを感じるという回答者も39名(24.2%)いる事は見逃せない。

育児・教育ジャーナリストとして、パパの悩み相談なども行う、おおたとしまささんは、最近の「イクメン」という言葉の使われ方に次のような違和感を抱く。

「『イクメン』という言葉は、男性が育児に積極的に参加するという点では間違いではありません。しかし、最近ではどこか自己満足的な意味でとらえる人が多いように思います。例えば、『SNSイクメン』という言葉もあり、FacebookやTwitter上で子どもの育児に関する画像をアップロードすることで、よき父親ぶりをアピールする人も少なくありません」(おおたとしまささん 以下同)

イクメンという言葉が、悩める父たちの自己顕示欲を満たす方法として、ある種のファッション感覚になっている背景には、「よき父親でなければならないというプレッシャーがあるのでは」と、おおたさん。実際、おおたさんが運営する、「パパの悩み相談横丁」を訪れる男性は、半数以上が30代。

良き父でありたいが、はたしてよき父親とはどんな父親なのかわからない、という悩みを抱える相談者は多いという。また、おおたさんは、次のようにも話す。

「言葉を先に作り、流行らせ、プレッシャーを与え、時代の価値観に合わない人も無理やりイクメンにするのは、いかにも日本の村社会的なやり方。イクメンは確かに増えている印象を受けますが、イクメンであることを強要された世代なのかもしれません」

新たな父親像とは? 目指すはマルチプレーヤー

男性の負担が増えたとはいうが、共働き世帯の増加にともない、女性の負担も増えている。言い換えれば、夫婦ともに、余裕がない状態だ。この時代、もっと気楽にイクメン生活を楽しめないのだろうか。昭和の父親像とは違う、現代の父親たち。新たなロールモデルがない父親たちが目指すべき姿とは?

「父がいて、母がいて、祖父母がいて、叔父や叔母がいて。昔はそうした家族形態が当たり前でした。しかし、今では核家族が一般的。そのため、昔はハッキリしていた父・母それぞれの役割の幅が広がってしまった。時には祖父の役をし、叔母の役をし、『マルチプレーヤー』の父が求められています」

マルチプレーヤーと聞くと、あらゆることに器用に対応しなければならないと感じる人もいるだろう。しかし、おおたさんが話す「マルチプレーヤー」は、全部を完璧にこなす人のことではない。

「祖父や祖母、母など、かつて家族のなかにあった様々な役割を、ありのままの自分で演じることです。子どもが生まれたら、だれでもすぐ父親になれるわけではなく、だんだんと父親は形作られてゆくもの。未熟な自分を受け入れ、その都度一生懸命やればいいんです。『こうあるべき』という固定観念を捨てること。何より大切なのは、器用さよりも柔軟さですよ」

おおたさんはさらにこうも言う。

「親が出来ることは意外に多くありません。親が頑張れば子どもができるようになるわけではないんです。最低限の水と肥料をあげれば、あとは勝手に太陽を浴びて育っていきますよ」

子の成長とともに、親もまた、親として成長し続けている。「イクメンとはこうあるべき」という考えを捨て、もっと気楽なマルチプレーヤーを目指せば、肩の力が抜けるのではないだろうか。


文=明日陽樹/考務店