年賀状が受験のお守りに!? 知られざる年賀状のチカラ

特集「出す?出さない?年賀状の分かれ道」第3回

カテゴリ:暮らし

  • 年賀状には自分と相手との物語が詰まっている
  • 年賀状をとおして初心を思い出すこともできる
  • 年に1度のやりとりだからこそ、印象に強く残る

1通の年賀状がきっかけで、物語が生まれることがある

年賀状で人生が変わるかもしれない。そんな予感を感じながら元旦を迎える人はおそらくほとんどいないだろう。だが、現実に1通の年賀状が思いもよらぬ出来事を起こすこともある。

「私がもっとも印象に残っているのは、ある年配の女性の話。高校生のときに同級生から1通の年賀状をもらったそうです。そのことがきっかけでその女性と同級生は付き合うことに。それから40年近くも人生をともにしているそうです」

そう話すのは、今回の年賀状特集の第1回でも協力してくれた株式会社グリーティングワークスの代表取締役社長・徳丸博之氏。同社では、2008年から「年賀状思い出大賞」を主催し、年賀状にまつわるエピソードを募集している。

同賞には毎年1000通以上ものさまざまな心が温まる物語が集まっているという。

「母親から届いた年賀状をお守り代わりにして大学受験に臨んだ男性もいました。寮生活をしていた彼は、センター試験が近づくと緊張のあまり食べ物が喉を通らなくなっていたそうです。そんなときに届いた母親からの年賀状。そこにはとても下手な絵が描かれていました。母親に絵心がないことを知っていた彼は、大笑いすると同時に昔のことを懐かしんだそうです。そして、何度も描き直した跡があることを見つけて、胸が熱くなった。母親が必死に年賀状を描く姿が思い浮かんだんですね。受験当日、彼はその年賀状を持参して試験会場に臨み、無事に大学試験に合格できたそうです。1通の年賀状が彼に勇気を与えたんですね」

こちらが実際に送られてきた作品。8回目の「年賀状思い出大賞」で大賞を受賞した。

年賀状で過去の記憶や気持ちを思い出すことができる

もちろん、こうした話は滅多にあることではない。だが、年賀状をとおして相手のことを思う瞬間があるのは確かだろう。

「年賀状の真の魅力は、1枚1枚に相手との物語があることだと思うんです。私は学生だった頃に野球に打ち込んでいたのですが、そのときの仲間や恩師から年賀状が届くと、瞬時に過去のさまざまな思い出や当時の感情がフラッシュバックします。年に1度の貴重なやりとりだからこそ、そうやってすぐに記憶をさかのぼれるのではないでしょうか」

徳丸氏の会社では、こうした大切な年賀状を保管できる「きずな箱」というサービスを7年前から展開している。

これは同社で年賀状を注文した人を対象に数量限定でプレゼントされるもので、年代・干支ごとに年賀状を分けて取っておくことができる。うまく活用すれば、送り主たちとのつながりを物語として振り返られるというわけだ。

また、自分でつくった年賀状を取っておくのもいい。想いが凝縮された年賀状は、その当時の記憶を呼び起こす手がかりになるので、初心を思い出したいときなどに役立つそうだ。ビジネスで困難に直面したときにブレイクスルーのきっかけになることもあるだろう。

心の込もった年賀状は相手の心を動かす力がある

確かに年賀状をつくるのは面倒だ。時間もお金もかかる。だが、気持ちの込もった年賀状には、気持ちで応えることも大切だと徳丸氏は話す。そうしたやりとりのなかから新しいビジネスが生まれる可能性があるからだ。

「仕事柄、年賀状を見る機会は多いですが、決意表明や心機一転の想いなどは印象に強く残ります。ああ、人生の転機になっているのかもしれないな。そう思うと、折りに触れ想いだしたりしますし、気になることが再会のきっかけになったりします」

このときに大切なのは、あからさまに自分の話ばかりを盛り込まないこと。年賀状にまず書くべきは相手への心配りの言葉であり、自分のことは端書き程度に留めておくのが賢明だ。喪中などで年賀状を送り返せないときは、寒中見舞いを書くなどすると、丁寧な仕事ができる人だと思われるだろう。

「何度も言いますが、年賀状は年に1度しか届きません。ですから、それだけ記憶に強く残るんです」

■徳丸博之氏
株式会社グリーティングワークス代表取締役。2004年、挨拶状に特化したweb通販サイト「挨拶状ドットコム」をスタート。転勤や退職などフォーマルな挨拶状から、出産・結婚の報告、年賀状などカジュアルな挨拶状印刷のサイト立ち上げを行う。2009年からは「年賀状思い出大賞」を主催し、審査委員を務める。

文=村上 広大(EditReal)
イラスト=浜名 信次(Beach)