年齢や立場を超えて… 職場のコミュニケーションを変える方法とは

特集「“年下上司”と“年上部下”の関係」第7回

カテゴリ:ビジネス

  • コインを使うことで対話が生まれ、組織の活性化につながる
  • きちんと理由を伝えることでトラブル知らずの職場に
  • コミュニケーションレベルを引き上げる事はビジネスの成果につながる

成果主義やポテンシャル採用を取り入れた企業が増えたことで、若くして管理職に就く人は増えている。

職場における年齢と立場の逆転について、これまでにもさまざまな角度から探ってきたが、年齢や役職を気にせず、気軽にコミュニケーションが取れる方法はないものだろうか?

歴史ある企業でありながら、ユニークなコミュニケーションツールを取り入れている、寺田倉庫株式会社の執行役員で人事・総務担当の畑敬子さんに話を聞いた。

コイン好きの社長が発案した取り組み
コインを使ったコミュニケーション法とは

同社では、コインを使ったコミュニケーション方法を取り入れているという。これは、メンバーそれぞれが「Excellent(5万円)」「Great(1万円)」「Good Job(5000円)」「ドクロ(マイナス5000円)」の4種類のコインを持ち、年齢や役職を横断し、感謝やお礼、賞賛、ダメ出しの気持ちに代えて相手に手渡すというもの。この取り組みについて、詳しく聞いてみた。なぜ、コインなのだろう?

「社長の中野がコイン好きということもありますが、『お金』としての意味合いもあるので、この形状が採用されています。直接オンタイムで手渡せ、臨場感がありますよね。昔、給与が現金支給されていた時代は、直接お金を手にすることで嬉しさや、お金の大切さを感じることができました。それと同じでコインを直接手渡すことで、重みを感じられるのもよい点です。あげたりもらったりしたコインは、換金できるんですよ」(畑さん、以下同)

この制度を取り入れたことで、どんなメリットがあったのだろうか?

「まず、直接対話するきっかけになったことがメリットだと思います。また、部門をまたいでコミュニケーションを図れるのもよい点で、年齢や役職に関係なく360度のコミュニケーションが取れます。社内の活性化につながっていると感じています」

「上司も部下も、賞賛されれば嬉しいもの」と、畑さん。サンキューコイン的な使い方も広まっているようで、年上や上司に対しても気軽に手渡しやすい雰囲気になっているという。

コインを渡す明確な理由を示すことが重要 ドクロコインはどんどん使ってほしい

しかし、気持ちをコインに変えたことによって、「あの人には渡さない」など、かえってトラブルを生む可能性も考えられるが…?

「例えば、自分が嫌いだからと、何の理由もなく意地悪でドクロコインを渡す人がいれば、きっとその人にもドクロコインが返ってきますよね。なのでトラブルはないです」

因果応報。相手に嫌なことをすれば、自分に嫌なことが返ってくる。まさに、コミュニケーションそのもの、というわけだ。ところで、このコイン制度を円滑にするには、秘けつがあるらしい。

「ただコインを手渡すだけでなく、『誰が』『誰に』『いつ』『どんな理由で』あげたかを管理しています。良いことだけでなく、ドクロコインを渡す時にも、きちんと理由を説明するんです。実際に、私も部下からドクロコインをもらったことがありますよ」

取材に同席してくれた、広報グループリーダーの脇山亜希子さんもドクロコインをもらった時の感想を教えてくれた。

「部下のミスは上司のミス。私の場合、部下がミスをすることで、ドクロコインをもらいます。それは、私の管理が行き届いていなかった、と納得できました。ドクロコインは『目に見える叱責』になり、受け取った側は嫌な想いをするというより、身が引き締まります」(脇山さん)

良かったことを口で伝えるのは照れくさいし、悪かったことを指摘するのはそれなりの覚悟がいる。しかし、コインがひとつあるだけで、より積極的にコミュニケーションが取れているようだ。

職場のコミュニケーションは大切か?
信頼関係の構築がビジネスの成果へ

こんなユニークなコミュニケーション法を取り入れている寺田倉庫だが、職場内コミュニケーションの満足度は高いのだろうか?

「社員旅行やレクリエーションを復活するところが増えていますよね。それぞれの企業に合わせたコミュニケーション施策は私も賛成です。とくにマネジメントする側の人は、意図的なコミュニケーションを作り出す必要があると考えます」(畑さん、以下同)

同社では、年4回の入社式が開催され、新年には、羽根つき大会も行ったそう。このような、コミュニケーションの積み重ねの成果か、「私の部下には、定年間近の社員から新卒間もない若い子までいますが、新年会は全員参加でした」と、畑さん。

「また、私が所属する人事部と総務部は、もともとあまり交流がありませんでした。それが、今では勝手にミーティングを開いて、知恵を出し合っています。コミュニケーションをきちんと取ることで、信頼関係構築につながり、相手の考えや性格がわかるようになるので、相手の仕事の進め方を考えるようになりました。結果的に、チームの強さが、ビジネスとしての成果につながっているのだと思います」

仕事の上では、上司と部下という上下関係があって当然だし、年上(目上)の人を敬うということも大切。しかし、それだけでは越えることのできない壁がどうやらありそうだ。“伝える方法をルール化”し、胸襟を自然に開いて語り合う文化を育むこと。遠慮し合ってコミュニケーション不全に陥る多くの職場は、今回の寺田倉庫の事例に学ぶべき点が多いのではないだろうか。


文=明日陽樹/考務店