いま考えたい「若手からの卒業と脱却」 freee株式会社代表・佐々木氏インタビュー

特集「U39世代の現在地」第5回

カテゴリ:ビジネス

  • ポジティブ・ネガティブ “若手”の2種類の意味
  • “つかえ感”を言い訳にしないで行動すべし!
  • “若手からの脱却”の鍵は「対話を重ねること」

ビジネスマンも35歳を越えれば、そろそろ“若手”からは脱却したいもの。しかし、社内を見渡せば年上ばかりで下が少ない。そのため“若手役”でいることを求められているような気がするし、結局のところ自分でもそれに甘んじてしまう…。そんな現状に不満を持ちつつも、とるべきアクションがわからないという人は多いのでは?

では、各界で活躍するこの世代の人は、どのように「若手を卒業した」のだろう。それがわかれば、取るべきアクションが見えてくるかもしれない。

“若手”起業家が思う「若手」の定義とは

クラウド型会計ソフトでシェアNo.1の企業「freee」。現在、36歳の代表取締役の佐々木大輔氏は、一橋大学在学中からインターネットリサーチ会社の契約社員として活躍。以降、博報堂やGoogleを経て2012年に同社を設立。2015ForbesJAPAN日本の起業家BEST10に選ばれるなど、現在注目の30代起業家だ。

そもそも若手とはどのような人、立場のことを言うのだと思われますか?

「『若手』の言葉には、ポジティブとネガティブの2つがあると思います。ひとつは、与えられた課題に対し、それ以上の何かを生み出すかもしれない期待ができる存在であること。さらに成長する伸び代がある人を指すもの。
もう一つは、その人が出すべき成果、こなすべきミッションを脇に置いてしまう人。自分の立場や功績。どう見られてどう評価されるかばかりを気にしてしまう。そんな求められた行動がとれないのが『若いよね』に秘められたネガティブな意味だと思います」

36歳という年齢から、自身が「若手経営者」と言われることが多いという佐々木さん。しかし、今では「老獪(ろうかい)な仕事のやり方」を楽しんでいるという。

「例えばチームの成果がでていないとき、がむしゃらに頑張って『一人で全員分の働きをしちゃいました』みたいのも一つの『若さ』。他の人の達成できない分まで、やればいいんだろう。それがチームの達成だろうと、どこかで考えているんです。
そうした個人技としての爆発力は重要ですが、そうでなくてどうやったら全体をもちあげられるのか。手練れ、老獪な仕事のやり方ですね。どうやったらよりチームとして上にあがれるかを考えることが、いずれ大事になってくるんです」

佐々木さんは人がうらやむような転職歴をお持ちですが、成功の鍵は、そうした考え方を初めから持っていたことにある?

「いえ、まったく(苦笑)。初めのころは自分が目立つこと優先でしたから。グーグルに入社した28歳の時点ですでに4回目の転職。当時は今より、転職を繰り返すことのイメージは良くありませんでしたし、身近な人たちには心配をかけたと思います。
それができたのは、それこそ“若手だったから”でしょうね。自分のこと、自分の成長だけを考えたから。極端にいえば、それで周りに迷惑がかかってもあまり気にしませんでした。
でも、振り返ってみるとそれはそれでよかったと思うんです。そういう時代に勝ちパターンとか、努力のツボだとか限界を学べたので」

上世代の“つかえ感” 佐々木流の解決法

ところで、30代のビジネスマンは上の世代の人口の多さ、いわゆる人口バランスによる“つかえ感”を持っている人が多いと聞きます。その場合、転職するしかないのでしょうか?

「もし『上が詰まっているせいで出世できない、思い通りに働けない』と思っているなら、その上の人たちを突き抜けるぐらい目立つ、ひとつ飛ばして役員にアプローチする、あるいは周りを扇動して願いを実現する…。でなければ『場所を変える』しかないじゃないですか」

ああ、その選択肢のうちなら「場所を変える」は現実味ありますね。

「実際には上が詰まっているわけでなく、自分に問題があるだけなのかもしれません。しかし『自分の方が出来る』と思っているなら、それを試す場を作らない限り、単に思い上がりの期間が続くだけ。そういう気分に入っているなら、検証する機会は積極的に作っていった方がいいですよ」

若手からのスムーズな脱却
正しくガムシャラな若手時代があってこそ


ご自身は、どこで「若手を脱却すべき」だと感じたのでしょうか?

「それは、グーグルに入社した後ですね。アジア全体のマーケティングの責任者となった時、チーム全体の成果が出せず行きづまりを感じたんですよ。このときも、初めは自分で頑張ってなんとかしようとしたんですが、もう対処ができない状況になっていました。先ほど言った『老獪な仕事のやり方』に変えざるをえなくなったんですよ。

これは、私のような立場に限った話ではありません。人を管理する役職についていなかったとしても、他の人達に影響を与えることのほうが、自分だけで頑張ることよりインパクトを生み出せる瞬間があるんですよ。

会社勤めをしながら、なにがしかの手詰まりを感じているなら、『この人がいると、チームが盛り上がる』とか、『他の部署が非常に協力的になる』とかそういう影響力で仕事を動かす努力を、どこかのタイミングでやってみるべきですね」

どうすれば人への「影響力」が身につくのでしょうか?

「そこはもう、いろいろな人と対話を重ねるしかないのだと思います。それができていると思える人と積極的に話し、教えてもらう。

そのためには『ガムシャラな若手として頑張った過去』がすごく重要。成功を焦って、初めから影響力のことばかり考えると答えは出てきません。まずは自分の軸足を持つことが大事です。

そうして、自分が所属するチームや部署よりもう一つ大きなくくりで達成すべきことを考える。その実現のために、自分ではなく、他の人に影響を与えてできることを実践する。成果がでればラッキーですし、続けていれば成果がでずとも『あの人に、なんかやらせてみたい』と周りが思い始めて来るものです。
要は、上の人がやるべき役割を担っている、そんな風に振る舞ってしまえばいいんですよ」

え、振る舞っちゃっていいんですか?

「振る舞っちゃっていいんです! もちろん、偉そうにしろってことではなくて。自分よりも、一つ上の人がやるべきことをなぜかこの人がやってる、という状況を目指すべきということですけどね」



文=宇都宮雅之

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