後輩を育てることの意味 “一匹狼上司”はなぜダメか?

特集「35歳で学ぶ後輩のホンネ」第4回

カテゴリ:ビジネス

  • 成果主義による競争が個人主義を助長している
  • 「会社は会社、自分は自分」と区別する人が多数
  • 他人とのコミュニケーションが自分の人生のこやしに

終身雇用は崩壊。転職にもネガティブなイメージはなくなり、キャリアアップという言葉も生まれた。
また、日本経済は超低成長期。明日、自分の会社がなくなるというリスクを抱えながら、誰もが生きている。そ
んな時代において、後輩への無関心や“自分だけ”という生き方が生まれるのは当然のようにも思えるが、なぜいけないことなのだろうか?

成果主義や個人主義が“個別化”を助長

“自分だけ”という風潮は見直されている?

まず話を聞いたのは、経営コンサルタントや心理カウンセラーとして活躍し、『リクルートで学んだリーダーになるための77の仕事術』や『はじめてのリーダー論 部下と上手につきあう31のコツ』(いずれもゴマブックス)など数多くの著書を手掛ける、小倉広事務所代表の小倉広氏。

みんなで協力して助け合う、家族経営的だったはずの日本の会社のなかで、なぜ“自分だけ”上司は増えたのだろうか。小倉氏は次のように分析する。

「成果主義や個人主義の影響があると思います。『成果を出すから自由にやらせてくれよ』となり、仕事よりも家や友だちを大事にする人が増えている印象です。そうした個人主義が強まったことで、“人を育てなくても成果さえ出せば認めてもらえる”という気持ちが強まったのではないかと思います」(小倉氏、以下同)

また、法令遵守強化の流れが「管理職になりたくない」風潮を助長していると小倉氏は指摘する。以前から、「管理職になると責任ばかりが増え、残業代も出なくなるから損だ」と考える人が少なくなかったが、その流れがさらに加速しているというのだ。

「法令遵守強化により、残業削減、パワハラ禁止などに対する経営からの目が格段に厳しくなっています。しかし、目標(ノルマ)は高いまま。これまで部下に残業させ、残業代を支払うことで何とか達成していた管理職は、その手段が奪われたことになります。しかし、『ではどうやって目標達成すればいい?』という答えを経営は示せていません。そのしわ寄せがすべて中間管理職にいっている」

では、コミュニケーションを避け、“自分だけ”でいることは仕方のないことなのだろうか。

「アドラー心理学では、人生の幸せや喜びは、人と交わることでしか得られないとされています。人間関係を避けている限り、マイナスにはならないけれど、プラスも生まれません。 “自分だけ”と考えることは、いわば幸せを避けることなのです」

上司や同僚と深い付き合いはしない
癒しの場ばかり求める冷めた人が多い

次に、『「働きがいあふれる」チームのつくり方』(ベストセラーズ)や『上司の9割は部下の成長に無関心〜「人が育つ現場」を取り戻す処方箋』(PHP研究所)などの著者、株式会社FeelWorks代表取締役の前川孝雄氏にも、“自分だけ”という人が増えたと思うか、聞いてみた。

「最近では、ワークライフバランスという言葉をよく耳にしますが、自分の時間を大切にしたい、友だちといる方が楽だと、会社と自分を区別する、『会社に冷めた手負いの獅子族』が増えています。いまは成果主義が主流になり、個人の短期業績が評価される時代。そこまで会社に奉仕する意味が見いだせないのです」(前川氏、以下同)

前川氏は、“自分だけ”でいることが良くない理由をこう話す。

「ちょっと居心地の悪い場所(=会社)と癒しの場所(=家族や友達など)のバランスが上手く取れず、癒しの場所にずっといようとする傾向も見られます。初めのうちは良いかもしれませんが、ステップアップしていき、大きな仕事をしようとした時に、協力者が現れずに困ってしまう可能性も。一人でできる仕事には限界がありますので」

また、いざという時に困らないために、「人脈や縁をメンテナンスして、育んでいく必要があります」と、前川さんは続ける。

「人間関係の構築には、コミュニケーションは不可欠。会社での人付き合いは、友だちに比べ面倒かもしれませんが、若手のうちはそういった場所で刺激を受けることが成長のこやしになるもの。社外の人間関係も大切ですが、同様に社内のコミュニケーションも大切にすると良いのでは」

両者とも、少なからず成果主義&個人主義が、“自分だけ”上司の増加に影響しているとの見解を示した。
また、会社として、見直す動きもある。いつまでいまの会社に残るかわからない、部下や後輩の面倒なんて見ていられない。それでも、「自分の人生のこやしになる」と思えば、他人とかかわることも悪くないのではないだろうか。

文=明日陽樹/考務店