2016年のお金事情。今知りたい3つのキーワード

特集「いつまで初心者で通すの? 自分の“足もと財政”管理術」第4回

カテゴリ:ビジネス

  • マイナス金利の今、銀行預金よりも変動型国債を
  • 今ある資産をベストな形で運用するには?
  • 老後のために今、必要な貯金の額が簡単にわかる!

経済評論家の山崎元さん。山崎さん曰く、お金で頭を悩ますのは「今持っているお金をどう使うか?」である。多くの人が老後に不安を抱えるなか、将来どれくらい資産を備えればいいのかわからないからだ。今回教えていただいたキーワードは、そんなモヤモヤを解消してくれるヒントとなるものだ。

【1】マイナス金利という特殊な現状。銀行預金は損をするか?

まず知っておきたいのが、今の経済情勢。資産管理で大切なのは、時流に乗ること。そのなかでも、今年1月に日銀が導入した「マイナス金利」政策について、そもそもどういう状況なのか。

「マイナス金利とは、特殊な状況ですが、お金を預けてマイナスになるのは日銀と金融機関での取り引きです。個人の銀行預金は、定期預金で0.01%と限りなくゼロに近いとはいえ、マイナスではありません」(山崎さん、以下同)

銀行預金のままではお金が増えないため、リスクを取ってでも、利回りの高い株式や投資信託、外貨などを買うか悩む人もいるだろう。だがそれは早計というもの。

「未来がどうなっているかは、誰にもわかりませんよね。だったら人生の大問題を投資の運用で解決しようと考えないことです。マイナス金利の局面だからといって、銀行預金は一概に不利とは言えません」

お金の価値は、経済状況によって変動する。インフレ局面であればお金の価値より「もの」の価値が高まる。株式や不動産などは値上がりする。だがこのまま経済成長せず、デフレが続けば「お金」の価値は据え置きに。

「政府は2%程度のインフレを目標としています。ですがそれが実現してからインフレに対応した配分に組み立てても遅くはありません。長期金利が2%を超えた時点で改めて考え直せばいいと思います」

【2】年金は破綻しないが縮小する。確定拠出年金で備えよ

続いて知っておくべきは「年金」。多くの人は、将来公的年金が「破綻するのでは」と不安に思っているだろう。山崎さんの答えは次の通りだ。

「年金は、縮小するけれども破綻はしません。公的年金に加入しつつ、不足分に備えるのが安心でしょう」

年金を考える上で知っておきたいのが、「所得代替率」。現役時代に稼いでいた所得に対して、給付される年金の割合のことだ。今、年金を支給されている人たちの所得代替率を手取り額で計算すると、約53.9%。平均的な月の手取り36万円の世帯なら、20万円弱もらえている。だがこの所得代替率は、毎年1%ずつ減っているという。我々が年金をもらうころには、何%となるのか。

「厚生労働省38〜50%と試算(※1)しています。厚生年金のみなら約30%、企業年金があるなら40%。国民年金のみなら10%になります」

手取り36万円の世帯の場合、約13万円へ落ち込む。これでは生活が立ち行かないだろう。そこで考えるべきは「確定拠出年金」だという。企業年金などに代わり、個人で年金を運用する制度だ。

「確定拠出年金とは、個人が将来の年金を自分で運用する制度です。一定以上の収入があるならこの制度を利用した方が絶対に得です。なぜなら確定拠出年金へ拠出した金額は非課税となるからです」

たとえば年収500万円の会社員の場合、年間で年27万6000円までこの確定拠出年金に資産を投じることができる。すると、最大で8万円ほどが節税できるのだ(※2)。確定拠出年金には、企業型と個人型の種類があり、それぞれ加入資格が異なるので今のうちに調べておきたい。
 
※1「国民年金及び厚生年金に係る財政の現況及び見通し —平成26年財政検証結果—」
※2住民税・所得税を約3割課税される場合

老後の資金は、いくら用意すればいいのか?

もらえる年金の額が分かったが、将来にいくら備えるかは、意見が分かれるところだろう。様々なデータがあるが、この度、山崎さんが画期的な公式を考案した。その名も「人生設計の基本公式」。

自分の年収や資産を当てはめるだけで、今からどれくらいの蓄えが必要か割り出せる。ここで試算される必要貯蓄率とは、今の手取りから何%貯蓄が必要かの数値である。例えば、0.25と出た場合は25%である。自分に適切な貯蓄額を知ろう。

【3】「脱・普通預金」国債やインデックスファンド活用を

続いて頭に入れて置きたいキーワードは、「脱・普通預金」。先ほど、銀行預金でも問題ないと述べた山崎さんだが、「問題ない」だけであり、より良い資産の運用方法を検討することも勧めている。

それが、「個人向け国債」だ。国債とは、日本国が発行する債券。国の借金の証書である。銀行や証券会社で購入できる。これがなぜお勧めか。

「個人向け国債、なかでも10年変動金利型をお勧めする理由は次の3つからです。まず、銀行より安全な資産であること。国家が破綻するよりも銀行が破綻する可能性の方が遥かに高いため銀行預金より安全と言えます。
2つ目は、変動型なら半年ごとに適用利率が変わり、実勢金利の0.66%が適用されます。だからインフレにも対応できるのです。そして最後3つ目に、個人向け国債には『最低金利保証』が設けられていること。実勢金利がどんなに低くても国債は年利0.05%を下回りません。マイナス金利の今、定期預金の利率0.01%と比べても優位です」

もしも当面動かさない資金があるなら、国債の購入を考えるべし。3〜4カ月分の生活費は普通預金に預け、残りはすべて国債に投じるのもありだ。

また、元本保証ではないが、次のお金の使い方も知っておきたい。

「多少のリスクはありますが、リターンを多くしたい人には、インデックスファンドがお勧めです。この投資信託なら、理論上は年利5%が期待できます」

インデックスファンドとは、日経平均やTOPIX、ダウ工業平均などの指標に連動する投資信託のこと。これで、海外株にも投資することを山崎さんは勧める。

「将来、日本政府が破綻する可能性は低いのですが、『円』の価値が下がるリスクはあります。インデックスファンドで海外の株に投資することは、将来の為替相場下落の対策になります」

1日10秒だけでいい。経済ニュースを観て、考えよう

お金というと情報が無限にあり、難しく考えがちだが、まずは上記3つのキーワードに沿って自分の資産を整理してみてはどうだろうか。自分の資産の正しい置き場所はどこか。今一度考え直してほしい。

そして毎日10秒でもいいからニュースや新聞で「日経平均・為替レート・長期金利」をチェックすると、よりよいお金との付き合い方が見えてくるという。

「なぜ値上がりしたのか、なぜ値下がりしたのか。それを自分なりに考える習慣を付けることがお金に強くなる第一歩です。続けることで、経済的思考のスイッチが入り、時事問題と市場の動きとの関連が見えてくるようになるでしょう」

■山崎元
やまざきはじめ/1958年北海道生まれ。1981年東京大学経済学部卒業。同年、三菱商事に就職。以後12回の転職(→野村投信→住友生命→住友信託→シュローダー投信→バーラ→メリルリンチ証券→パリバ証券→山一證券→DKA→明治生命→UFJ総研)。
2005年、楽天証券経済研究所客員研究員に。
ファンドマネジャー、コンサルタント等の経験を踏まえた資産運用分野を専門とし、雑誌やウェブサイトで多数連載を執筆し、テレビのコメンテーターとしても活躍する。


文=西澤まどか
人物撮影=清永洋
構成=高木沙織